間接照明を考える
みなさんは間接照明にどんなイメージを持っているでしょうか。
「おしゃれ」「高級感がある」などの印象を持っていたり、建築や空間における装飾や演出という認識をしている方も多いかもしれません。
実際にその高い装飾性や演出効果をねらって採用されることが多く、
決して間違った認識ではないのですが、
それ以外の効果もあることを知って頂きたいです。
私が間接照明をクライアントに提案する場合は
「合理的なもの」「機能的なもの」であることを心がけて提案しています。
今回の記事では、メジャーな活用方法に隠れて目立たない
本質的な効果と役割についてお伝えをしていきたいと思います。
なぜ「装飾」と思われてしまうのか
私見ですがこれに対する解答が3つあります。
理由①
全体の明るさのうち間接照明の効果の割合が低いから。
間接照明の採用率が高い商業空間やオフィス空間においては水平面照度の確保に対する意識が高いです。間接照明だけで満たすのはかなり難しく、
効率良く照度を確保することができるダウンライトやスポットライトなど
の直接照明がメインの光源として採用されます。
結果的に、間接照明が与える水平面照度への影響は相対的に小さくなり
「装飾的なもの」「演出的なもの」そして「機能的ではないもの」といった印象が形成されていると考えます。
理由②
言葉の意味が正しく使われていないから。
本来は照明手法のひとつとして間接照明がありますが、ダウンライトやスタンドライトなどの器具名称として誤用されることが多いです。
わかりやすさを重視したメーカーの表現が結果的に誤解を生んでいます。
ここで着目していただきたいのは、間接照明を設けたことによる「見た目」についての言及はない点です。実は器具の種類には依存していません。
「ダウンライトやスポットライトによる間接照明」が成立しますし、
実際にそういった事例も沢山あります。
理由③
目的に対して効果的に使われていないから。
設計を進める中で「ここに間接照明を使いたい」と思った時に
一度冷静になってみましょう。
もし「壁を照らすこと」だけが目的だとしたら
ウォールウォッシャータイプのダウンライトを使うことや
ウォールランプを使って輝度を加えるなどの手法でも良いかもしれません。
間接照明を設ける目的を明快にしておくと
「壁面はこんなふうに照らしたい」
「じゃあどんな納まりが良いか」というように解像度が上がっていきます。
簡単に「それっぽく」設けることができるからこそ、思考を深めることで
意匠性と機能性を兼ね備えた有機的なデザインを構築することができます。
間接照明の合理的な使用例
①アマン東京 客室
居室の梁によって生じる天井段差を利用したコーブライトが
天井面を柔らかく照らしながら地明かりとしても機能しています。
ダウンライトはデスク面を照らすことや読書灯、スタイリングを照らすなどのタスクライト。スタンドライトは輝度と明るさ感でバランスを整える。
といったように、それぞれの役割が明快で無駄がありません。
ガラスへの映り込みを避けるため窓際には照明を向けないなど「当たり前」をやり切ることで照明計画のお手本とも言うべき完成度に到達しています。
浴室はシャワー上部に設けられたダウンライトのみで暗さを感じますが
入浴中はそのダウンライトが間接照明の役割になっています。
②ナインアワーズ博多
私がメーカー在籍時に担当したプロジェクトで
タスク・アンビエントの考え方に忠実な照明計画です。
テーブル上やベンチに平行しているライン照明がタスクライト。
中央から植栽と天井を照らすスポットがアンビエントに該当します。
いわゆる地明かりは設けていませんが、ライン照明とスポットライト
それぞれの効果の二次的な間接光が地明かりになっています。
③ポーラ美術館「モネー光のなかに」展 -2022.3.30
美術館の照明計画というと、展示された作品のみが照らされていたり
光天井などを用いて空間をフラットに照らしているケースがほとんどですが
この企画展では間接照明だけで展示空間の照明計画を成立させています。
珍しい手法ではありますが「モネが描いた空の下の光を再現」するという
コンセプトを具現化するための合理的な手法といえます。
空間の中で最も大きな反射板である天井面を照らすことで直接照明ではつくることができない非常に高い均整度をもたらしています。
この企画展は残念ながら終了してしまっています。
間接照明を使いこなす
いかがだったでしょうか。間接照明に対する意識が高まった方は
私がまとめた間接照明についての動画をぜひご覧ください。
今後も照明に関する、ためになる記事を投稿していきますので
高評価やフォロー、そのほかSNSのフォローもよろしくお願いします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?