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お金について学んだら、なぜ積立NISAが人気なのかを理解できた

誰にでも、「いつかやろう」と思いながら、ずっと放置していることがあるんじゃないだろうか。

自分にとって、その1つが「お金の勉強」だった。

普段ギリギリの生活をしているわけではないから、お金について真剣に考えてこなかった…なんて人は多そう。まさに自分はその1人。

ただ、人口が減少し続ける日本で、円安が進み、物価が上がりまくっている今、お金について無防備なのは流石にマズいんじゃないか…と、重い腰を上げて、本気で調べてみた。

このnoteでは、お金について無知だった自分が、「お金について学ぶ中で、衝撃的だったこと」をまとめてみる。知っている人には当たり前のことかもしれないけれど、誰かの学ぶきっかけになれば嬉しい。

※お金の話は難しく説明されがちなので、誰でもわかる簡単な表現で、本質的な部分を説明することを目指しました。その分、詳細な部分はやや省略しているので、ご容赦ください。


さっそく結論から伝えると、

今まで通り生活していたら、どんどん貧しくなっていく

これが、最大の衝撃だった。
どういうことか、順を追って説明していく。


ここ最近、日本では物価の高騰が騒がれている。物価が上がると、今持っているお金で買えるものが減る。それはわかる。

でも、物価なんて、頻繁に上がるもんじゃないよね?
…そう思っていた。

そこで、先進7カ国の物価(消費者物価指数)を見てみる。下のグラフは、1995年を100とした物価の推移だ。

第2回 社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提に関する専門委員会
資料3 P.2より抜粋

日本はあまり変化がないが、他の国は物価めっちゃ上がってる。何これ怖い…

もしかして、先進国が異常なんじゃないの?他の国はどうなの?

他の国も、ガンガン上がっている。上がり続けている。
日本にいると気づきにくいが、主要な国々では、物価は上がり続けているのだ。

いやいや、ちょっと待ってくれと。そんなに物価上げちゃって、生活は成り立つの?そもそも、どういう時に物価が上がるのさ?



物価が上がるのは、賃金が上がったときだ。賃金が上がると、みんなの購買意欲が高まり、需要が大きくなって、物価が上がるのだ。

一時的には、今の日本のように、円安やら紛争やらの影響で仕入れコストが増えて、物価だけ上がることもある。でも、長い目で見れば基本的に、物価は賃金と共に上がっていく。

確かに賃金が上がっていれば、生活も成り立つ。それはわかるけれど、日本以外は、どんどん賃金が上がってるってこと?

ということで、賃金の推移を見てみる。

新しい資本主義実現会議(第21回) 資料1 P.9 より抜粋
※基準年は先程のグラフと異なる

確かに、日本以外、賃金が上がり続けている。ずっと給料が変わらない日本のサラリーマンには、衝撃の事実である。

では、賃金は物価と比べ、どれぐらい上がっているのか?

上で見たのは、単純に支払われた賃金だ(名目賃金)。では、物価の変動も加味した賃金を示す「実質賃金」も見てみよう。

100を超えていれば、物価より賃金が上がっていることになる。つまり、多くの国で、賃金が物価を超えて上昇し続けている。イタリアは不調に見えるが、それでも物価とほぼ同じ推移だ。

多くの国で賃金が上がっていることはわかった。
でもなぜこんなに上がっているのか?



賃金が上がる最も大きな要因は、労働生産性の向上だ。1人1人が提供できる価値が増えれば、利益が増えて賃金が上がる。

各国の労働生産性の変化を見てみよう。

第2回 社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提に関する専門委員会
資料3 P.4 より抜粋
※実質GDP(マンアワーベース)

イタリアを除いて、やはり基本的に上昇トレンドにある。参考までに、他の国も見てみよう。

どうやら、労働生産性も、世界的に上がり続けている。(スウェーデンがバグっている気がするけど…)



上のグラフで気になるのが、日本の生産性も上がっていること。他国と同じぐらいの推移だ。それなら、日本も賃金が上がってよいのでは…?

