#TRIP 福岡県宗像市大島 Day 1
Intro
妹のM子が今年の春に福岡へ引っ越しをすることになった。
京都の外へ転居するのが始めてだったM子、曰く色々なご縁が重なり遠く離れた宗像市大島という離島へ移住してみないかという話があり、それを受け入れたのだという。アメリカ人のパートナーK君と一緒に現地に行ってみたところ、住むことになる古民家の状態はわるく、大掛かりな修繕作業が必要とされるとのこと。移住を薦めてくれた実業家Kさんサポートの下、業者の方々と住める家に作り替えていったそうだ。知り合いでもいない限り遊びにいくことはなかったであろう遠い島。
M子がいる間に一度いってみたいもんだなと考えていると運良く九州へ出張する機会を得た。この機会を逃す手はない!ということで出張終わりに大島へと向かうことにしたのであった。
神湊 発最終フェリーに間に合うか!?
出張先は熊本県熊本市。ミッションは熊本営業所にある複合機宛のFAXをメール転送設定すること。営業所の皆さんに挨拶しつつ早速複合機をチェックしてみる。複合機はCanon Image RunnerシリーズのC2880というモデル。どうやらメールを送信するオプションはついている。FUJIFILM系の複合機と同じように、ジョブフローを作成して送信テストをしてみるがエラーになる。試行錯誤の結果、どうやらGoogle側のセキュリティ要件を複合機側が満たせないことが判明。今のモデルではどうしようもないという結論になり複合機の入れ替えも視野に検討しましょうということで今回のミッションはここで終了。
営業所を後にしたのが15:00頃。
この時点では当日中に大島へ渡ることができるのか曖昧だった。取り敢えず新幹線さくらの自由席乗車チケットを購入し16:02の便に乗り博多を目指しつつ乗り換える電車とバスの乗車駅と時刻表を確認し乗り継いでいけるか調べる。
JR熊本駅から新幹線でJR博多駅へ ※小倉駅にすべきか迷う
16:02 → 16:42JR博多駅からJR鹿児島本線東郷駅へ
16:52 → 17:24JR鹿児島本線東郷駅で改札を出て西鉄バス東郷駅前から神湊波止場へ
17:26 → 17:50西鉄バス神湊波止場で下車し、フェリーおおしまに乗船
19:00 → 19:25
3.のバスへの乗り換え猶予は2分しかない。乗り損ねると次の便が18:24発でフェリー乗り場到着が18:48となりフェリーに乗れるか怪しい!ということでドキドキした。幸い東郷駅前は小さいロータリのみでどう転んでも見落とすはずのないバス停を瞬時に見つけ予定通り17:26発の便に乗ることができた。
フェリー乗り場までのバスの時刻表とフェリーの時刻表のリンクを貼っておく
バスには10名ほどが乗車していたが終点の神湊波止場まで乗っていたのは私一人だった。あたりはもう真っ暗で波止場周辺に飲食店は見当たらない。
フェリーの最終便まで1時間余裕ができたので近くを散策してみた。薄暗いなか穏やかな潮騒の音に誘われて海岸沿いを歩いていると東の空に美しく光る月が見えた。前日にはちょうど月食が起きていた時間帯。この日の月は一大イベントを無事に終えどこかホッとした様子で浮かんでいた。月の光が海に煌めいてきれいだった。
フェリー乗船
月を眺めていると時間が流れ、おおしま号が入港した。
メンテナンスや乗員交代作業等が済むと搭乗ゲートを開けてくれた。
数台の乗用車もフェリーに残り込み、19時を過ぎるとフェリーはゆっくりと波止場を離れ大島を目指して進み出した。久しぶりの海に心が躍る。真っ暗の中で一人最上階のオープンデッキのところで海を眺め、月を眺めた。11月9日の夜は風もほとんどなく寒いと感じるほどの気温でもなかった。後から恰幅のよいスーツ姿の男性がデッキに上がってきた。500mlの缶ビールとつまみを片手に潮風を浴びながらゆったり寛いでいるようだった。島民の方だろうか。朝早くから島外へ仕事に出かけ19時のフェリーで家に帰ってくる。毎日となるとそれは大変な通勤のように思われる。お疲れさまです。
