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シドニー&メルボルンの旅(1)

最初の機内食を片付けてくださった際に、CAさんから「ご旅行ですか?」と声をかけられた。ぼくが持っていた『地球の歩き方 シドニー&メルボルン』が目に止まったようだった。

「私、すごい昔ですけど、メルボルンでホームステイしていたことがあって」
「そうでしたか。今回、メルボルンに4泊するんです」
「えー!完全にオフですか?」
「う〜ん、半々ですね。旅の文章を書くので」
「旅の文章を」
「あ、そういえばこの前ANAのラジオで旅の話をしました。J-WAVEの『ANA WORLD AIR CURRENT』です」
「えー!」

乗る際にもらったANAの機内誌『翼の王国』を読む。ぼくの目標は、この雑誌にエッセイを寄稿することだ。8月号では、昨年山形県の鶴岡で訪ねた喫茶店「コフィア」のマスターが紹介されていた。素敵な偶然である。

朝9時前、シドニー空港に到着した。機内では離陸後と着陸前に機内食が出て、それ以外は消灯になるため、ひたすら寝ていた。5時間睡眠くらいだけど、ほとんど日本と変わらない時間帯に眠れるから、ANAの羽田-シドニー深夜便は楽でいい。時差1時間だから時差ボケもほとんどない。

降りがけにさっきお話をしたCAさんがやってきて、「良い滞在になることを願っています」とANAのミニタオルをプレゼントしてくださった。タオルには「Have a nice flight.」と書いてあり、その通り、実にナイスなフライトになった。

ANAの機内でいただいたミニタオルと『翼の王国』

保安検査や荷物の受け取りなどを終えて空港のロビーに出て、まずはOptusという通信会社でSIMカードをゲット。30GBで40豪ドル(15日間有効)だった。これで移動中も普通にネットが使えるし、一応電話もできる。

OPTUSのSIMカードのプラン表

※ただ、結局外に出るときはそこまで通信量の重たい作業が不要で、かつホテルやカフェに行けばWi-Fiが使えるため、実際の使用通信量は6GB以下でした。おまけにテザリングもできず(使用機種によるのかどうかは不明)。なので今から考えれば、ひとつ下の「10GB 30豪ドル」プランで申し込めば良かったです。参考までに。

1豪ドルは約94円(8月22日現在)。旅行中にモノの値段を考える際、1円単位まで精確に円換算したりはしないので、「100倍の値よりもちょい安い」で暗算する。例えば40豪ドルなら「4000円よりもちょい安い」。実際は3760円だから、これでざっくりとは事足りるだろう。

両替するかは迷ったが、結局しなかった。だからぼくは今も1豪ドルの現金も持っていないが、自販機でさえクレジットカードが使えるからほぼ問題はないだろう。唯一不安だった「宿のランドリー」も、クレジットカードオンリーで現金は使えない仕組みだった。だからやはり両替しなくてOKだった。

※あとでわかるのだが、メルボルンの宿のランドリーはコインオンリーだった。その話はまた後日。

最後に市街地へ向かう鉄道駅で、Opalカードという、東京でいうSuicaに当たる交通系電子カードを購入し、80豪ドル分チャージ。これで、一旦必要なものは揃った。

さすがに都会だ。シドニー中心部のビルや街並みを眺めながら、電車に20分ほど乗り、サーキュラー・キーという駅で降りる。駅を降りたら反対ホームの向こう側に、大きな橋が見えた。なんと迫力のある橋だろう。

サーキュラー・キー駅からの眺め

道を間違えながら15分ほど歩き、宿に到着。ロックス地区にある「シドニーハーバーYHA」に2泊する。

ホテル前に到着すると、そこにいた女性が「Hi Yota!」と声をかけてくれた。

「アレックスだね! Nice to meet you!」

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7年前の夏のことである。新宿駅の地下構内を歩いていたら、二人組の外国人男性が、地図の前で立ち止まっていた。困っている様子だったので、思わず声をかけた。

「どこへ行きたいんですか?」

「ソードミュージアムに行きたいんだ」

「ソードミュージアム?」

新宿にそんな場所あったっけ? もしかして、日本刀? 検索してみると、初台方面に「刀剣博物館」というのがあったので、画面を見せた。

「ここ?」

「イエス!」

新宿からは徒歩20分ほどかかる。正直、行き方を説明するのはぼくの英語力では難しかったから、「ソードミュージアムまで案内するから、一緒に行こう」と直接連れて行った。

彼の名は、アントニウス。23歳(当時)。オーストラリア人で、お父さんと旅行でやってきたそうだ。シドニーの銀行で働いているという。

2016年、新宿で偶然出会ったアントニウスとお父さん

そのアントニウスのことを思い出し、7月末に連絡を取ってみた。そしたら彼はぼくのことを覚えていてくれた。しかし、もうシドニーにはいなかった。彼は現在、サンフランシスコで仕事をしているのだという。