労働生産性と実質賃金の関係はどうなっているのか。

第2回 社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提に関する専門委員会
資料3 P.8 より抜粋
同資料3 P.9 より抜粋

一般的に、労働生産性と賃金には強い相関があるとされており、それはグラフからも見て取れる。そもそも生産が増えれば収益が増えるのだから、当然と言えば当然である。

でも日本は、労働生産性の上昇率と、賃金の上昇率が乖離している。労働生産性以外の要素に足を引っ張られているようだ。

調べてみると様々な要素が複合的に絡んでいるらしい。専門家の意見も多様で、シンプルな理由ではなさそうだが、事実は受け入れざるを得ない。参考までに、興味深かった資料を抜粋。

第3回 社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提に関する専門委員会
資料4 P6より抜粋
同資料 P5より抜粋

乖離とは別の話だが、日本は生産性の値そのものが、先進7カ国で最下位だ。その他の国と比べても低く、差が縮まる傾向もない。GDPの順位も、日本より人口の少ないドイツに抜かれることが確定した。

労働生産性の国際比較2022 P.5より抜粋



日本のことはひとまず置いておいて、広く長い目で見ると、世界的に、労働生産性が上がり続け、賃金が上がり続け、物価が上がり続けている。さらには、労働人口も増え続けている。

Data Commons

もちろん、数十年続いているとはいえ、この上昇トレンドは、いつかは終わる。GDPや生産性は上昇している一方で、その伸び率は下がってきている。人口増加率も減少してきている。

でも、いつ終わるのかは、わからない。世界人口が減り始める時かもしれないし、資本主義以外の社会システムに移行する時かもしれないし、巨大隕石が衝突する時かもしれない。

ただ、「生産性」という観点で見ると、生産性が下がり続ける状況とは、「生産する体力がなくなったとき」「生産する"価値"がなくなったとき」「生産効率が悪化したとき」だろう。

人口増加中は、生産する体力は増え続けるし、生産対象もそれなりに生まれる。AIやメタバースなどの新領域における新しい価値も生まれていく。そしてテクノロジーや教育は進化し続け、生産効率は上がっていく。

そう考えると、成長の勢いは緩やかになりつつも、流れが変化するにはそれなりの時間がかかりそうだ。

では、ここまでの情報を元に、今後を考えてみる。すると、2つの観点で貧しくなっていく未来が見えてきた。



1つ目は、日本が経済的に弱くなることによる貧しさだ。

先ほど見た通り、世界的には成長トレンドが続いているにも関わらず、日本はその波に乗れていない。労働生産性は低く、人口は減り、国全体のGDPもドイツに抜かれ、賃金も上がっていない。

少し勘違いしやすいのは、為替レートだ。例えば米ドル/円の為替レートだけを見ると、今は一時期よりは円安(1ドル=約150円)だが、1990年や1998年頃と同程度の水準に見える。

米ドル/円 Google Finance

でも、日本と違い、アメリカでは物価が上がり続けている。例えばアメリカのビックマックの価格を見ると、1990年は日本円で350円程度だが、2021年は621円にもなっている。つまり、為替だけではなく物価の変動でも、通貨の購買力は上下するのだ。

そこで、物価の変動も加味して、さらに主要な交易相手も含めた総合的な指標である「実質実効為替レート」を見てみる。この値は、大きいほど実質的な円高に、小さいほど円安になる。

日本銀行のデータを元にグラフを作成

現在、1980年以降で最も低い水準となっており、長い下降トレンドにいることがわかる。単純な為替レートの変動よりも、こちらの方が明らかな方向性を示している。

短期で見れば、これからアメリカの金利が下がって円高の波が来るかもしれない。日本国内での賃金の上昇も期待できそうではある。ただ、その力が持続的なものになるのか?総合的に見ると、とても怪しい。

成長を期待しつつも、長期的には、このまま貧しくなる流れが続いてもおかしくないことは、意識しておいた方がよさそうだ。



2つ目は、お金の相対的な価値の低下による貧しさだ。簡単に言うと、投資に回せば利益が得られるお金があるのに、手元に置いていることで損してしまう、という話。

上で説明したような、世界的な労働生産性の上昇は、株式市場に反映される。つまり、全世界の主要な株は、長期的に見れば、成長し続けているのだ。

下のグラフは、世界中の主要な株式の値動きに連動する指数「MSCI ACWI」の長期推移だ(ACWIは、株式市場の時価総額の85%をカバーしている)。

MSCI 参照

ちゃんと右肩上がりになっている。

いやいや、途中で何度も下がってるよ?というツッコミはわかる。確かに下がっている。急に半分以下に落ちている時期もある。

重要なのは、長期で見ること。労働生産性が安定して伸びていても、株式市場は、短期・中期的に見れば浮き沈みはある。

債務と返済の繰り返しや、好景気・不景気における人間心理などが影響し、波が生まれるようだ。この動画が視覚的にわかりやすい。(とはいえ、何度も見返さないと深く理解するのが難しい内容)

試しに、ACWIの10年間の平均値を取り続けると、シンプルに右肩上がりになる。15年にすれば、もっと確実になる。

ということは、それらの株に長期的に投資し続ければ、資産が増える可能性が高いということ。さらに、分散すればより確実になる。「期待値がプラスの場所で、小さく回す」のである。

この傾向に気づいたお金に余裕のある人たちは、資金を投資に回している。資金が大きいほど、複利の力が働いてどんどん増えていく。

投資に回されるお金が増えることで、逆に投資に回していないお金は、相対的に価値が低くなってしまう。増えていくお金と、増えていかないお金には、大きな差が出る。



つまり、「円だけを持つこと」「経済成長に投資しないこと」によって、貧しくなるリスクが大きくなる。では、自分のような一般人は、それらにどう対応すればよいのか?

