衆院選、僕が投票を決める二つのキーワード
こんにちは、辻です。
今日はちょっと急いでnoteを書いています。というのも、今週末、2024年10月27日(日)は第50回衆議院議員総選挙の投開票が行われるからです(期日前投票はもう始まっていますね)。
言わずもがなですが、選挙とは国民が直接の意思表示をできる貴重な機会。首相が交代したこのタイミングで、これからの国の舵取りを任せるリーダーにどんな期待を伝えるか。僕たちの意思が問われる選挙。このチャンスを大事に使っていきたいですね。
大前提として、マネーフォワードが会社として特定の政党や候補者を応援することはありません。僕自身も特に特定の政党を応援しているわけではありません。
ただ、僕個人としては創業13年目の経営者という立場から、この国の未来を明るくするためにどんな政策が必要なのかを自分自身も勉強すると共に、政党や政治家の方々に対しては、人気取りのための短期的なばらまき政策ではなく、中期的に経済成長をしっかり進め、パイを大きくして次世代につながっていく政策を支持していきたいと思っています。
正しい判断をするためには知識が必要です。最新の情報を仕入れるためにも、経済同友会などで、政治家の方々から直接お話を聞いたり、こちらからも直接アイデアを伝えたりする場に、できる範囲ではありますが参加するようにしています。
「経済人はあまり政治家と関わらないほうがいい」と慎重な姿勢を保つ経営者の方々もいらっしゃいますし、その理由もよく理解できます。ただ、僕の考えとしては、日本という大好きな国の未来をより良くするステークホルダーの一員として、政治と適切な連携をとったほうが良いのではないかという思いもあります(もちろん本業が疎かにならない範囲で)。
実際、昨今の半導体やAI関連の分野に見られるように、地政学を踏まえた国の政策が、経済にも莫大なインパクトを与え、民と官、タッグを組んで戦略的に進んでいかなければ競争に勝てない時代になってきています。
世の中の動向を決める要因がより複雑化する中で、経営のために精緻な情報収集を常に行っている、そしてユーザーに近い経済人が、政治に対して最新の情報やテクノロジーの進化を伝えることができれば、より現実に即した効果的な政策に結びつきやすいはずです。
当然ながら癒着構造はあってはいけませんが、政治家と経済人がコミュニケーションをとって政策を決めるというのはアメリカなどではごく自然に行われていることです。グローバル競争で後れをとらないためにも、日本の成長を加速させる目的での適切な連携は必要だと思っています。
もちろん、自社の利益だけに誘導する我田引水的な働きかけはもってのほかですが、視座高く、政治と経済それぞれの立場から、日本の未来を語り合える場を育てていくことが重要なのだと感じています。
同時に、僕たち国民一人ひとりの「政治的リテラシー」も磨かないといけません。
国会議員は国のために働いてくださる政治家ですが、選挙区の有権者からの支持がなければ選挙には勝てません。日本の人口構成は高齢化が進んでいるので、社会保障を手厚くする政策など、どうしても高齢者に受けがいい政策をとりがちになってしまいます。
もちろん、生活の基盤を守る社会保障の充実も大事なのですが、より中長期の視点で、日本の国力を高めていく、パイ自体を広げていく経済政策も同じくらい優先すべきではないかと思います。
マスメディアでは話題として盛り上がりやすいスキャンダルや、特定の政治家のマイナス面ばかりを叩く記事が目に付きますが、実際に政治家の方々と関わってみると印象のギャップに驚きます。身を粉にして、日々地道な取り組みを続けている、日本をより良い国にしていこうとしている政治家の方々の姿に触れるたび、ただただリスペクトの念がこみ上げてきます。
選挙ではそれぞれの候補者の政策プランを比較できるチャンスなので、あらためて情報を集めてフラットに判断できるといいですね。
僕個人として応援したいと思う政治家に共通するキーワードは「規制改革の推進」です。
新しい領域のビジネスを創出したり、既存の業界の非効率を根本から改善したり、労働力不足を解消したり。これまでの慣習を変えて、新たなルールチェンジを起こす規制改革は、これからの日本の経済成長のために不可欠です。テクノロジーがこれだけ進み、社会実装がすすめばもっと便利になるのに、古い規制がそれを妨げているということは、ほぼ全ての分野に当てはまることだと思います。
これまでも規制改革は、社会課題を解決し、新しいビジネスの芽を育てるエンジンとしてさまざまな成果をあげてきました。
例えば、「オンライン診療(遠隔医療)」の規制緩和もその一つ。「医療を受けるには、医療機関に行って受診しなければならない」という“常識”は、オンライン診療解禁という規制改革によって塗り替わりました。
まず、2015年度に再診に限って全国的に解禁され、2020年度にはコロナ特例で初診からのオンライン診療がOKに(2022年度に恒久化)。さらに2023年度には「場所」の規制が緩和されて、医師が常駐しない公民館といった場所でもオンラインで診察が受けられるようになりました。まさに段階的な規制改革が成功した例だと思います。
こうしたルールチェンジによって、さまざまな事情で通院が難しい人にも医療が届きやすくなり、うつなど精神疾患にもプラスの効果が出ているようです。(メドレーさんの資料が参考になるかと思います!)
