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GEAIM:『サドンアタック』公式大会 4 連覇を狙うクラン NabD のゲームに対する取り組み方

公開日:2011-02-22 11:25:17

オンライン FPS『サドンアタック』の公式大会 4 連覇を狙う日本最強クラン NabD リーダー抹茶氏とメンバーの KeNNy 氏に大会に向けての取り組み方や運営移管に伴うお話などを聞いてみました。※このインタビューは 2011 年 2月 2 日に東京都内で行わせていただきました。

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ー『サドンアタック』の運営がゲームヤロウ社からネクソン社に移管されました。以降、プレーヤーのブログや Twitter を見ていると、チートや運営方針などについて不満を持った意見をよく見かけます。公式大会『SACTL』が開催されない可能性もありましたが、開催については実現されました。移管後に NabD の活動は縮小されていたように感じています。そのような経緯から、今回シード権を行使して大会に出場することを決定したのはどのような経緯からでしょうか?

KeNNy: 移管が決まってからチームのメンバーと今後の活動について話し合っていた時に、「ネクソン社が公式大会を開催するのであれば参加しよう」ということを決めていました。大会の開催が決定されるまでは、メンバーそれぞれが自由に個々の活動をしていました。

また、その話し合いにて「公式大会が開催されるのであれば、個人の活動よりもチームの活動を優先して公式大会に備える」という事を取り決めとしていました。

ー『SACTL2010-2011』に向けてのチーム練習は開始されていますか?

抹茶: 2 月 1 日から『SACTL2010-2011』に向けての活動を再開しました。しかし、KeNNy が 『Alliance of Valiant Arms』の公認アドバイザーとしての活動で忙しく、練習に合流するのが難しい状態なので残りのメンバーと練習を行っています。今大会は助っ人メンバーを登録しているので、KeNNy の代わりにそのメンバーを入れて練習を行っている状態です。

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『SACTL2010-2011』NabD 参加登録メンバー
(さらにリーダーMatcha氏を含む)

ー海外の有名チームやプレーヤーのインタビューを読むと、毎日 8 時間近い練習を実施しているというようなエピソードが紹介されています。NabD は公式大会 3 連覇を達成し、日本一の Sudden Attack チームといって間違いない状態です。その NabD の練習はどのようにして行われているのでしょうか?

抹茶: 21 時から 24 時くらいまでを目安にチーム練習をしていますね。大会前でも追い込みのように練習時間を増やすのではなく、いつもどおり短時間で集中して練習する事を心がけています。チームには、学生、社会人などいろいろなメンバーがいますので、長時間拘束するのは難しい状態です。

ここで「毎日数時間を練習のために必ず空けるように」というルールを決めてしまうとチームとしての活動が成り立たなくなってしまいます。毎日の練習は、リーダーである僕の判断で、集中出来なくなっているようであれば早めに切り上げてしまうという事もあります。集中せず惰性でプレーしている事には練習としての意味がないからです。

NabD の練習はどのように行われているのでしょうか?何か決まったメニューのようなものはありますか?

抹茶: 練習方法について決まりは特にありません。基本的に、メンバーが集まり練習試合を行い、それを通じて改善する必要がある点が出てきた場合は話し合っていくような感じです。

KeNNy: NabD は基本配置以外、特に決まったルールがありません。個々の判断が尊重されており、作戦をベースにしたチームプレーをしているわけではないのです。このような戦況になったので報告を行い、それを元に判断してベストの選択をするという、個々の経験を活かしたスタイルになっています。ですので、チームとして決まった作戦を用意するという事はあまりしていません。

抹茶: 普段の練習はよほどひどい事がない限りはそれを咎めず、それぞれ自由にプレーするようにしています。チームのメンバー的に、決まった作戦を忠実に実行するという方法は合っていないという結論に達したためです。それよりも、個々の判断をベースにして展開毎に方針を決定していくという流動的なスタイルの方がやりやすいですね。

『Counter-Stike』では、指揮官に相当する選手が各ラウンドの方針を決定するスタイルが主流となっています。NabD はどのようにしてプレーされているのでしょうか?

