【ツイステ考察】リュクスのブランドの主な元ネタはCHANELなのでは?
タピ・ルージュで出てきたリュクスというラグジュアリーブランドの元ネタにあたるのは、CHANEL(とHERMES)なのでは?
【前提】
まず、タピ・ルージュの舞台である美粧の街はパサージュの存在から概ね元ネタに当たる都市はフランスのパリだと仮定します。
そしてタピ・ルージュはSSRがヴィルでありディズニーの白雪姫に出てくる女王(The Evil Queen)がモデルだろう「Beautiful Queen」という映画の宣伝の為にタピ・ルージュというレッドカーペットを歩くイベントです。
よって、美しく、そして強い女性が一つ軸になると考えられます。
【CHANELの要素】
まず、作中におけるリュクスのブランドコンセプトは「自立した大人の為の、ラグジュアリーブランド」です。
CHANELのブランドコンセプトは「古い価値観にとらわれない自由で自立した女性像」です。
リュクスのブランドコンセプトの前半に最も近い現実世界の事例がCHANELなのです。
そして、「伝統を紡ぎながらモダニティを両立」するブランドであると説明が続きます。
ここで、注目したいのは伝統ではなくモダニティの方です。
(伝統の方はむしろHERMES由来と踏んでいるので後述)
モダニティとは現行していること・現在である事の特性という意味です。
いまいちわかりにくいので具体例を挙げるとするならば、モダニティを体現しているアイテムの一つがCHANELのN°5(香水の名盤。誕生から100年経つ世紀のベストセラー)でしょう。
つまり、時代や流行に左右されない名品を生み出すブランドといえます。
次に着目したいのがリュクスというブランドのアイコニックカラーである。『闇夜の黒』、要は黒です。
そして、CHANELのイメージカラーの一つが黒なのです。
CHANELのイメージカラーの一つが黒なのは、CHANELの創設者ココ・シャネルが「リトルブラックドレス」を売り出したからです。
これは革命的でした。喪服の色でしかなかった「黒」をファッションとして取り入れたからです。やがて「黒」はパリ・モードの主流となり、もっともシックな色となりました。
そして、ブランド創設期からチーフを担当しているクチュリエの存在です。
ブランド創設期から、チーフを担当しているクチュリエの存在はブランドの歴史が比較的浅い(100年はいかない)だろう事は想像に難く無いでしょう。
さて、クチュリエとはファッションにおいて仏語で男性の裁断師の事を指し、そしてパリのオートクチュールの主任デザイナーの総称として用いられます。そして、メゾンのデザイン責任者として、デザイン・裁断・縫製・営業宣伝活動に至るまで全てを統括する役割を担います。
CHANELの創業者は先にも出てきたココ・シャネルという女性であり、彼女は自らの職業をクチュリエール(クチュリエの女性版)としていました。
これは他のラグジュアリーブランドの創立者が基本的に男性である事を考えても、極めて珍しい事例です。しかし、第二次世界大戦後はココ・シャネルに代表されるクチュリエールは殆ど姿を消し、クリスチャン・ディオール(Diorの創設者)に代表されるクチュリエばかりになっていきます。
【閑話休題】
さて、上述の内容は、創業者一族ならばともかく、ラグジュアリーブランドの中ではかなり異例な長期政権なのです。
ラグジュアリーブランドのクチュリエ(や、それに相当するクリエイティブディレクター等)は長くてもせいぜい10年程度で、早ければ数年で入れ替わるのが普通です。
例えば、Diorを例に挙げます。
創業者のクリスチャン・ディオール(1946~1957)ですら10年程度でその後のクリエイティヴディレクターは、
クリスチャン・ディオールの急逝後抜擢されたイヴ・サンローラン(1957〜1960)
代表作のサドルバッグを生み出したジョン・ガリアーノ(1996〜2011)
代表作のライダースジャケットを生み出し、DiorV字回復の立役者であるエディ・スリマン(2001〜2007)
ですら10年に満たないのです。
(なお、マルク・ボアン(1960~1989)はイヴ・サンローランの後任として主任デザイナーに就任し、約30年間にわたりディオールを支え続けました。ただ、知名度の観点でいうと上述の三人と比べて一段落ちるのは確かです。)
ラグジュアリーブランドで数十年単位でクチュリエ(や、クリエイティブディレクター)を務めた代表的な事例として浮かぶのが、ココ・シャネルの死後のCHANELのV字回復に貢献したのがカール・ラガーフェルドというファッションデザイナーです。
そして彼の存在やCHANELというブランドから、ヴィルの同行者として、まずアズールが選ばれたメタ的な理由が見えてきます。(ジャミルとエースについては後ほど後述します)
アズールのインスパイア元である海の魔女アースラはリトルマーメイドに登場するヴィランです。
そして、ディズニーの白雪姫という作品は放映当時は映画史における傑作であると同時に極めて革命的な作品でした。
