インドのお土産を食べたらブッダが見えた話
僕の数少ない友人のひとりに、よくインドへ行く奴がいる。
現地に学校を建てたり水道工事をしたりなど、色々と支援をするボランティア活動をしているらしい。立派だ。僕にはそんな献身的なことはできない。
そして先日、その友人が僕にインドのお土産を買ってきてくれた。
今回はそのインドのお土産を食べた話である。
今年の3月。長い長い大学の春休みもそろそろ終わる頃。
春休みのほとんどをインドに費やしたその友人と、春休みの報告を兼ねて久しぶりに会うことになった。
「はいこれお土産。」
1つの缶詰を渡される。いつもは著作権やら肖像権やらガン無視のだいぶイリーガルなTシャツをもらうことが多いが、まぁいいや。お土産をもらうのは単純に嬉しい。
「ありがとう。けどなにこれ?」
「世界一甘い食べ物なんだって。死ぬほど甘いらしいよ。」
友人曰く、それは”世界一甘い食べ物”なるもので、インド人は好んで食べるらしい。お土産やさんやマーケットにも大量に陳列してあるほどだそう。
それにしても「死ぬほど」って。”可能性次第では死ぬモン”をわざわざ買ってくんな。
缶詰の側面には茶色い団子のようなものが積まれている写真がでかく印刷されている。”可能性次第では死ぬモン”にしてはめっちゃ美味しそう。
さらにその下には堂々と太字のゴシック体で[INDIAN SWEETS]と書かれている。[国民的お菓子]と自分で書くくらいだから、むしろ不味いわけがない。
そして裏側にはお釈迦様が印刷されている。さすがブッダの国インド。お釈迦様のお墨付きなら、まぁ死ぬことなく安心して食べられそうだ。
早速その場で開封をして食べることになった。
開封。いきなり何か匂う。嗅いだことのない不思議な匂い。
缶詰に鼻を近づけもう一度しっかりと嗅ぐ。
「「うぅぅぅゔぇ」」
ガチな嗚咽。あっま。なにこれ。あっっんま。
甘すぎて嗚咽するなんて初めてだ。しかも匂い嗅いだだけで。食べるのこっわ。
「じゃ...じゃんけんで負けた方から食おうぜ。」
買ってきた本人もさっきのアレで食べるのが怖くなったらしい。
わざわざインドまで行って罰ゲームのアトラクション買ってくんな。
「じゃんけんっポイ!」
一発負け。どうやらボランティアで徳を積むと運が良くなるらしい。
最近ツイてないなーと思う人はインドで学校建てればいいと思う。
改めて缶詰を覗くと、パッケージに印刷してある茶色い団子のようなもの(たこ焼きくらいの大きさ)が、ひたひたに入ったこれまた茶色い液体に浸かっている。
団子のようなものをフォークで刺してよく観察してみると、どうやら揚げてあるらしい。刺した時の柔らかさといい、ドーナツに近い感じ。液体のせい?でめっちゃテカってるけど。見るだけで死ぬほど甘いってわかるくらいテカっててヌルってる。
もっとみなさんに伝わるように言うと、
”丸い一口サイズのドーナツが、一目で甘いとわかるシロップに浸かっている”
こんな感じである。
「南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。」
鉄板インドギャグを呟いてから、意を決して口に放り込む。
「あぁぁぁぁっっっまっ」
脳に電気が走るような甘さ。
「ちょ...あまっ...あぁ...ぁ...」
2、3回噛んだだけで耐えられず飲み込む。
口の周りは激甘シロップでテッカテカ。
口の中はドーナツの油とシロップでベットベト。
ブツが通過した喉はなんか熱い。
胃もムカムカする。
あれ、なんか頭がぼーっとする。
視界も消えていく。
あぁ...もうだめd...意識が...遠のいt...
見えた。完全に見えた。
「おい...!おい!平気か?」
友人に身体を揺すられて目がさめる。
「おお...俺ブッダ見たわ。ブッダ。」
「なに言ってんだ、缶詰もう食えないよこれ。俺食べたかったのに。」
どうやら倒れた時に缶詰を倒してしまったらしい。すまん。
「あーあ。お土産お釈迦になっちゃった。」
以上、インドのお土産を食べたらブッダが見えた話でした。
インドすごインディア。
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