博多の秋の空に、東急ハンズを偲ぶ
使っているバッグが壊れかけていたので、博多のハンズで新しいものを買ってきた。新しいバッグを買って心機一転!といきたかったものの、今使っているバッグ以上に良いものが見つからず、けっきょく同じバッグを買ってしまった。
移動好きな自分にとってバッグは使い倒すものなので、ブランドもファンション性も求めず、とにかく安くて頑丈なものがいい。
話は変わるが、今日初めてロゴが変わったハンズの袋を受け取った。
経営不振によりカインズに買収され、「東急ハンズ」から「ハンズ」になるにあたって、ロゴも一新されたわけだけど、慣れ親しんだあの「手のロゴ」が変わってしまうのは、いささかの寂しさを感じてしまう。
僕が初めてハンズに行ったのは、小学生の頃だった。当時マンガ家を目指していた自分にとって、プロの道具がズラッとならぶ店内は、まさに「夢の場所」であり、歩いていてワクワクが止まらなかったことを今も覚えている。
豊富なスクリーントーンに、多種類の漫画のペンや面相筆、雲形定規にカラス口。地元の文房具屋しか知らなかった自分にとっては、憧れのプロが使っている道具は大変眩しく、
「これがロットリングか!」
「Luma(鳥山明が愛用してたインク)はないのか!」
と店中を歩き回っていたのを今も思い出す。
そんなハンズも、通っていた池袋店が閉店してしまい、今回ロゴも変わってしまった。
おそらくハンズの不振はデジタル化の影響が大きいのだろう。パソコンやタブレットの発展により、「道具」を使う機会はずいぶん減った。あの日魅了された夢の道具たちは、その役割を終えようとしている。
自分は過去より未来に期待するほうだし、伝統やノスタルジーにとらわれて変化しないことには否定的なタイプだと思う。
ただ、やっぱり僕も人間…。寂しい、とても寂しい。
あの手のロゴが消えるのが寂しい…池袋店がなくなったことも未だに切ない…。
そんなことを考えながら見上げれば、空はずいぶん秋めいていた。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」
博多の秋の空を見上げながら、方丈記の一節を心の中でつぶやくのであった。
(おしまい)