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【ツイステ考察】水資源と水道整備の重要性について

今回は本編7章Chapter11のアイボリークリフの描写から見えてきてしまった夕焼けの草原の問題について、
①水資源とはなぜ重要なのか
②水道整備はなぜ必要か
という二つの観点から考えていきます。


前提

カリムのユニーク魔法は何が凄いのか

現実世界同様ツイステ世界でも「水資源」が重要な立ち位置をしめることの普遍性は、他でもないカリムのユニーク魔法へのアズールの反応が本編4章で証明しています。

カリムのユニーク魔法のオアシス・メイカーは「少しの魔力でいくらでも水が出せる魔法」です。
カリムは、自身のユニーク魔法に対して「普段は水道があるから役に立たない」といっていますが、
アズールは、カリムのユニーク魔法に対して「治水環境が整っていない国では英雄モノの魔法」「商売になりすぎる!!!!」と評価しています。

上述のアズールの発言にある通りツイステ世界には「治水環境が整っていない国があること」がわかります。

治水環境が整っていない国とは、それ即ち安全な水を届けるためのインフラである水道施設が整っていない国です。
この、ツイステ世界の水道設備が整っていない実際の事例がタマーシュナムイナで語られた夕焼けの草原です。夕焼けの草原は暁光の都以外の場所で水道整備に代表されるインフラ整備が進んでいません。

水道施設(上下水道・浄水施設)が整っていない国では、すぐに水が手に入らない状態です。
よって、良くて井戸、井戸がない場合は近くの川や池に向かわねばなりません。しかも、その水は飲み水に使えるような安全な水とは限りません。
また、水を運ぶという行為自体が子供や女性の仕事であり、時間がかかる為、水を運ぶ以外の選択肢を奪ってしまいます。

水資源への容易なアクセスを可能とする為、上述の問題を一足飛びで短期的に解決できることこそがカリムのユニーク魔法の凄い点の一つなのです。

そもそも水資源とは何か

水は、そもそも生物の生存に不可欠なものです。
私たち人間は、水を一滴も飲まないと4~5日程度で死んでしまうと言われています。

資源としての水とは、水質が適切で、利用可能な程度に安価で大量に得られる水である必要があります。
また、水は貯留や運搬の費用が相対的に高価な資源です。

【2024/12/23追記分】
水は1ℓで1㎏もあります。 水道水の金額は1㎥毎に変わるがその1㎥で1000㎏=1t。 2ℓのペットボトルでも自力で運べば重いが1㎥の水で1tです。 この重量を運ぶ輸送コストは高額の為、輸送費が乗る分水は単価が上がり販売できる値段を超えるのです。 例外がブランド価値があるミネラルウォーターです。

水の単価からも考えましょう。 水道の値段は1tあたり100~200 円、高くても下水道を含めても300円位。ボトルの水代はその1000倍の30万円。 工業用水は統計で25円位。農業用水の統計から換算すると1tあたり約3円。
この輸送コストを考えると水の単価をはるかに上回り、例外のミネラルウォーター以外赤字になってしまうのです。

必要な時に必要な場所で使用できない水は利用可能な資源とはみなされません。
水資源が得られない理由には気候などの自然環境の要因もありますが、社会格差や資源分配、貧困など社会的な原因も背景にあたります。

水資源をめぐって国際紛争が起きた事例も少なくありません。
例えばアメリカとメキシコにまたがるリオグランデ川で起きた1895年のハーモン事件があります。

地図上のリオグランデ川
Wikipediaより引用

1895年にリオグランデ川からの取水をめぐり米国とメキシコとの間で紛争が生じました。
当時の米国司法長官であったハーモンは、上流国である米国が下流国であるメキシコに対して領域主権に基づき領内の河川の無制限な利用の自由を持つと上流国である米国の立場を強く主張しました。
これを機に、国際河川流域における上流国の権限は無制限に認められるべきとの主張は、ハーモン・ドクトリン/ハーモン主義といわれるようになります。

また、現代でもいくつかの国際河川(国境をまたがる河川)では、河川の水量よりも上流での水需要が多くなり、下流で水が枯渇し始めたことによる国家間の紛争さえ起きています。

