【大阪〜博多600km徒歩の旅(21)山口県防府市〜山口市】
大阪から博多へ 山陽道600km徒歩の旅
第21ステージ
山口県防府市〜山口県山口市(20km)
6時半に起き、8時半まで原稿を書いていた。
1ヶ月間、平均28kmを歩いたあとに、3000字の原稿を書き続ける旅。過酷な歩行と睡眠不足でかなりしんどいが、ここが頑張りどきである。あと一週間、身体よ持ってくれ。
朝食を取り、noteの更新作業を終わらせて、10時に防府駅を出発。今日は新山口駅のスタジオでラジオ出演が待っているので、遅れられない。
途中、飲み物を買うために入ったスーパーでは、買い物に来たおじいちゃん・おばあちゃんと、レジの店員さんが、随分フランクに話している印象だった。都内のスーパーではあまり見られないような親密な空気があった。世間話だったり、「おお、久しぶりだね(方言は忘れた)」みたいな挨拶だったり。
店員さん「袋は?」
おじいさん「え?(耳が遠い)」
店員さん「袋もいるんじゃろ?」
ぼくは「じゃろ」が聞けると嬉しい。
途中、「泥江」という地名があった。地名に「泥」が使われるのは珍しい。
それから、「秋穂」と書いて「あいお」と読む。これも難しい地名だ。昨日は「戸田」と書いて「へた」と読む場所があったし、一昨日は「下松」と書いて「くだまつ」と読む場所があった。知らないと読めない。
でもよく考えてみれば、難読な地名は地元横須賀にもある。「不入斗」と書いて「いりやまず」と読む。それからぼくの母校、追浜高校は、「おいはま」ではなく「おっぱま」と読む。これも地元では当たり前のことだが、県外の人には「何それ?」と笑われてしまう。
山陽では「AZ」というホテルをよく見かける。しかしぼくはこのホテルの壁に掲げてある「4800円 朝食付」というどデカい看板を見るたび、ちょっと心配になってしまう。円の価値はいつまでも同じではない。ポスターなら貼り替えれば済むけど、看板に金額を書き込んでしまったら、値上げがしづらいだろう。
一級河川「佐波川」を渡る。美しい風景だった。青森に森が多かったように、山口は山が多い。泥江もかつては泥だらけの土地だったのだろうか。
初めて標識に「北九州」の文字が出てきたとき、まだ早いのに、不意にグッとくるものがあって、涙が流れてしまった。ついに九州が見えてきた。大阪から、随分遠くまで来たものだ。
江戸時代の長州の人々も、長い日数をかけて歩き、苦労の末に初めて京や江戸に着いたとき、あるいは無事に故郷に戻ってきたときは、おそらく感動したのではないだろうか。もちろん当時の旅は、もっと過酷だっただろう。しかし長い距離を歩いてきた今なら、少しだけ、昔の人の気持ちがわかる気がする。肩や脚の痛みを伴っていて、頭による理解ではなく肌感覚で共感できるものがある。
山口市に突入したところに、長沢湖があり、そこに「長沢ガーデン」という施設があった。
この長沢ガーデンに、世にも珍しい「天ぷらうどんの自動販売機」があった。小腹が空いていたので、食べてみた。料金は350円。
お金を投入すると、しばらくしてうどんが出てくる。「天ぷらはどこだ?」と思ったら、うどんの底に隠れていた。手づくりの出汁と天ぷらがしっかりおいしい!これはいいな。実際人気のようで、ぼくが買った直後くらいにもう売り切れになっていた。
ここから新山口までの約8kmは、さほどおもしろい道でもなかったが、途中の住宅地にひっそりと幕末の偉人・大村益次郎の生誕地や、彼が西洋医術を開業した場所の跡があった。いずれ司馬遼太郎の『花神』を読めば彼の人生がわかるだろうから、そのときにこの場所のことを思い出したい。
昨日に引き続きオーディブルで聴いていた『グッド・ライフ: 幸せになるのに、遅すぎることはない』という本の中で、
「会えばお互いにもっと元気になれるのに、うっかり宝の持ち腐れになっている人間関係はないだろうか」
という言葉があって、ハッとさせられた。考えたことなかったけど、大事そうな問いだ。
順調に20kmを歩き切り、14時半に新山口駅に到着した。今日で、大阪からの総歩行距離が500kmを超えた。博多まではおそらくあと150kmほどだろう。
ホテルにチェックインして、シャワーを浴びてからラジオのスタジオへ向かった。そこでテレビ局の方とご挨拶してびっくりしたのは、このあとラジオだけでなく、テレビの生放送にもぼくが出演するということだった。
でもこんなチャンス滅多にないから、ありがたいことだった。軽くリハーサルだけして、まずはラジオに集中。
16時半からエフエム山口「COZINESS(コージネス)」に生出演。昨日お会いしたラジオパーソナリティの大和良子さんと、今回の旅についてお話させていただいた。大和さんは臨機応変に受け取ってくださるので、雑談の延長のような感じで、楽しくてあっという間だった。
そしてラジオのあとは、すぐスタジオの外に出て、yab山口朝日放送の「YOU!どきっ」という番組に生出演した。
玉野初季(いぶき)アナ、そしてスタジオにいた波田陽区さんともやりとりすることができた。波田さんといえば、ぼくら世代には「ギター侍」と「残念!」のフレーズで懐かしい。
突然のテレビ出演(しかも生中継)で緊張したけれど、玉野アナの明るさ、話しやすさと、スタッフの皆さまの和やかな雰囲気のおかげで無事楽しく乗り越えられた。
ラジオでもテレビでも、「最近歩いてますか?」というテーマを設け、前フリのあとで「そんななか、今まさに大阪から博多に向けて600kmを歩かれている中村さんにお越しいただきました!」という素敵な流れにしてくださった。
岩国から徳山に向けて歩いているとき、「光 18km」という道路標識を見て、「『光』という地名があるんだ〜!カッコいい!」とときめいたエピソードをお話したら、地元の方には逆に新鮮だったようで、おもしろがってもらえた。玉野アナはその光市の高校に通っていたという。ご出身地の下松も同じ日に通ってきた。
それにしても、まさか歩いている途中でメディア出演することになるとは思ってもいなかった。嬉しかったし、貴重な時間になった。
大和さん、玉野アナ、スタッフや関係者の皆さま、ありがとうございました!そして山口県の皆さま、ご視聴ありがとうございました〜!!
出会う方々が温かくて、山口が大好きになってしまった。明日から海沿いの道を通って宇部、山陽小野田、長府、下関へと歩いていきます!道で見かけたらお気軽にお声がけください!
※山口在住のさおりさんがお写真を送ってくださいました。ありがとうございました!
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