抹茶: NabD の場合はメンバーのプレースタイル的にそのような決まった作戦やフォーメーションを忠実に実行するという方法はマッチしていません。ですので、先ほどお話したとおり各選手の判断を元にチームとしての行動を決定しています。

KeNNy: フォーメーションや作戦を固定してしまうと、それを再現することに注力してしまい、プレーしていて面白く無くなってしまいます。基本的にはゲームですから、楽しくなければ意味がありません。ですから、NabD はゲームを楽しみながら強くなることを目指しています。

抹茶: 先ほどお話したとおり、NabD は学生や社会人で構成されているため、まとまった時間を毎日確保するのが難しいです。マップの研究やフォーメーションの精度を上げるにはかなりの時間を必要とします。メンバー全員がそのような時間を作るのは難しいので、各人が自由にプレーし、悪いところを修正していくというスタイルを採用しています。

ーNabD はどのような意識を持って練習に取り組んでいるのでしょうか?

抹茶: チームのスタイルにあったプレーをする事ですね。自分達のスタイルを貫いて練習する事です。上手いプレーヤーの意見を参考にしてプレーする事も大切ですが、それを鵜呑みにして何も考えずにプレーするのは良くないと思います。自分達にそれが合っているとは限らないので、それを参考に、自分達のスタイルをみつけるというのが重要だと思います。

そして、個人的にはゲームのシステムやマップの構造を把握するのが大切だと思います。このマップではここから狙うのが有利だとか、そういうことを実際のプレーを通じて理解する必要があります。また、普段のプレーからも敵プレーヤーがどのような動きをしているのかを気にするのも大切です。このプレーヤーはこういう状況だとこうするというような事を覚えておくと、実戦で判断がしやすくなります。

KeNNy: FPS はその瞬間ごとの判断が重要なゲームです。ですので、質問されて答えた事が正しいとは限りません。自分なりにいろいろと考えて、このようなシチュエーションではこうするのが良いという事を積み重ねていく事が大切なのではないでしょうか。

僕は Quake3 をしていたときに、ストレーフジャンプという高速移動をするためのテクニックを全く使いこなすことが出来ませんでした。ネッカ渋谷にて、eスポーツ大会を運営されていた Quake3 プレーヤーの長崎さんにアドバイスをしていただいて、夜から朝までプレーした後、家に帰ってからそれを参考に 6 時間くらい練習しましたがなかなか習得することができませんでした。以降も少しずつ練習していってやっとマスターすることができました。やはり考えて出来るまで練習するという事が大切だと思います。

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高速移動テクニック『ストレーフジャンプ』

日本人の性質なのかもしれないのですが、最近のプレーヤーは基本的にすぐ諦めてしまったり何かのせいにしたりという事が多いように感じていますね。うまくいかなかった時に人を中傷したりして溜飲を下げていても何も得るものがないので、何が悪かったのかということを考えて改善していく方が建設的だと思います。

また、最近は「どうやったら上手くなれますか?」とか抽象的な質問してくるだけというプレーヤーが多いですね。聞いてそれを実行出来る状態なのか疑問に感じることがあります。

自分でやり方を見つけて自分のスタイルを確立しないと上手くなることは出来ないと思います。上手いプレーヤーに聞いてそれをそのまま取り入れるというのはあまり良くないのではないでしょうか。もちろん、上級者にアドバイスを聞くことは大事だと思います。ただ、近道的に質問するのではなく、「自分でこう考えて試してみた結果こうだったのですが」というように自分の考えをしっかりと持った上で聞いた方がより参考になると思います。

ちなみに、Counter-Strike で活躍していたプロゲーマーの Ola "elemeNt" Moum 選手は、インタビューで「上手い人の config をマネした方がうまくなれますか?」という質問に対して「参考にするのは重要だが、自分のスタイルに合わせず使うことは良くない。自分のスタイルを見つけて貫く方が上手くなれる」と答えていました。

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elemeNt 選手は Counter-Strike の国際大会で幾度もの世界チャンピオンや上位入賞を達成したノルウェーのプロゲーマー。

KeNNy さんは『サドンアタック』の前には、『Counter-Strike』の DeadlyDrive や 4dimensioN といった日本を代表するようなチームでプレーされていました。これらのチームではどのようにプレーされていたのでしょうか?