つまり、水資源は国家紛争が起きるほど重要な価値ある資源なのです。

そして、だからこそ、簡単に水にアクセスできるカリムのユニーク魔法はアズール曰くとんでもなく商売になりすぎるのです。

現実世界で使える「水」の量

地球の表面の3分の2は水で覆われていて、およそ14億立方キロメートルの水があると言われています。
しかし、その大部分は海水であり、淡水はわずか2.5%程度に過ぎません。
ところが、この淡水の大部分は使えません。何故なら南極や北極地域などの氷や氷河として存在しているためです。

地下水や河川、湖沼などの水として存在する淡水の量は地球全体の水の約0.8%に過ぎず、さらにこの大部分は地下水です。
河川や湖沼などの人が利用しやすい状態で存在する水の量はたったの約0.01%でしかないのです。

そのたったの約0.01%しかない水の使い道は、使用用途によって大きく都市用水と農業用水に分けられます。

都市用水

都市用水自体が生活用水と工業用水に分けられます。
生活用水は、家庭用水(飲料水、調理、洗濯、風呂、水洗トイレ、散水等)と
都市活動用水(消火用水、医療用水、公共用水、営業用水)に分けられます。

工業用水は、ボイラー用(ボイラー用水)、原料用、洗浄用(洗浄用水)、製品処理用(製品処理用水)、冷却用(冷却用水)、温度調節用などに使用されます。

農業用水

農業用水は、主に食べ物を作る為に必要な水です。水田灌漑用水、農地灌漑用水、畜産用水に利用されます。

また、それだけではなく、消流雪用水や防火用水や、養魚用水(さけ・ます、アユ、ウナギ、錦鯉、金魚等の養殖などに使われる用水)、発電用水(水力発電に用いられる用水)等にも用いられます。
食糧確保だけでなく生態系保全、水の貯留などの機能もあるのです。

ただし、世界の水の使用量の内訳は、工業2割、生活1割、残り7割は農業であり、農産物を生産するのに必要な水が多いことがわかります。
この、農産物を生産するのに必要な水の量を、農産物・畜産物の輸出入に伴って売買されていると捉えたものに仮想水という考え方があるのです。

仮想水(バーチャルウォーター)

仮想水は、乾燥地帯に位置する中東の産油国諸国で水利権を巡る紛争が起きない理由に関する考察から提唱されました。
これは、石油の輸出で得られる外貨で食料を輸入することで、その生産に投入された水をも間接的に購入したものと解釈できるからです。

水自体の輸送はミネラルウォーター以外の水は多大なコストを要するため現実的ではないものの、その最終産物を輸入することで同様なことが現実的なコストで実現できているという効果です。

しかし、食料輸出の形で仮想水を輸出する側の国は、必ずしも水資源に余裕があるとは限りません。
工業化の遅れた国では主要な産業は第一次産業となり、必ずしも豊富とは言えない水資源の元で生産された農産物を外貨獲得のため輸出せざるを得ない状況となっているケースが見られるからです。
これは、人口増加とともに深刻化する水問題のなかで、豊かな国へ仮想水が集中する方向に作用します。

例えば日本は、食料自給率が低く、世界最大の農産物輸入国です。このため、食料輸入という形で大量の仮想水を輸入しています。
その量は年間で数百億から千数百億トンと見積もられています。
日本が輸入する仮想水のうち6.8%は、枯渇が懸念される地下水であり、仮想水の最大輸入国のアメリカの地下水が多いのです。
仮想水の輸入という観点では、日本もまた「自前の水資源が豊かな国」とはいえないのです。

水道整備はなぜ必要か

まずは、水資源へのアクセスを簡単にする為です。しかも、単に水であれば何でも良いのではなく「飲み水」に使えるような安全な水です。
不衛生な水は、乳幼児を中心に現実世界では年間50万人以上の命を奪っています。栄養不良の50%が、水と衛生の問題に起因します。

安全な水へのアクセスを容易にすれば、少なくとも以下のことが可能になります。
・時間を奪う水汲みという労働から解放され、子供に学校に通う選択肢が生まれる
・不衛生な水を原因とする下痢症で命を落とす子供が減る
・コレラに代表される水系感染症の防止

井戸水の管理の難しさ

そもそも井戸で地下水を汲み上げると、水が含まれていた空間が空気と入れ替わります。地下水を過剰に汲み上げてしまうと、その分空気の入り込んでいる空間が広くなり、上部の土の重みに耐えきれなくなった時にはその空間が陥没し、表層の地盤沈下を引き起こしてしまいます。

また、各家庭に送られてくる水道水は、安全であることが確認されていますが、井戸水を使用する場合には、使う人が自分自身の責任で、井戸などの施設や水質の管理をしなければなりません。

