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ノンフィクション作家の小松成美さんにお会いする

先日、日本を代表するノンフィクション作家の小松成美さんにお会いし、お話を聞かせていただく貴重な機会を持てた。その出会いの経緯や、印象に残ったことなどを書き留めておきたい。

ぼくが小松成美さんを知ったのは、小学生高学年の頃だ。「ジョホールバルの歓喜」と呼ばれたフランスW杯アジア最終予選のイラン戦。2-2で迎えた延長戦、日本の秘密兵器であった「野人」岡野は何度も決定機を外し、ピッチ上の選手たちも、中村家を含むテレビ越しのサポーターたちも、誰もが「いい加減決めてくれよ!」と苛立っていた。

その延長後半、中田英寿の左足から放たれた鋭いシュートをキーパーが弾き、詰めていた岡野がスライディングシュートでついに決める。その瞬間、日本は初めてのワールドカップ出場の切符を掴み、国中が熱狂に包まれた。

当時小学4年生だったぼくは、20歳で代表を牽引していた中田のプレーに釘付けになった。そしてフランスW杯が終わり、中田はセリエAのACペルージャへ移籍。そこからの活躍は凄まじいものだった。

ぼくは兄が買ってきた雑誌『Number』のインタビュー記事や、『中田語録』を、食い入るように読んだ。それを書いていたのが、小松成美さんだった。とくに小学生の頃、サッカーチームに所属していなかったぼくにとって、『中田語録』に書かれていた逸話は大きな学びになった。中田は1対1のロングパスの練習を大切にし、何時間でもやるような人間だった。足の指のどの位置で、どのくらいの強さで蹴ればどんなボールが飛ぶのか、ひとつひとつ確かめるように蹴っていたという。のちにぼくが精度の高いロングパスを蹴れるようになったのは、この言葉があったからだと思っている。

また、『Number』でのインタビュー記事も好きだった。一流のサッカー選手が語る言葉のひとつひとつが、ぼくに良い感化を与えた。その流れるような文章を書いていたひとりが小松成美さんだったから、彼女の名前を子どもの頃からずっと覚えていた。

さて、時は流れて、2020年。こんなツイートをした。

ライターコンサルの一番弟子である池田アユリさんにも、直接「勉強になるから、小松成美さんの本を読むといい」と伝えた。そしたら今年に入り、池田さんが小松さんのオンラインイベントに参加された。ぼくは「イベントに参加したら、イベントレポートを書くといい。そしたら主催者の方もきっと喜ぶから」ということも教えていて、池田さんはそれを愚直に実行してくれた。

池田さんのnoteは、小松さんの魅力や学びが伝わるとても良いレポートになっていて(ぼく自身、とても勉強になった)、これがきっかけで池田さんは小松さんと仲良くなったそうだ。そして先日、池田さんから突然LINEがきて、「小松成美さんにお会いしてきました」とツーショット写真とセットで送られてきたことに、ぼくは仰天してしまった。

ぼくからしたら、小学生の頃から本や記事を読んでいた大御所ライターなのである。そんな方にあっさりとお会いしてしまうとは、なんということだ。

そしたら池田さんは、「小松さんに中村さんのことを話したら、とても興味を持たれていて、ぜひお会いしたいと仰っていました!」と言うのである。正直恐れ多かったが、こんなチャンスは滅多にないので、池田さんにつなげていただいて、ついに小松さんにお会いできることになった。そういう経緯である。池田さん、本当にありがとう。

