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幸運と不運の「ホコ×タテ」

6月にツイートがバズってから、見知らぬ方からDMをいただく頻度が増えたのだけど、先日はなかでも変わったDMが届いた。

「中村“歩くパワースポット”洋太様」という書き出しから始まるメッセージだった。最初は冗談だと思った。

「はじめまして。
突然のDMでのご連絡をお許しくださいませ。

私、都内で平凡なサラリーマン生活を送っております◯◯と申します。中村様の6月8日のバズりにバズったツイートを拝見し、いいねさせていただいた10万人のうちの1人です。心の中ではいいねの連打でした。超いいねでしたホントに!

この度、中村様に折り入って相談がありご連絡させていただきました。ダメ元でお送りしておりますが、ほんの少しでもお目通しいただけましたら幸いです。

中村様は先日の出来事以外にも奇跡、偶然、幸運を引き寄せるお力があるように感じております。むしろ、ご自身で掴み取っているようにもお見受けいたしました。ご自身で“歩くパワースポットとなれたら”と呟いていらっしゃいましたが、もはや名実ともに“パワースポット”なのではないでしょうか。

そんな中村様の呟きを拝見しながら己を振り返ってみますと“ついてないなぁ”と思う事ばかりの人生でした。今現在も上司のモラハラパワハラで疲弊しきり“明日地球が滅びていたらいいのに…”と思いながら眠りにつく毎日です。

こんな“歩く鬼門”と化した私ですが、もし中村様とお話するチャンスに恵まれたら、残りの人生を少しだけ前向きに生きられるのではないか、と考えてしまいました。

つきましては、大変お忙しいことと存じますが、実証実験のような気持ちで支障ございませんので、中村様のパワーをお裾分けいただけませんでしょうか。人生に希望を持てる術をご教示いただけませんでしょうか。

このご時世、どこの誰とも分からぬ人間からのDMなんぞ怪しさ満点かと存じますが、もし奇跡的にもお返事をいただけましたらとても嬉しゅうございます。

お忙しいなか誠に恐れ入りますが、何卒宜しくお願い申し上げます」

書き出しで思わずクスッと笑ってしまったが、しかし読み進めるうちに、深刻な状況なんだなということが伝わってきた。

半年前までは「負のループ」に浸かっていたぼくだったが、変革のための行動が実り、今はかなり「幸運のループ」に入っている実感がある。

対して彼女は、自分で「歩く鬼門」と言うくらい、不運なことの連続のようだった。

「なんだか、『ホコ×タテ』みたいだ」とぼくは思った。「6月以降、奇跡的なことが起こり続けている幸運なぼく」と、「明日地球が滅びてほしいと思うくらい不運な彼女」が戦ったら、どちらが勝つのだろうか。自信はあるが、果たして・・・。純粋な好奇心として、やってみたくなった。

「いつも作業しているスタバに来ていただけたら、少しご相談に乗りますよ」

身近な友人には事前にこの一件を伝え、「もし土曜の夕方以降、ぼくのツイートがネガティブな感じになっていたら、負けたのだと思ってくれ」と言った。

ただ、少しでも勝負を有利に持ち込みたいと思い、面会の場はぼくがよく通うスタバにさせてもらった。先日は固定ツイートにも載せている「あの奇跡」が起こった場所である。店員さんたちの醸し出すポジティブで明るい雰囲気も相まって、このスタバもまた「パワースポット」だと勝手に思っている。

そして今日、約束の時間にお店の周辺を見渡した。ぼくはお顔を知らなかったから、失礼ながら内心では、「いかにもツイてなさそうな暗い顔つきの女性はいないかな」と探していた。しかし、一瞬目が合ってこちらにやってきたのは、想像していたのとは真逆で、目もパッチリと開いている、明るい、綺麗な女性だった。年齢はぼくに近く、お仕事も様々な職歴を持っている。

「え、全然深刻そうじゃないじゃん」と思っていたのだが、しかし具体的にお話を伺っていくと、確かに辛そうであり、かつ話はどんどん暗い方向に向かってしまう。途中、何度も目に涙を浮かべる姿が印象的だった。表情も、ひとりきりのときはどんよりとした顔をしているという。

そして明らかに、人生に希望を持てていない。楽しいことをまったく考えられないそうだ。週末、気分転換にと思ってピラティスをやっているときでさえ、仕事のことを思い出して辛くなってくるのだという。これは確かに重症である。たったひとりの社長が苦痛の根源であれば、仕事を変えるのもひとつだと思うのだが、それも事情的に今は難しく、という状況で、お互いに「うーん・・・」となってきた。まずいまずい。

でも、ぼくはもしかしたらネガティブさに引きずり込まれるかもな、という懸念はあったものの、実際はそうはならなかった。共感はしつつも、客観的に話を聞くことができた。これはライターコンサルを通してたくさんの方の相談に乗ってきた経験が生きたと思う。

そして、「変えられないものを変えようとするのではなく、まず相手のことは一旦脇に置いて、自分に変えられることを小さなことでいいからどんどん変えてみるといいですよ」というアドバイスをした。それで人生が好転したのがぼくのこの半年間だったから。

彼女は真剣に話を聞いてくれて、別れた後も、「自分がこれからどうしていこうか」という行動指針をきちんと整理して送ってくれた。もちろん、未来のことはわからないけど、きっとこれで徐々に状況は良くなってくる気がした。

「ツイてない」と言うと、また「ツイてない状況」を引き寄せてしまうから、騙されたと思って、そういうネガティブな言葉は意識して使わないように心がけてください。反対に、ポジティブな言葉をどんどん使ってください、とも言った。

申し訳ないが、このエピソードにはオチも結論もない。

ただ、彼女に幸運が訪れてほしい。心からそう願っている。

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中村洋太
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