現代日本の井戸水ですら、約25%の井戸でトリクロロエチレン等の揮発性有機化合物やふっ素、砒素、鉛等による地下水汚染が判明しています。

また、井戸水の水質検査をした結果、水質基準に「不適合」となる井戸はもとより、今は水質がよい井戸なども今後汚染されるおそれがあります。

アフリカでは多額の資金や長期の工事期間が必要となるため、水道の整備が難しい現状から水道の代わりにまずは井戸の設置が進んでいました。

しかし井戸設置後の管理体制が十分ではなく、多くの井戸が数年で壊れ、放置されています。
これは、井戸の維持管理の課題として管理が村の人々に一任されており、井戸の利用料が適切に回収できないことが原因です。

尚利用料の徴収に関しては、そもそも支払わない人間が多数いる為、一つの事例としてウガンダではアフリカでも普及しているスマートフォンによる決済で徴収する事例もあります。

そして、壊れた井戸を修理できないので結局放置するしかないという状況に陥っています。

井戸を作っても結局安全な水へのアクセスが出来るのは一時的(壊れたり、井戸水が汚染されたりするまで)で、半恒久的に安全な水にアクセス出来る訳ではないのです。

もっというとJICAによるアフリカで水資源の開発協力も変わってきています。旧来のアフリカの水資源開発協力と言われると、井戸を掘るイメージを抱く方も多いでしょうが、実は2023年のJICAでは井戸にまつわる案件は1割ほどしかありません。
10年ほど前まで、JICAで水分野を手がけるアフリカ担当チームはアフリカ村落部の井戸に関する案件を数多く担当していました。実際には井戸を単に掘るだけでなく、井戸の維持・管理を支援するなど様々な案件がありますが、それらも含めてほとんどが村落給水の案件でした。

それが逆転した背景には、アフリカの急激な発展があります。

近年アフリカ諸国では、人口が都市部に急激に集中しています。これにより、安全な水にアクセスできる人の割合は、村落部では上がったのにも関わらず都市部では横ばい、あるいは下がっているといった状況が生まれています。
その為、現代のアフリカの都市部の水道の整備・改修に関するニーズは増加傾向にあるのです。

そう、結局安全な水へのアクセスする手段として「水道整備」が重要なのです。

水道整備と公衆衛生

水道の整備が公衆衛生の要なのは、レオナの口から語られた通りです。

上水道とは、一般的には飲み水を供給するための施設を指します。

下水道とは、下水道は水(雨水・汚水)を排出する施設であり、浄化などの水処理も行います。

水道の歴史は古く、紀元前28Cごろのエジプト王朝では、すでに給水用としての水道管が誕生しています。
紀元前18Cごろの古代バビロニア王朝では、王の墓の地下排水に土管が使用され、古代中国では、山中の泉の水を村に引くのに竹菅が使われていたことが分かっています。

本格的な水道の登場は、紀元前312年のローマ帝国で作られた「アッピア水道」です。
ローマ帝国の都市ローマだけでアッピア水道を含む11の水道が、帝国内のどのような大都市においても水道が建設されました。そしてローマ帝国時代の水道の内、例えばヴィルゴ水道の一部は現代でも「水道」として使われています。

また、日本でも明治政府による近代的な水道敷設が実施される前から上水道の整備自体は行われています。江戸時代の玉川兄弟による2度の失敗を経て作られた玉川上水等が著名な事例です。


公衆衛生とは、組織された社会の努力を通して、健康を増進し、疾病を予防し、生命を延長する科学・方法をいいます。

衛生とは国家システムです。
近代衛生とは、細菌学をベースにした科学であり、それに基づく行政になります。そして、「衛生」とは細菌と人と、それらを取り巻く環境の相互作用を解き明かし対策を作るものであり、現代の環境政策にも繋がっていくのです。

後述する水系感染症に限らず多くの病気もまた民族の間に際限なく伝搬が可能なものです。
裏を返せば、衛生もまたまもるべき相手が人であるならば、システム、文明の一要素として平等に機能しうるのです。

例えば明治時代の日本において、水道の布設は、住民の健康を守るという公衆衛生の確保という観点から進められました。これは、水道法にも明記されています。

そう、生命以上に優先される尊厳はないからです。

当時の日本の生活用水は井戸や開渠による流水、または水売り等によるもので、衛生的な水が供給されているとは言えない状況でした。そのため、コレラに代表される水系感染症を防ぐ目的で、近代水道の布設が計画されました。すなわち、住民の健康を守るという公衆衛生の観点から、安全な水の安定供給が近代水道の最大の使命とされました。

