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アボカドトースト
『すみません!アフォガートください!』
お店に来店するや否やメニューを頼まれた。時計の短針は真下を指していた夕刻だった。開口一番にアフォガードを発したのは家族連れのお父さん。中学生らしき娘さんとまだ幼い双子の女の子を連れて。お店の営業時間に合わせて急いで車で20分かけてやってきた5人組のご家族だった。お母さんは車を駐車場に置いてから向かっていますとのこと。"アフォガート"とはイタリア語で(溺れる)を意味しており、アイスクリームにエスプレッソをかけたものを指します。アイスクリームが熱いエスプレッソで(溺れる)ようになっていることに由来するとしているそうです。
そして、肝心のアフォガートが無い。無いというか夏場のメニューにはあったが、冬のこの時期にはバニラアイスクリームの用意をしておらずメニューからも消え去って忘れかけていた。でもどう見ても家族全員がアフォガートの口になっていました。時間差で車を置いてやっとお店に辿り着いたお母さんももちろんアフォガートの口でした。そこから必死にアフォガートを探せ!というミッションに頭を切り替えました。絞り出すように記憶を辿って、アフォガートを提供していそうなお店を探すも時はとっくに太陽が見え隠れしている時間帯です。あそこのコーヒー屋さんに確かエスプレッソマシンが置いてあったはずだけど、、、マップを開くと定休日。あそこのアイスクリーム屋さんにコーヒーのメニューがあったはずで、、、コーヒーフロートならあるはず、、、!でも口は完全にアフォガートなんです!と言わんばかりに家族全員がアフォガートを食べるまで今日一日が終われなそうな雰囲気になってしまいました。そして絞り出したアイデアはコンビニでアイスクリームを買ってきてお店のエスプレッソをかけるという作戦です。もうそれしかありません。
特別に許可をし、3つのバニラアイスクリームとピノ( なぜ? )を近くのコンビニから買ってきてお店の器に盛りました。
時は経て静寂に包まれた夜の時間に熱々のエスプレッソに溺れたハーゲンダッツのバニラアイスクリームを頬張る様子は清らかで至高のひと時に思えました。しびれました。
帰り際に、ところでなんで『アフォガート』なんですかと聞いたところ、その日の学校の給食で出たアボカドトーストの話題を家で言い間違えてアフォガートと口にしてしまったところが今回の物語のイントロだそうです。
暮らしの中にある人の空腹とは無限大ですね。
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美味しそうにコーヒーを飲むクーパー捜査官