白雪姫の制作指揮はウォルト・ディズニーによるものです。
一方でディズニーのリトルマーメイドはウォルトディズニーの死後制作されました。
そしてディズニー映画の第二黄金期(ディズニー・ルネサンス)の原点と言われる作品であり、ウォルト・ディズニーの死後長編アニメ映画界において低迷期を迎えていたディズニーがV字回復を遂げるに至った作品でもあります。
つまり、ディズニーにおけるリトル・マーメイドとCHANELのカール・ラガーフェルドは偉大な創業者の死後、見事ブランドの再建に成功したという文脈が合致するのです。
【HERMESの要素】
「レア商品を求めてパトロールのように何度も何度も店舗を訪れる」
「リュクスのバッグはそもそも生産が少なくほとんど店頭に並ばない」
これは、現実の事例で考えるとCHANELよりはHermèsの要素でしょう。
エルメスパトロール略してエルパト、あるいは🍊パトで検索すると、SNS上でもエルメスのバッグを手に入れるために奮闘する人々の姿を見ることができます。
なお、類語としてロレックスマラソンもあります。
リュクスの伝統部分はHERMES由来と考えると、ジャミルのメタ的な選出理由は伝統にあたる箇所を担う為だと思います。
事実伝統の観点で反応しているのはジャミルだけです。
Hermèsというブランドは1837年に設立された伝統ある高級品メーカーです。
もともとは貴族の馬具を作っていたメーカーですが自動車の登場により馬車が衰退していく中で、女性向けバッグを作ったことで革新が始まります。
その時に作ったバッグがサック・オータクロワ(現オータクロワ)です。
加えて、NRC生で明確に従者の属性を持つのがジャミルです。
HERMESのロゴは馬具工房に由来するデュックとタイガーに由来します。デュックは四輪馬車でタイガーは従者のことです。
ロゴに主人が描かれていないのは「エルメスは最高の品質の馬車を用意しますがそれを御すのはお客様ご自身です」という意味なのです。
【番外編】
え、じゃあエースが選出されたメタ的な理由はなんだって?
バカラ(トランプを用いるカジノゲーム)とフランスのBaccara(高級クリスタルガラスブランド)の合わせ技なんじゃないですか?
Baccaraはフランスの強い女(史実)であるポンパドール夫人というファッションリーダーによって生み出されました。
そしてポンパドール夫人の存在とBaccaraにより、輝石の国でガラス工芸品が有名なことに筋が通ります。
そしてポンパドール夫人の存在とBaccaraにより、そもそもフランスに歴史上女王はいないし、白雪姫はドイツの民話なのになんで美粧の街はパリなの?なんならパリの近くに主要な鉱山ないよね?という疑問点が氷解するのです。
ポンパドゥール夫人とは、ルイ15世の公妾(フランス独自のシステムである国の公式愛人)です。
あちこちに邸宅を建てさせ(現大統領官邸エリゼ宮は彼女の邸宅のひとつです)、やがて政治に関心の薄いルイ15世に代わって権勢を振るうようになったことから、ベッドの上でフランスの政治を牛耳った影の実力者といえました。やってることは実質女王みたいなもんです。
つまるところ、ルイ15世の功績とされているものの実態の大半はポンパドゥール夫人が関与しているのです。
さて、1756年には、オーストリアのマリア・テレジア、ロシアのエリザヴェータと通じ7年戦争で反プロイセン包囲網を結成しました。俗にいう3枚のペチコート作戦です。
特に宿敵オーストリアとの和解は外交革命と言われるほど画期的であり、和解のために後年マリー・アントワネットがフランス王室に嫁ぐこととなりました。
また彼女は芸術の熱心な愛好家・パトロンでもあり、様々な芸術家とも交流しました。ポンパドゥール夫人の時代はフランスを中心に優雅なロココ様式の発達した時代ともいえます。
高級クリスタルガラスブランドであるBaccaraもまた、ポンパドゥール夫人が関与しています。
Baccaraがクリスタル製造を開始する歴史は、1764年、フランス王ルイ15世の許可のもと、初めてクリスタル製造会社ができたところから始まります。
ヴォージュ山脈にも近いバカラ村は、火力を上げるに不可欠な木材の宝庫だったため、クリスタルの産地として発展していきました。やがて王室御用達の品々が作られるようになり、1881年には会社名も『バカラ』に改名したそうです。
そして、バカラ村があるのはロレーヌ地方です。
ロレーヌ地方という言葉から連想できる単語の一つがアルザス・ロレーヌ。
アルザス・ロレーヌとは、フランス共和国北東部のドイツ国境に近いアルザス(エルザス)地方とロレーヌ(ロートリンゲン)地方のうちモゼル県を合わせた地域を指します。
鉄鉱石と石炭を産出するため、しばしばフランスとドイツとの間で係争地となっていました。
これにより、パリ近くにないはずの鉱山の要素と、そもそも白雪姫はドイツの民話なのになぜフランスのパリ?という部分に対して、アルザス・ロレーヌとBaccaraを接着剤にすることで接続を見せるのです。