GEAIM:ゲーミングデバイスメーカー『SteelSeries』のマーケティングマネージャー川田洋 氏に賞金付き大会『SteelSeries King of the Hill』の日本展開について聞く
公開日:2011-03-05 00:33:14
デンマークを拠点とするゲーミングデバイスメーカー『SteelSeries』は、2011 年 2 月にコミュニティと協力して行なうゲームイベント『SteelSeries King of the Hill』の国内開催を発表しました。同イベントは、ユニークなシステムや賞金を用意しており注目のイベントとなっています。マーケティングマネージャーの川田洋 氏に開催の経緯について質問してみました。
ー『SteelSeries King of the Hill(以下、 KotH)』の開催が発表となり、ユニークな形式のルールや賞金提供などで非常に話題となっています。 KotH を日本で開催しようと思ったきっかけについて教えてください。
SteelSeries 川田:「e-Sports なんか流行らない」「無理」「他の国とは違う」そんな言葉がプレイヤー、そして企業の間で飛び交っているのを聞くのはとても寂しいものです。「日本なりの楽しみ方を模索したい」「プレイヤーの諦めている姿ではなく目標に向かってがんばっている姿を見たい」そんな私の思いがきっかけでしたね。
『SteelSeries King of the Hill』は世界最大級の
e-Sports コミュニティサイト『GotFrag』と共にスタートした。
弊社が海外で KotH をスタートしたのが 2007 年なのですが、私はこれを日本でもやりたいとずっと思っていました。ただ、 2007 年というと弊社が日本に入ってきたばかりの時期だったので、予算的にも各コミュニティのサイズ的にも厳しいものがありました。
2010 年になってようやく予算的にも都合がつき、信頼関係を結べるようなコミュニティも生まれてきたので、サイトの作成に着手し今年ようやくロンチすることが出来た感じです。
『SteelSeries King of the Hill』の日本サイト。
KotH で私がやりたい事は、「プレイヤーにとっても観戦する側にとっても、どんなに小さくてもいいから努力すれば手が届く距離の目標をもって継続的に競技ができる環境を提供すること」です。現在では、オフィシャルの大会等を行っている企業も増えはしましたが、年に一回のみの開催であることが多いので、ガチンコで競技する機会が十分にあるとは言えません。
また、観戦する側からするとリーグ戦やダブルイルミネーション等の形式で生まれる、多くの試合結果を全てフォローしていくのは大変ですし、そもそも初心者にとってはその意味すら分からないでしょう。
コミュニティから選りすぐられたプレイヤーによるトップレベルの戦いに簡単にアクセスでき、観戦する側にとっても目指すレベル、つまり目標を明確にすることで、コミュニティ全体のモチベーションを引き上げて、ゲームでガチンコ勝負をする事がより楽しめる環境を作るのが、当面の目標です。
ー初期タイトルとして『Starcraft2 JP Community』と『AoE3 JP Community』の協力により RTS『StarCraft2』と『Age of Empires3』の採用が実現しています。こちらのコミュニティと共同でイベントを進行していこうと決めた理由について教えてください。
SteelSeries 川田:『Starcraft2 JP Community』と『AoE3 JP Community』主催の大会を弊社の方でスポンサーさせていただいていまして、その流れで運営を行っている matsujun さんに日本向けの KotH の構想を話したところ、「毎週でもやりたい」とのお返事をいただいたので、じゃあやっちゃおうといった感じで決めました。
『Starcraft2 JP Community』と『AoE3 JP Community』
大会運営や実況放送などを精力的に行なっている。
コミュニティとして、年単位で継続的に大会を開催している他、動画配信も積極的に行なっている背景が十分にあったので、決断は簡単なものでした。このモチベーションとバイタリティは一個人として、そして企業としても見習うべきものだと思います。
ーKotH では、運営に協力できるコミュニティの募集を行なっています。具体的に、どのくらいの運用スキルを求めているのでしょうか?
SteelSeries 川田:特に多くは求めていません。コミュニティが決めた期間毎に予選やファン投票等によるチャレンジャーの選出が出来て、期間毎にキングとチャレンジャーの試合(1 試合)を運営して動画としてそれをアウトプット出来れば基準のラインはクリアできます。
そして、コミュニティとは言っていますが、もちろんコミュニティを束ねる企業側の人にも運営を行なっていただけます。
KotH では試合の更新が簡単にできるよう、バックエンドのプログラムを作ってあるので、意欲さえあれば比較的簡単に誰でも出来ると思います。
ただし KotH では「継続」がキーワードになります。継続して運営を行えないコミュニティと組んでしまうと、それに割いた賞金プールや労力もムダになりますし、継続して運営していただいている他のコミュニティにも申し訳が立ちません。
必ずしも毎週、毎月試合を行わなければいけないとは言いませんが、「ノリでやっていくので賞金だけ確保しておいてください」という姿勢には「Yes」とは言えないので、きちんと意思と目標を持って取り組める方とのみお付き合いさせていただきたいと思っています。
中にはコミュニティが集える場所がないゲームもあるかと思いますが、その場合でもお問い合わせさえいただければ、どういった取り組みが必要かを一緒に考えることは出来ますので、気軽にお問い合わせをいただけると嬉しいです。
『SteelSeries King of the Hill』の開催に興味がある個人・団体は、
こちらから相談・提案することが出来る。
ーKotH は毎月 5 万円の予算が組まれています。こちらは、どのくらいの期間を想定して設定されたものなのでしょうか?
