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球技における「数的優位性」とは何かー選手能力の向上、カウンター、数的優位性の確保

前回の記事では、現代の球技の戦術を貫く根本的な考え方を紹介した。「数的優位性」、これである。ここで、強調しなければならないことは、選手のアスリート能力が飛躍的に向上したということである。

球技においては、攻守の切り替えが頻繁に起こる。ボールを奪われた選手はすぐに第1ディフェンダーとして守備に回らなければならない。そして、他の選手もボールを奪われた瞬間にディフェンダーとなる。

ボールをどの位置で奪われるかを考慮しなければならないが、ボールを奪われた瞬間が攻めていたチームにとって、最も危険な瞬間となる。

例えば、バスケを考えよう。シュートを外して、リバウンドを取られた。この場面では、攻撃していたチームは、守備において数的不利に立たされることはない(リバウンドに行った選手は、攻撃の体勢に入っていないため。)

しかし、シュートの前にパスカットをされると、一気に数的不利になる。なぜか。攻めていた選手の体の向きを考えて欲しい。

全ての球技の全てのポジションがそうであるとは言えないが、球技では選手の体の向きは、攻撃でも守備でも自分のゴールを背に相手のゴールに向く。攻めているチームの選手は、ボールを奪われた瞬間、体の向きを180度ターンさせて自陣に戻り、体の向きを再設定する。それに対して、守っている選手は体をターンさせなくて良い。

このわずかな瞬間が、どの球技でも使われる「カウンター攻撃」のチャンスとなるのである。そして、「カウンター攻撃」の場面で、最も必要とされるのが、攻守とも選手のアスリート能力であることは言うまでもないだろう。極論、ゴールラインからゴールラインまで走らなければならない。

そして、この「カウンター攻撃」を止めるため、戦術で言えば、「数的優位性」を守備側は常に考えておく必要がある。つまり、選手を一人余らせようとするのである。サッカーで言えば、一人のFWが残っていれば二人のDFを残しておく。ラグビーで言えば、フルバック(15番)がその役割を担うだろう。

バスケで言えば、数的優位性を保つため、オフェンス・リバウンドを取りに行かない戦術もある。シュートを打った瞬間に選手全員が守備に戻る。ことほど左様に、選手のアスリートとしての能力が向上したことにより、守備側の要請で、戦術が変わってきたのだ。

サッカーで言えば、ペップ・グラウディオラの戦術も、必ずカウンターを受けないことがその50%を占めていると言ってよい。また、ユルゲン・クロップのゲーゲン・プレスは、逆に守備の「数的不利性」を衝くものである。

また、ラグビーで良く見られるハイパントも、選手がオフサイドから戻り守備の「数的不利性」を解消しようとするものである。つまり、フルバックがボールを取った瞬間に、フルバックより前にいる選手はフルバックの位置まで戻らなければならない。この時間を稼ぐために、高いキックを蹴るのだ。

以上は、あくまでも私がスポーツを観る上での一つの視点であるが、この選手のアスリート能力の向上、それに伴う「カウンター攻撃」の鋭さ、そして、それを守るための「数的優位性」の確保。このパッケージを一つの視点として、持っておいても良いだろう。

ここで、究極の人数合わせゲームであるアメフトに話を持って行きたいが、少し長くなったので、次の記事で書こうと思う。

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