結局デッキで潮風を浴びながら過ごしていると大島ターミナルに到着。
M子と合流
フェリーを降り暗い駅前をさてどうしたものかと思いながら取り敢えず島の中へ進んでいく。実は大島という島がどういう島でどの辺に集落があって、見どころはどこかと言ったツーリスト情報を持ち合わせずに来ていた。すべてM子に案内してもらうつもりで。波止場に沿って島の中心に進んでいくとすぐにM子と合流することができた。家からターミナルまでは徒歩数分のようだ。ナイスアクセス。
大島はターミナルがある南側に人口が集中しているようで歩いていると民家に混じって小さなお店、旅館、食事処が見てとれた。しかしどこもすべて閉まっているようだ。まだ20時前だというのになんという静けさだろうか。集落は全体に真っ暗で所々に立っている街灯だけがその周辺をほのかに照らしている。この空間がなんとも落ち着く。不気味さはない。この光景に1本の松を追加したらどうだろう。シテとワキがそろりそろりと現れて能を演じ始めるのではないか。
UMIBA
家に行く前にM子が描き上げた壁画があるUMIBA(というコミュニティスペース)に寄ってみることに。中に入ってすぐに目に止まる壁一杯に広がるM子の作品、 "PRISM"。
この壁画の存在によって空間にパワーが漲っているようでこの場所からあたらしいことが次々生み出されていく、そんな予感が自然に湧いてくるではないか。
明るい日差しの中ではまた違った見え方をするのだろう。また明日も見にいくことにしてM子の家に向かった。
M子邸
M子の家はUMIBAから歩いて数分のところ、緩やかな坂を少し登ったあたりに建っていた。暗くて全体像はよく見えなかったが予想していたほど古ぼけた民家ではなかった。事前に中の動画を見せてもらったことがあったとおり広くてきれいだ。相当な手間と時間をかけてリフォームされている。ちょっと前までは小さな生き物たちが家の内外をシームレスに行き来する抜け道がいくつもあって大きな蜘蛛やGたちの通学・通勤とバッティングすることもままあってその都度絶叫していたと聞いていた。なので恐る恐る家の中を伺った。とりあえず未知との遭遇はなかった。
夕食を作ってもらって一緒に食べながら滞在中のプランをざっと決める。今回はこの日を含めて3泊4日。明日は有給をとってあるので妹と島を巡る。その次の日はリモートワークということで大島でぼちぼち仕事をしつつ島を巡る予定。
M子は基本的にこの島でフリーランスとして作家活動をしていて夜更けまで制作活動に打ち込み昼過ぎまで寝るということなので、翌日の朝は一人で島を散策しブランチの後に原付で島を一周しようとうことになった。
夜散歩
夕食をとったあと風呂に入った。お風呂もユニットごと新しいものに入れ替わっていて快適だった。風呂上がりにもう少しだけ夜風に当たってみようかなと思いM子邸から歩いて町の中心部をぐるっと一周してみた。人間界と自然界の境界が曖昧で民家の隣がとんでもなく真っ暗闇という通りを歩く。標識にそってなんとなく歩いていく。何度も書くがしっかり暗くそして静かだ。恐怖はない。何にも感じない。ただ穏やかだ。ちょっと不思議でどこか懐かしいそんな夜道をカメラだけ持ってフラフラ歩いていくとターミナルから少し離れたところにある海水浴場に着いた。
夢の小夜島とよばれるこの小さな島は浜辺から10mくらいのところに浮かんでいる。島の表面には松の木が生えていて正面には小さな鳥居が建っている。この島の鳥居の形状は京都で見るものと異なり横棒の払いがしっかり残されていてなんかカッコ良い。ヒーローの首元でたなびくマフラーのようではないか。
気持ちのよい夜散歩を終えM子邸に戻る。2階の和室にゲスト用の布団を出してもらった。床の間にはM子の作品が飾られていて照明で照らすと和とモダンの不思議なコントラストが現出する空間になった。照明をおとし布団に包まった。じわじわと眠りが寄せてくる。潮が満ちてきた。波打ち際で体をあずけ浮遊しながら沖の方へ漂うていった。
つづく