小松さんとは当初横浜でお会いする予定だったのだが、当日、ぼくが川崎から電車に乗ろうとしていた瞬間にお電話があった。

「中村さん、もう電車に乗っちゃいましたか?実は午前の◯◯さん(超有名女優)の取材が長引いてしまって、横浜ではなく新橋にお越しいただいてもいいですか?」

ぼくは、「うわ〜、◯◯さんの取材だったんだ、かっこいいな〜」と羨望の眼差しで、「はい!すぐ新橋に向かいます!」と反対方面の電車に乗り込んだ。

帝国ホテルのラウンジで、小松さんとご対面。ぼくのような若輩者にも、とても優しく、物腰の柔らかい方だった。ぼくは何度か想いが溢れて制御不能でバーっと話してしまうことがあり、後で振り返ってみて、あれは小松さんの聞き方、目、表情、聞く姿勢がすごかったためだろうと思った。思わずいろんなことを伝えたくなってしまう。無意識に引き出されてしまう。今回はもちろんインタビューなどではなく雑談の場だったのだが、それでも小松さんの真髄が垣間見えた気がする。

小松さんと、様々な本について語り合えたのは至福の時間だった。沢木耕太郎さん、星野道夫さん、植村直己さんなどの話で盛り上がり、「司馬遼太郎は『峠』が好きです」と言うと、「河井継之助のね」と返ってくる。このツーカー(死語?)がたまらない。

だが、小松さんは「本を読まない若い世代が増えていて、私たちのように読む人がマイノリティーになってしまう。この流れをなんとかしたい」ということを話されて、「そのために今こんなことを考えている」というコミュニティ構想のお話を伺った。その危機感や想いに、ぼくはとても共感した。

最近の学生はすぐに「それって意味あるんですか?」と聞いてくるという話が印象的だった。「本って意味ある?」というスタンスでまったく本を読まない学生も多いという。意味があるかどうか、すぐ役に立つかどうかでばかり考えていたら、長い目で育っていくものがなくなってしまう。

小松さんは小さい頃からたくさんの本を読み、本から多くの影響を受けてきた。27歳のときに「ライターになろう」と決意したのも、本が好きだったことがきっかけだった。

「本を読む人」を増やし、そして「本を書きたい人」も応援していきたい。小松さんはそういうことを思っているなかで、ぼくが駆け出しのライターさんにコンサルをしている背景や想いにも、共感していただけた。

ぼくの文章もいくつか読んでくださり、独特のスタイルだと評価してくださった。「中村さんは、このスタイルで、そのまま書き続けるのがいい。本も出した方がいい。そのためにできることは協力します」と言ってくださった。

「毎日が楽しい。今が最高」という言葉が、偽りなく全身から溢れ出ている方だった。衰えることを知らない、小松さんの尋常ではないパッションを感じた。「私たちは何度でも、ゼロからイチを生み出せるんです。そうでしょ?だからもったいぶらずに、どんどん書いて出しちゃえばいいんです。そのサイクルを回していくのが大切です。止めてしまったら、逆に流れが悪くなる」という言葉が刺さった。

ぼくが書き手として、小松さんのようなノンフィクション作家を目指したいのかは、まだ自分でもわからない。だけど小松さんから学ぶべきものは山ほどあるし、今後の構想にも共感するので、ぼくにお役に立てることがあれば、関わらせていただきたいなと思っている。

ちなみに今は『中田英寿 鼓動』を読んでいて、メチャクチャおもしろい。映画のような臨場感に、改めて小松さんのすごさを感じている。それを読み終えたら浜崎あゆみさんの半生を描いた事実に基づく小説『M 愛すべき人がいて』を読むつもりだ。小松さんからは、サイン本も3冊プレゼントしていただいた。順に読んでいきたい。

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気付けば4時間近くもお話させていただけた。小松さん、貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございました。


※小松成美さんのnoteでは、菅前首相の官房長官時代のインタビュー原稿など、勉強になる記事がたくさん読めます。

<小松成美さんのメルマガ>

「これまでノンフィクション作家として、たくさんのトップアスリートやトップ経営者の唯一無二の「人生」を取材してきました。その経験をもとに、書籍だけでは書ききれなかった小松成美流のコミュニケーション方法や独自哲学を伝えていきたいと思います。経営に、スポーツに、文化に。多岐に渡って、学びあるコラムを配信して参ります。」

<小松成美さんの人成塾(オンラインサロン)>


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中村洋太
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