一方で当時の限られた資金という条件のもと、他のインフラを整備すべきか水道整備に巨額の資金を投ずるべきかという論争が起きました。
しかし、当時の代表的な交易港である横浜市が、交易に伴う諸外国からの来訪者へ日本の衛生管理をアピールするため、率先して水道を整備し、 引き続き各都市で、水道整備の取り組みが進みました。
ところが、それだけで公衆衛生を完全に達成することはできませんでした。結局のところ水道の普及と塩素消毒の徹底が実現するまでは下痢等の問題は深刻だったのです。

水系感染症コレラの恐ろしさ

現実世界では19Cから20C初期に世界中でコレラが大流行しました。コレラとは水系感染症の一種です。
コレラの原因となるのはコレラ菌で、これが消化器に入ると米のとぎ汁のような下痢が続き、脱水症状に陥ります。コレラにはアジア型とエルトール型などの種類がありますが、この時期流行したのは非常に致死率が高いアジア型でした。コレラ菌は、食物や水を通じて経口感染する為、感染は世界中に瞬く間に広がりました。

加えてこの時代は抗生物質がないためコレラに対してワクチンも特効薬も無い為、コレラにかかったら最後死んでしまうのです。
コレラ菌は細菌学者のロベルト・コッホによって1884年に発見されました。
この、コレラ対策として進められたのが水道事業の整備でした。

水道事業の整備はヨーロッパ諸国から始められます。濾過機で給水した地域にコレラ患者が少ないことがわかると、各地で大規模な都市計画と共に水道整備が行われていったのです。
しかし、水道事業には莫大な資金が必要になります。この結果国家による衛生行政の役割は次第に拡大し、政府が積極的に関与する体制となっていきます。
これを、国家医療と呼びます。

現代日本では、蛇口をひねれば安全な水が出てくるのが当たり前ですが、この水道の整備は日本でもコレラ対策を目的として進められたものです。

1887年には、横浜市で野毛山浄水場が完成し、日本の近代的な上水道の第一号となりました。その後、主要都市を中心に上水道が整備されました。
この時期に整備された水道は、水質の安全性を確保するため、浄水施設や配水管が導入されるなど、現代の水道システムと同じような特徴を持っていました。
1890年には、水道条例が制定され、水道事業の市町村による経営が定められました。これにより、全国的に上水道の普及が進むことになります。

現代のアフリカでは、2023年に東部および南部の計11か国でコレラが流行しています。

水系感染症のコレラの脅威は地域や場所を問わず普遍的なものなのです。

水道整備の問題点

井戸同様に水道も作って終わりかというとそうではありません。

例えば水道管の老朽化は、長年の使用とメンテナンス不足によって進行します。 これが原因で発生する水漏れや断水は、住民の日常生活に甚大な影響を及ぼし、経済活動にも悪影響を与えます。 さらに、老朽化した水道管の維持・更新には莫大なコストがかかります。現代の水道管の寿命は大体40~50年程です。

つまり、水道の整備・メンテナンスはそれを支える技術と体制が問題となります。井戸よりも高度な技術が必要な水道の整備・メンテナンスができる人員の「教育」が必要です。
ヨーロッパではローマ帝国崩壊により、水道橋の大部分で機能を維持することができなくなっています。これも、莫大な費用が掛かるだけではなく人材が失われたことも理由の一つにあります。
ヨーロッパでもアメリカでも近代水道の整備が進むのは、19Cを待たねばなりませんでした。

治水環境が整ってない国家の事例としての夕焼けの草原

さて、ツイステ世界において治水環境が整っていない国があることは本編4章のアズールの口から語られている通りです。

そして、レオナの口から夕焼けの草原は、
・水が貴重な国であること
・熱砂の国ほどインフラ整備が進んでおらず井戸水で暮らしている国民がいること
・水道整備が進んでいないこと
・暁光の都だけインフラ整備が整っていること
が語られています。

つまり、夕焼けの草原はアズールの言う「治水環境が整っていない国」です。

そして、井戸水の管理の困難さや水道設備が不十分だと何がまずいのかは長々と上述した通りです。
そして、水道整備と大規模な都市計画はセットなことも水道整備の箇所で触れている通りです。

