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02. 仲居のとある日『雪の為出勤不可』

 まだ実家から出勤してた頃の話。
 実家は職場から車で二十分くらいの位置にあった。

 目が覚めて、外を見て、絶望。

「うわぁ……まっしろだぁー……」
「今日、除雪間に合ってないわ」
「うへぇー」

 めちゃくちゃ雪が積もっていた。
 そりゃもう車が埋まるくらい積もってた。
 いつもなら除雪されてる目の前の道路も除雪されてない。
 一晩で予想外に積もったらしくて、どこも除雪が間に合ってないらしい。
 とりあえず職場のグループLINEに連絡しとく。

『すみません。家の前の道路除雪来てなくて家出られません。ゆかり』
『同じく無理そうです。ヨツヤ』
『俺は出勤できます。タイスケ』
『すみませーん、無理でーす。ユミ』
『私行けます。ミツコ』
『僕は行けますー。カツノリ』
『私も行けます。来れない人はしゃーなし。休みで。行ける人でがんばろ。サキエ』
『ありがとうございます。よろしくお願いします。ゆかり』
『すんません。よろしくお願いします。ヨツヤ』
『ありがとうございます。よろしくお願いします!! ユミ』

 実家勢全滅。寮と近場に住んでる人は徒歩圏内だから行けるというわけだ。本当にすみませんごめんなさいよろしくお願いします。
 いつもなら休めてラッキー! なんて思うけど、今日は無理だ。
 この後待ってる地獄を考えれば仕事の方がよっぽどマシ。

「朝飯食ったらやるよ」
「へーい」

 母親に急かされながらさっさと朝飯を食べる。
 ボードのウェアに着替えて、防寒完璧にして、手袋して、ため息がとまらない。
 これでボード行くなら最高なのになぁぁ。
 現実はこれから怒涛の雪かきである。
 雪が重くなっていく前にかかないと余計大変になるうえに車が凹む。
 まだ雪は降り続いているがやらないわけにもいかないんだ。

「やだよーおわんないよー」
「口じゃなくて手を動かせ」
「うごかしてますー」

 まっしろな中ひたすらスコップで雪をどかしていく。
 つもりたてのふわっふわの雪たち。これはこれで本当に扱いにくくて嫌だ。遊ぶ分には楽しいんだけどねぇ。
 どこ掘ってるのかも減ってるのかもわからなくなりそうな白一色の世界。頭がおかしくなりそうだ。
 せっせとどかして、溜まった雪をダンプで近くの空き地に持ってって。延々とその繰り返し。
 その間も雪は降り続いているので、更に積もる。
 退かした瞬間から積もっていく。
 まだ道路の除雪は来ない。
 手袋は雪の水分が染み込んで既にぐちょぐちょ。手は冷たくて感覚なんか最早ない。ウェアも帽子も全部同じく。長靴履いてる足もキンキン。
 やっと車は見えてきた。フロントがりがりだわ。

「もーむり!! 母! 休憩を所望する!!」
「そうだね。ある程度やったし、お昼にしよか」

 よかった。助かった。私は根性なしだからもう無理っす。
 朝からやって、もう昼過ぎて午後一時。
 個人的にはちょーがんばったと思います。
 母のできたての絶品焼きそばを食べながらLINEを覗く。

『日帰りのお客様ゼロ。宿泊も全部キャンセルきました。タイスケ』
『今日はもう日帰り早めに閉めます。サキエ』

 そりゃそうだ。この辺の地域全体的に除雪が間に合ってないらしい。
 なんとか国道だけ通そうとがんばってるみたいだけど、その国道はいつ終わるんだか。
 そっちが終わらなければ家の前みたいな細道は除雪が来ない。
 明日は出勤できるかな。
 この分だと無理そうだよなぁ。
 さーて、午後もがんばっていきましょー。

 なんて言ってたら結局翌日も出勤できず、できたのは翌々日。
 雪かきして終わっていった休みだった。

「おはよございます」
「ゆかりちゃんおはよー。雪かき大変だったねぇ」
「ユミちゃんおはよー。大変だったなぁ」
「二人ともはよー」
「ヨツヤさんこころなしかげっそりしてるね」
「親の分もやったからなぁー」
「そりゃおつかれさんです」
「あ! みんなおはよー!」
「サキエさーん、めっちゃげんきー」
「だって暇だったからね」
「うげぇー」

 休み組が疲れてて、仕事組がちょー元気。
 これならほんとに仕事のほうがましだったと思う。
 お願いだからもう今期大雪は勘弁してほしい。切実に。

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