「再会できたらおもしろかったのに、残念だな〜」と思っていたら、アントニウスが思いもよらないことを言ってきた。

「シドニーにいるぼくの姉(以前は妹と書いてしまったが、実際は姉だった)が街を案内できるかもしれない。彼女も旅行が好きで、日本は特にお気に入りの国なんだ」

「なんと!もし会えたら嬉しい!」

そしてお姉さんに連絡すると、

「Hi Yota, pleasure to meet you! My brother mentioned you’d be coming to Sydney. Very happy to meet up. Have you made any plans for your time in Sydney yet?」

とすぐに返信をくれた。彼女もまた海外経験が豊富で、しかも日本は大のお気に入りであるらしい。これまでに4回日本に来ていて、今年の12月にも再訪予定だという。だから日本人に対しても好感を持ってくれているようだった。サッカーが好きで、以前札幌で小野伸二選手と記念撮影したらしい。すごいなおい。

小野伸二選手とアレックス

わざわざぼくの観光案内をするために仕事の休みを取ってくれて、綿密に一日のプランを考えてくれた。

それが目の前にいるアレックスである。

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ホテルにスーツケースや不要な荷物を預け、11時頃から観光スタート。結論から言うと、19時頃まで、計18km歩いた。初日から疲労困憊ではあるが、おかげでシドニーのシティ中心部の地図がかなり頭に入った。

まず訪れたのは、サーキュラー・キー。ここには様々な場所へ行くフェリーの発着場があり、シドニーらしさを感じる場所である。この海辺からは、シドニーハーバーブリッジやオペラハウス、高層ビル群が眺められた。なんだかガイドブックで調べてイメージしていたシドニーと、実際のシドニーは、良い意味で全然違った。非常に壮観で、美しい街だ。

変わった形のビルが多い

オペラハウスの手前にある水辺のカフェでひと休み。オーストラリアに来たらトライしてみたいと思っていた「フラットホワイト」(エスプレッソにスチームミルクを足したもの)を飲むことができた。おいしかった。別の店舗でも試してみたい。そしてここは眺めが抜群。気分が上がる。

シドニーハーバーブリッジを望むカフェでフラットホワイトを注文

オペラハウスもまた、本物を前にすると迫力があり、外観だけでも思っていた以上にすごいことがわかった。次回シドニーに来た際には、ガイドツアーに参加したい。チケットを買わないと内部には入れないので、今日は外観だけで我慢。

世界遺産に登録されるオペラハウス

そこから王立植物園(ロイヤルボタニックガーデン)に入り、見たこともないような植物を眺めながら進んでいくと、やがて「ミセスマックォーリーズポイント」にたどり着いた。ここは前職の同期に教えてもらった、ハーバーブリッジとオペラハウスを同時に望める撮影スポット。

ミセスマックォーリーズポイントからの眺め

今度はニューサウスウェールズ州立美術館やThe Domainという公園を通って、ニューサウスウェールズ州立図書館へ。ここは2階からの眺めが素晴らしかった。

ニューサウスウェールズ州立図書館

その後、ハイドパークの噴水やシドニー・セントメアリー大聖堂を撮影して、シティ中心部の「The Grounds of the City」でようやくランチ。大きなハンバーガーとサラダをアレックスとシェアした。このハンバーガーの肉の旨さも、今日とりわけ感動したもののひとつ。これが「オージー・ビーフ」というやつなのか?食べたことのない味で衝撃を受けた。今これを書きながら、「もう一度食べたいな〜」と感じている。

注文してくれるアレックス
オージービーフのハンバーガー、最高においしい

お昼を食べたあと、「クイーン・ビクトリア・ビルディング」(通称QVB)を見学し、「シドニー・タワー・アイ」という地上125mの展望台からシドニーの街を360度見渡せるタワーに登った。

シドニー・タワー・アイから街を見下ろす

ピルモント橋を渡り、パワーハウスミュージアムを見学し、「Woolworth Metro」というスーパーでオーストラリア名物の「Tim Tam」(チョコレートビスケット)と雑誌で見かけたバイロンベイクッキーを購入。バイロンベイクッキーはカロリーメイトみたいな、ちょっとしっとりとした食感。どちらもおいしいけど、Tim Tamの方が好みではあった。お土産にクッキーを買いたいので、またスーパーへ行ったら何か試してみたい。

最後にギバパークで美しいサンセットを眺め、アレックスお気に入りのパブ「Quarrymans Hotel」でフィッシュ&チップスとサラダをシェア。

フィッシュ&チップスとサラダ

そしてクラフトビールで乾杯。フィッシュ&チップスもビールも最高においしかった。初日からオーストラリアらしい食べ物を満喫できた。そして「現地でクラフトビールを楽しんで」とご支援してくださった森岡さんに感謝!

クラフトビールもおいしい!

フェリー乗り場の「Pyrmont Bay」でアレックスとお別れして、ぼくだけここからフェリーでサーキュラーキーに戻ることに。これが彼女が最後に用意してくれた観光プラン。このルートからの夜景がすごいこと!

フェリーからの夜景

こういうホテルへの戻り方はぼくには思いつかないから、地元の人に案内してもらえて本当に良かった。アレックス、ありがとう! 

アレックスと記念撮影

7年前のあの日、新宿でたまたま見かけた外国人観光客に声をかけなかったら、今日アレックスと出会うこともなかった。巡り合わせって本当に不思議だ。


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中村洋太
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