KeNNy: 『サドンアタック』をやる前は『Counter-Strike』をプレーしていましたが、両チームとも作戦を重視したスタイルだったと思います。『Counter-Strike』と『サドンアタック』はそもそも試合の形式やスタイルが異なります。『Counter-Strike』はチームのメンバーがそれぞれ所有しているマネーを使い武器を購入する必要があるので、各ラウンドで勝利し報酬マネーを得ることが非常に重要となります。

しかし、『サドンアタック』の場合は武器が固定されているので、その点はあまり気にする必要がありません。毎回武器がそろっているため個々のスキルで突破出来るという場合もありますので、厳密にチームプレーを決めてそれを実行する必要は無い場合が多いと思っています。

『Counter-Strike』の場合は各ラウンドが重要になるので、どのような方針で各ラウンドをプレーするかという事が重要になっているのではないでしょうか。

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4dimensioN時代(2005年・韓国) 後列中央がKeNNy氏

抹茶: KeNNy が『Counter-Strike』から『サドンアタック』に転向し、NabD に加入してからチームとしての作戦や方針を決めた方ではないのかという提案がありました。試合で負けると、それまでの経験からチームとして決まった方針でプレーした方が良いと思っていたからではないでしょうか。

KeNNy: その時はそう思っていましたね。しかし、メンバーとプレーを重ねていくうちに、各人のスタイルがわかってきました。

実際に、作戦を決めてその通りに動いていくという事を試したこともありましたが、そのスタイルはチームに合わないことがわかりました。それ以降は、各人の判断をベースに方針を都度決めていくというスタイルが定着しました。

ーチームリーダーの抹茶さんは現在 20 歳だと聞いています。チームには年上・年下のメンバーもおり、いろいろと気を使う部分も多いのではないでしょうか。チームをまとめていく上で、こうしていこうと決めていることはありますか?

抹茶: 20 歳前後の若いプレーヤーというのは、自分の意見を曲げなかったり、我が強い印象があります。そのようなメンバーが、チームメンバー全員がいるところで不平や不満を口にするとトラブルになることが多いと感じていました。ですので、まずは何か不満があったり気に入らないことがある場合は、メンバー全員がいる場所ではなく、リーダーである僕個人に相談するような仕組みにしています。その相談を受けて、僕が各メンバーと話をする機会を作り、問題を解決するための提案をしています。

例えば、チームが試合に負けた後というのはどこでもそうだと思いますが、モチベーションが下がり、気に入らなかったプレーや展開に不満をぶつけるという事があるのではないでしょうか。このような場合に、敗北の原因として指摘されたプレーヤーは、自分の考えとは違うという不満を持つケースが多いです。その結果、最悪の場合不満が解消されずチームを脱退するという事を口にすることもあります。

ですので、僕はチームとしてはこういう方針にしたいので「ここを改善するようにしようよ」という事を各選手に提案してみて、チームとしての活動が円滑に行われることを目指しています。

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NabD のメンバー。2010年に開催された公式大会『SAOMT Season3』より。

ー試合で負けそうになったりした時に、「チーム的にもうどうしようもない」というような感じで勝利のイメージが持てないようなシチュエーションは必ずあると思います。しかし、NabD は現実として公式大会 3 連覇を達成しており、そのようなケースをはねのけてきたと言えるでしょう。そのような逆境を跳ね返すための工夫などはあるのでしょうか?

抹茶: 僕たちは試合数やオフラインでプレーしている回数が多いというのもあって、逆境で緊張せず普段のプレーが出来ているのが功を奏していると思います。ピンチになっても悲観せず、笑顔で前向きにプレー出来ているので、チームがマイナス方向に向かったまま次のラウンドに突入するということがありません。

KeNNy: よくこの話をするのですが、チームで声を出して士気を高める事が重要だと思っています。これはチームのスタイルによって違う部分もあると思いますが、とても重要な要素だと感じています。

僕が最初に世界大会に出場する事になった『Counter-Strike』チームの Deadly Drive では、そのような事が重視されており、声を出す事の大切さを教えられました。そこで学んだ事を実行することによって結果を出してきた事もあり、僕はその経験を通じてメンバーや相談を受けたプレーヤーの方達にアドバイスしています。

抹茶: オフライン大会では、声を出す事によってチームの士気をあげる一方、相手チームを萎縮させる効果があると思っています。もし、初めて参加する大会で敵チームが大きな声を出してモチベーションを上げるようなことをしていた場合、自分だったらのまれてしまうのではないかと思うんですよね。ですから、声出しはチームにとって非常に重要だと考えています。

ー公式大会の勝利後インタビューで、チームメンバーがリーダーの抹茶さんに感謝しているという事を口にされています。抹茶さんのどのようなところにメンバーは感謝しているのでしょうか?

