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「良い作品」はエネルギーで説明できる

長くデザインやアートの仕事をしているけれど、今でもアイデアが出なかったり、気持ちが乗らない、またはプレッシャーで逃げたい気分の時もたまにあったりする。そんな時によく行く場所が「本屋」だ。

腕組みしながら、本屋をただ歩き回る。そうすると不思議なことに、自然と気持ちは上向きになり、ポジティブに仕事に向かえるようになる。おそらく本の表紙や雑誌、画集など、あらゆる「創作物」を眺めていると、ある種の共感作用というか、自分もいいものを作りたい気分になるのだろう。要するに創作のエネルギーをもらえるのだ。

アートに興味がある方から、良い作品とは何か?という質問をたまに受けることがある。僕はそんな時の一つの基準として、「エネルギーがあって、動かす」作品と説明する。

まず良い作品は、心を動かす。いわゆる感動や感銘を受けたら、その人にとって良い作品といえるだろう。そのエネルギーレベルは2くらいだろうか。

さらに良い作品は、体を動かす。感動のあまり、その作品を買ったり、展示会を見に行ったりする。エネルギーレベル5。

そして最高に良い作品は、新たな作品を生む。感動のあまり自分も同じような作品を作りたくなり、材料を買いに行かせたりする。ここまで人を動かすエネルギーレベルは計り知れない。

僕に限らず、創作を仕事にしている人たちは、一人残らずこのエネルギーに激しく動かされてきた人たちだろう。僕らは作品を「作っている」が、「作らされている」とも言えなくもない。それぐらい強力なエネルギーを与えられてしまったのだ。

ビートルズが偉大なのは、ビートルズの曲に感銘を受けた青年たちが、新たな曲をたくさん生んでいるからだろう。そしてその曲に影響された人が、新たな曲を生んでいく。そのサイクルは肉体の寿命はおろか時代すらも超えていく。

「芸術は長く人生は短し」(すぐれた芸術作品は、作者が死んだのちも長く残る)というけれども、エネルギーの観点で見れば、すぐれた芸術作品は残るだけでない。新たな芸術作品を産み続け、半永久的にエネルギーを生産する発電所のようなものだと思う。

てことでもし自分にとって良い作品を知りたい人は、どれだけ自分の中にエネルギーが生まれるかを意識してみるといいかもしれない。そして僕は僕で今日も創作のエネルギーを充電するために、本屋に行くのだ。そうか、本屋は自分にとって発電所だったのか。

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