SteelSeries 川田:プレイヤーがゲームで競技する事をやめない限りは、続けたいと思っています。継続をキーワードに掲げる以上は、弊社が継続して取り組めないのであれば意味がありませんしね。たとえ予算が縮小して厳しい場面になっても、どんな形でも継続してやっていきたいですね。
予算は年を経る毎に増やしていきたいと思っていますが、これにはコミュニティの協力が不可欠です。 KotH をより多くのタイトルで競い合える場所にすることで、それは達成できると思うので、より多くのコミュニティからのお問い合わせをお待ちしています。
ー現在は、1vs1 のタイトルが採用されていますが、チームベースのタイトルでも KotH と協力して運営を行なっていくことは出来るのでしょうか?
SteelSeries 川田:もちろん出来ます。ゲームのジャンル、プラットフォーム、対戦形式関係なく運営は行えます。ただし、チームで人数が増えるからといって、そのタイトルのみ賞金を底上げするのは現状だと難しいですね。
そのタイトルの人気が高く、人が多く集まるのであれば、賞金は自然と上がっていきます。賞品であれば、チームのみなさんが受け取れるような配慮はしたいと思いますが、現状だとチーム戦のゲームでの開催が具体的にはなっていないので、今ここでお約束は出来ないですね。
『GotFrag』では Counter-Strike1.6 で『SteelSeries King of the Hill』が開催されていた。
ー『SteelSeries』は最近では国内イベント等への賞品提供を制限しているように感じられます。この辺りについてどのような考えがあるのかよろしければ教えてください。
SteelSeries 川田:弊社が日本にやってきた時は、イベントは数えるほどしかなく、市場を盛り上げるために出来る限りの提供を行なっていました。ただ、 2 年 3 年と経ってくると競合企業も増え、弊社と同じように製品をプレイヤーイベント等に提供するスタイルを取る企業も増えてきました。
そんな中で問題になったのが、競合するブランドが 2 社も 3 社も一つのイベントに集中する事です。一つのイベントにデバイスメーカーの協賛が 3 社は当たり前のような、なんとも奇妙な形が出来上がってしまいました。
これは明確な制限を設けなかった弊社の落ち度なのですが、今まで製品を提供していたイベントが当たり前のように競合企業を並列スポンサーとして並べるようになってしまったので、弊社がイベントに製品を提供する意味が失われてしまいました。
海外では、デバイスメーカーがバッティングしない形でスポンサードするのが一般的。
また、クオリティーに関係なく、イベントをやれば製品は提供してもらえるという考えも流布してしまったので、これも考えものでした。
プレイヤーにとってはより多い賞品が手に入るから良いという考えもありますが、製品提供をしながら様々な面でのサポートを提案し、イベント自体をより良いものにしていくというのが弊社のスタイルなので、それがやりにくい状況になってしまったので、現在では条件をかなり絞っています。
ーイベントやチーム活動に対するスポンサードの要望はありますか? これらに OK を出すにはどのような基準があるのでしょうか?
SteelSeries 川田:ちらほらあります。基準ですが簡単なものとしては、チーム活動においては、まず「チーム/プレイヤーとして自分自身をプロモーションする力があるかどうか」「目標は明確かどうか」、そして最後に「実力や経歴」ですね。
自分のチームを満足にプレゼンできない状態で、スポンサーのプロモーションを行えるかどうかは疑問に思います。チームのブログ/公式サイト等が存在して、チームの情報をきちんと発信できる状態で、そこにファンを誘導する努力をしているかどうかが重要になります。
そして、チームとしての目標が具体的に掲げられていて、それに向かって活動が出来ているかどうかも重要です。どんなに大きな目標が掲げられていても、それに向かって具体的なプロセスを考えられていない場合は意味がないですし、そういったチームが 1 年も経たずして解体するのを幾度も見てきているので、ここは弊社も慎重に吟味しています。
最後に、実力や経歴です。あくまで競技なので実力が全てです。勝てないチームにはスポンサーはつかないのは周知の事実かと思います。例外的に競技プレイヤーとしてではなく、ゲームを配信する方から等のお問い合わせに関しては、これは適用されません。
そのほかにも、プレイしているタイトルの将来性も考慮して、最終的にサポートの有無を返答させていただいています。返事は「Yes」「No」だけではなく、「金銭的なサポートは無理だけど条件さえ満たせばデバイスのサポートなら出来る」だったり、「ここをもう少しがんばってくれれば前向きに検討できる」等、弊社から逆に提案させていただくケースも多いです。ただ、悲しいことに、よしがんばろうと言って再度お問い合わせをくれたチームはいませんけどね :(
イベントに関してもほぼ同じですが、「サイトの品質が一定の基準をクリアしているか」、「試合の結果がきちんと見易い形で整理されているか」、「継続的に目標をもって運営ができているか」、「自らプロモーションを提案する力があるか」等が吟味されます。これもチームサポートと一緒で「Yes」「No」ではなく、サイトのこの部分を直してくれれば等、条件付の提案を逆にさせていただくケースも多いです。
総じて、趣味の延長といえどもプロフェッショナルとしての気概をもって取り組めているかどうかが重要になると言えますね。
SteelSeries がスポンサードするプロゲームチーム『fnatic』のサイト。
ーいろいろとご回答いただきましてありがとうございました。最後にメッセージがありましたらよろしくお願いいたします。
SteelSeries 川田:『SteelSeries King of the Hill』は競技的にゲームをプレイすること、つまり、今までは鼻で笑われてきた「e-Sports」という考えをより身近に解り易い形で体現できるツールであると信じています。
そして、そんな小難しい考えを排除しても、今プレイしているゲームをより楽しいものに出来るものだと信じています。それを実現するには、コミュニティの皆さんの力が必要です。一緒に面白いことをやって、堅物な大人をビックリさせましょう。
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『SteelSeries』の『SteelSeries King of the Hill』に対する思いや熱意が伝わったのではないでしょうか。『SteelSeries King of the Hill』に興味のある方は、今回のインタビューの内容を踏まえて提案をしてみると良いと思います。
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