となると、前提でも触れたとおり
・都市計画の思想と金ぴかの噴水が不釣り合いであること
・上下水道の整備が完了していない状況で、水へのアクセスそっちのけの権威を見せびらかしている噴水を作っていること
の2点の観点で首都にあるあの噴水がいかにまずい代物かが浮かび上がってくるのです。

夕焼けの草原は、政府が果たすべき基本的な責務である国民に対する水道に代表されると公共サービスの提供等を果たせていません。

にも関わらず、たった5年前に安全な飲み水にアクセス出来ない国民が暁光の都以外にいるのを尻目に、のんきにチェカの誕生祝いの記念で噴水を作っていること自体が夕焼けの草原の腐敗でしかないのです。

加えて、もっというとチェカの誕生記念の金ぴかの噴水は、噴水の「涼む」機能としての役目を果たせていません。
水とは、熱を吸収する力が強い性質を持ちます。打ち水なども熱を吸収する性質を利用した代物です。

本編7章Chapter9でも、カリムが汗だくのNRC生を涼ませるためにユニーク魔法で水を出している描写があります。

さて、タマーシュナムイナでは、ジャックが金ぴかの噴水の近くで熱中症になっています。

加えて本編7章Chapter11でも、夢の世界にも関わらず(実際に生活していたラギーによる高い解像度により暁光の都の気候が再現されているとはいえ)、アズールはアイボリークリフで「街中の熱さが嘘のように涼しい。豊かな植栽と水景設備のおかげでしょうか?」といっています。

つまり、アイボリークリフの水景設備は涼むという機能を果たしている一方で、街中にある金ぴかの噴水は涼むという機能を果たしていないということになるのです。

ここで考えたいのは地形的に涼しいのは標高が高い側です。そして、裏を返せば標高が低い方が暑くなります。

ところが、アイボリークリフの標高は、暁光の都の金ぴかの噴水がある場所より低いことが一目瞭然です。
加えて、アイボリークリフの近くに位置するエレファントレガシーは近くに火山があり、高温の湯けむりが噴出しています。
更に温泉が湧いている為、暑くなるべくして暑い地形です。

よって、普通に考えれば標高が低く、近くに火山や温泉、高温の湯けむりが噴き出すエレファントレガシーの側にあるアイボリークリフの方が暑く感じるはずなのです。

にも関わらず、実際は標高の高い場所にある金ぴかの噴水より、アイボリークリフの方が涼しく感じている描写があるのです。

これが示すのは、翻って見ると、暁光の都の金ぴかの噴水が「噴水」としての用途で民草の為になる要素が何一つない代物であることを示しているのです。
つまり、現支配者の単なる権威の象徴としてのモニュメントでしかありません。

正直なところ、水が貴重なお土地柄だからこそ、

水が富の象徴になっていて、それを独占する王家という構図を示すモニュメントとしての噴水ならば色々腑に落ちるのです。

水を支配してる王家は偉大という権威の示し方自体は、前提でも説明している通り、例えば現実世界の絶対王政期のフランスがやっています。
ヴェルサイユ宮殿の噴水は、水へのアクセスをする為の公共施設ではなく王家の権威を示すモニュメントとして作られています。
また、ヴェルサイユ宮殿と暁光の都の噴水はよく似ています。

また、王家による水資源を権威を示すやり口に使うのは何も噴水に限らずともタマーシュナムイナで別の形で描かれているのです。

地図を見ればわかる通り水があるのは王宮と高級ホテルがあるサンセットヴィラ周辺のみで9割以上なのです。

王宮
サンセットヴィラ周辺
市街地

一般の市街地にはこの金ぴかの噴水以外の水場がほぼありません。

他にもあります。エレファントレガシーで描写された王家による入浴施設の独占です。
問題なのは、一般の人や観光客が入れるレクリエーション施設には入浴施設がないのに、王家しか入れない特別地区には温泉という入浴施設があるという露骨すぎる差異です。

よって、治水環境が整ってない為国民が安全な水にアクセスできないのを尻目に、富としての水を独占する王家という最悪な構図の象徴が現実の夕焼けの草原にある金ぴかの噴水です。
一方で、ラギーの夢に出てきたレオナによって作られたというアイボリークリフの水景施設の方がよっぽど、公共施設としても真っ当な代物として出力されていることこそが、現実の夕焼けの草原の行政のまずさを物語るのです。

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