誰でも遠隔医療が受けられる社会に変わると、へき地に暮らす人だけでなく、医療を必要とするすべての人の生活をより良くし、困りごとを解決するはずです。また、この課題解決に挑戦する新たなプレーヤーも誕生し、経済の活性化にもつながっています。
総じて「国全体の生産性向上」に貢献し、成長のエンジンとなる規制改革ですが、現状のルールでメリットを享受してきた既存業界からの反対が起こりやすく、賛否両論が巻き起こるのが常です。今話題のライドシェアしかり。
そんな規制改革を推進することは、選挙を控える政治家としては“リスク”を抱えることにもなりえます。そんな中でもあえて規制改革に挑もうとする政治家の方々は、短期的な思考にとらわれず、気骨のある未来志向があり、中長期にこの国をよくしようという強い意思が感じられ、一人の経営者として心から応援したくなります。
規制改革の推進は、新しいテクノロジーの社会実装をすすめ、イノベーションを促進し、ユーザーに便利を提供し、ユニークなスタートアップを育て、ひいては経済成長を推進、雇用を生みます。
僕が委員長を務めさせていただいている経済同友会のスタートアップ総合推進委員会でも、規制改革の重要性はいつも議論の中心にありますし、全国銀行協会の主催で10月1日に開催された「MUSUBU!JAPAN DAY」で登壇の機会をいただいた際にも強調してお話をしたばかりです。
(経済同友会のスタートアップ総合推進員会の提言は、こちらの記事をご覧ください)
もう一つ、政治と経済が連動する重要なテーマが「働き方」です。
令和の時代を生きる僕たちがどうありたいか(being)にも密接にかかわる「働き方」のベクトルをどの方向へと進めていくか?これも選挙の結果で大きく変わるはずです。
働き方は一人ひとりの人生や日常生活の幸福度に強く影響するもので、その人の抱えている事情によって、ライフステージによっても「ありたい姿」は変わるものですよね。だから、働き方の方針を決める意思決定の場にこそ「多様性」が大事だと思います。
マネーフォワードでも、これまで経営企画部長・IR責任者として活躍してきた石原さんがCHO(Chief Human Officer、最高人事責任者)に就任してから、子育て世代の働く女性の視点が経営陣の議論の中に入ることによって、様々な論点において議論が深まり、より経営にとってプラスになる判断ができるようになったと思います。このように、経営にも、会社全体にもプラスのことが多いので、当社では「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)」をとても大切にしています。
DEIとは、多様な背景を持つ人々が公平に扱われ、全ての人が参加しやすい環境を作ることを目指すこと。マネーフォワードでは、エンジニア組織を中心にグローバル化を進めており、すでに30か国以上のメンバーがジョインしてくれています。多様な価値観を持ったメンバーがお互いの違いを尊重しつつ活躍できる環境を目指し、昨年「DEIステートメント」を策定しました。
政治の意思決定においても、同じようにさまざまな視点を持つ当事者が集まる場を目指すことが、社会全体の課題解決の総量を増やすアプローチになるのではないかと思います。国会の様子を見ていても、あまりにダイバーシティ(多様性)に欠けた構成で、これでは社会の様々な人の声は届かず、意思決定も偏らざるをえなくなるなと感じます。
「働き方」についての考えは、日経ビジネスの取材にもお答えさせていただきましたのでよろしければご覧ください。
以上、色々と生意気に書いてしまいましたが、僕が描く日本の未来の理想形は「人々が日々生き生きと、自分らしく生きることができる、エネルギー溢れる社会」です。
2012年にマネーフォワードを創業したきっかけの一つが、アジアを旅して圧倒された熱気に刺激を受けたことであり、そのときに湧き上がった「日本の成長に貢献したい」という思いが出発点になっています。
これからもチャレンジャーを応援する社会であってほしいので、僕は選挙の一票を大事にしたいと思います。ぜひ、皆さんも未来を託すことができる政治家の方に、一票を投じていただければと思います。