最適解は、「積み立て投資」のようだ。少額でも長期間積み立て続ければ、十分に利益は期待できる。

例えば、資産運用シミュレーションで、利回り5%として、月3万円の積み立てを15年間続けると、約260万円の利益が得られる。月5万円なら、436万円だ。(もちろん、実際の利回りはもっと上下するが)

積み立て額が月3万円の場合
金融庁 資産運用シミュレーション

投資の方法はシンプルで、先程の「ACWI」のような指数に沿って、自動的に適切な株を選んでくれるインデックス・ファンドを選ぶだけ。

noteでは特定銘柄の推奨は禁止のようなので割愛するが、ファンドについては迷う余地がほとんどない。有名な積み立て投資の書籍『ほったらかし投資術』などが参考になる。

そして、「NISA」という制度を活用すれば、税金なしで、経済成長の恩恵を受けられる。通常は20%課されるはずの税金が取られない制度だ。そしてこの制度では、投資できるファンドが、手数料などの基準に沿って限定されている(リスクの高いファンドは除外されている)

しかも2024年からは「新NISA」として制度が一段と増強される。

本来、国は少しでも多くの税金を取りたいはずだし、特定の商品を勧めるのも違和感がある。ここから読み取れるメッセージは、国民に、できるだけ資産を安全に増やして欲しい」である。

最近はNISAに関心を持つのは若い人が多いと聞くが、しばらくすれば国民の大半が、ここに辿り着く気がする。それぐらい、大盤振る舞いの制度だ。

もちろん、投資にはリスクも伴うので、損する可能性もある。とはいえ、「資産を全て円で持ち、投資しないこと」も、大きなリスクを伴うことは、理解しておいた方がよいだろう。



まとめると、自分がこのnoteで伝えたかったのは、長期的・世界的な物価・賃金・労働生産性や経済成長のトレンドだ。

世の中は、短期的な話で溢れている。今すぐ儲けたい人たちが、「これからは円安?円高?」「この企業の株価は上がる?下がる?」なんかを気にしている。でも、短期的な未来は、誰にもわからない。

過去の記事や動画などを見るとわかるが、専門家でさえ頻繁に予測を外している。仕事ならまだしも、プライベートの時間を使った資産運用において、プロでも当てられない未来を、素人が予測しても意味がない。

だからこそ、目先の利益に飛びつこうとせず、王道である「長期・積立・分散」を地道に続けることが、現時点での最適解ということになる。

もちろん、未来の話に「必ず」はない。次の30年はそんなにうまく行かないよ、という意見もある。正解は誰にもわからないので、後悔しないように、自分で調べ、自分で考えて、決めるのがよさそうだ。



最後に、蛇足として少しだけ。


「もう日本はオワコンだ」的な書き方になってしまったが、そんな気持ちは全くない。むしろ、こんなに素敵な国はないと思っている。お金に変えられていない魅力がたくさんある。

安全で治安が良く、綺麗で、様々なサービスが行き届いていて、食べ物も美味しい。マンガ・アニメやゲームも強い。長い歴史を持つ独自の文化もある。

GDPの意味が薄れ始めたときや、メタバース領域が拡大し、誰もが世界やコンテンツを作れる時代になったとき、きっと日本の価値が見直される。

ただ現時点では、危険な状況にある。「これから良くなるかも」という、日本人としてのバイアスを持つ自分でも危険だと感じるのだから、海外の投資家からは、もっと酷い見方をされているはず。

とはいえ今の日本の状況に文句を言っていても、自分の資産は変わらず、時間が過ぎていくだけ。それなら地道に、リスク許容範囲内で、長期的に積み立て続ける。そのために、余計な出費をなくし、スキルを磨いて働いて稼ぐ。

お金について学んで辿り着いたのは、こんなシンプルな結論だった。

このnoteが、誰かの未来を考えるきっかけになれたなら、とても嬉しい。さらにお金に余裕のある方は、下のボタンからサポートしていただけるともっと嬉し お金について学んでみると、人生がより楽しくなるかもしれない。

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