KeNNy: オフライン大会決勝戦での MVP という事ではなく、そこに到達するまでの過程で抹茶がリーダーとして行動してきた事を見て、各メンバーは彼が MVP だと思っているという発言をしているのだと思います。やはり、チームをまとめるというのは大変な事ですから。

ーサドンアタックの運営会社が変わった事を受けて、「オンラインゲームを運営する」とはどういう事だと感じていますか?

抹茶: いかにゲームを理解しているかではないかと思います。あとは、ユーザー視点で企画や運営をしているかということではないかではないでしょうか。ゲームヤロウ社はチートの対策などが早く安心してプレー出来たので、他の運営会社も見習ってほしいと思っています。

KeNNy: 抹茶も言ったように、運営している人がどのくらいゲームを知っているかによって、そのゲームの良さが企画や運営に出てくると思います。あとは、やはり対戦ゲームなので競い合える環境作りをして欲しいですね。いくらゲームのコンテンツをアップデートしても、ユーザーが求めているのはそこではない場合もあります。

ゲームヤロウ社が運営していた時代も、「この次の大会はいつなのか」「次期大会は開催されるのか」という不安の声が上がっていました。

僕が関わらせて頂いている オンラインFPS『Alliance of Valiant Arms』は、今年の年間大会スケジュールを発表しまして、プレーヤーのみなさんが安心して競い合える展開を目指しています。

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『Alliance of Valiant Arms』が発表した 2011 年の大会スケジュール。
ほぼ毎月公式大会を開催。
プレーヤーは参加の予定を立てやすくなる他、
安心してプレーすることが出来る。

ー話は変わりますが、ダーマポイントさんに大会の優勝賞品としてオリジナルのデバイスを作っていただいたと思いますが、あれはどうされていますか?使っていますか?

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『SACTL2009』優勝時に進呈された特別デザインのマウス

抹茶: 僕はトロフィーのように家に飾っていますね。とてもではないですが使えません。あのような賞品を提供していただいたのは非常にうれしいですね。大切にしたいのでプレーで使用することはないですね。

KeNNy: デバイスメーカーがああいう風に自らユーザーのために何かをしようと考えてくれたことが何よりうれしいですね。また何かあのような企画が大会で行われたら選手のモチベーションになるのではないでしょうか。

ーNabD は『SACTL 2010-2011』に出場して優勝する事を目標にして活動されていますね。気が早い質問ですが、今大会の終了後の展開についてはチームとして何か決っている事はありますか?

KeNNy: それは各個人あると思うんですよ。僕は立場的な事もあるので、今大会を区切りに『サドンアタック』のプレーをストップしようかなと思っています。NabD メンバーは非常に好きなので、もし「次回の公式大会も参加しよう」という話になれば検討する事もあると思います。個人的にはまだ現役のプレーヤーとして活動を続けていきたいと思うので、ゲームを辞めるということはありません。

抹茶: 僕としてはチート対策がどうなるか次第ですね。今回の大会は、個人的には『サドンアタック』を続けていくかどうかの分岐点になると思っています。チート対策が行われないのであれば、安心してプレー出来ないですし、競技性も薄れてしまうので違うタイトルに移る事を検討すると思います。

個人的には、現在『サドンアタック』と共に 『クロスファイア』もプレーしています。現在、『クロスファイア』では Vault というチームが 1 強状態なのですが、彼らは知り合いということもあり、倒してやりたいという気持ちがありますね。2 月中に日韓戦の大会が行われるそうなので、そちらに出場してみようかと思っています。

KeNNy: 今回の『SACTL2010-2011』はチーム一丸となって優勝し 4 連覇を目指して行きたいと思います。個人的に、最近は『サドンアタック』をプレーしておらず腕が落ちてしまっているので練習をしっかりしていかないと。他の有力チームは移管後も継続してプレーしていますから、負けないようにがんばりたいと思います。みなさん応援よろしくお願いいたします。

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決まった時間での短期集中で成果を上げているというお話が非常に興味深かったです。練習や考え方等については参考になる部分が多いのではないでしょうか。

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