ヨット用の時計 購入ガイド
なぜ時計が必要なのか?
セーリング競技は、あらかじめ決められたスケジュールに沿って粛々と進行していきます。
たとえば帆走指示書や公式掲示板に「11:00 第1レース予告信号」と記されているとします。
すると、風が安定している限り11:00ドンピシャに予告信号(スタート5分前)が揚がります。
そして、予告信号が揚がった後、きっちり5分後にスタート信号が鳴り響きます。——それは4分59秒後でもなければ、5分1秒後でもないのです。
選手も、スタート信号と同時に、まさにドンピシャのタイミングで加速しながらスタートラインから飛び出すことを目指します。
スタート信号より1秒でも早く出てしまうとリ・コールされ(呼び戻される)、1秒でも遅く出てしまうとライバルたちにフレッシュウインドを奪われ、いずれにしても序盤からとても厳しいレース展開を強いられてしまいます。
なので、正確で使いやすいヨット用の時計が必要なのです。
B&G高松海洋クラブでもBクラス以上になると時計は必需です。
Cクラスでも夏以降はレース形式の練習を取り入れていきますので、あった方がベターです。
ヨットで使う時計に求められる機能
防水性(必須)
カウントダウンまたはストップウォッチ機能(必須)
堅牢性(必須)
電波/GPSによる正確な時刻表示(あればうれしい)
以上の4つのなかで、1~3は必須機能です。
一般的なヨットの大会は正確な時刻をベースにして運営されますので、4もあれば便利です。
ヨット用時計の種類
大きく分けて、「ヨット専用時計(セーリングタイマー)」と「カシオ G SHOCKファミリー」の2つに分けていいと思います。
「セーリングタイマー」でネット検索すると種種のヨット用時計がヒットします。
ヨットレース用の時計(セーリングタイマー)は、大型と普通サイズの2つに分けられます。
セーリングタイマーのメリットは、レース専用機能が充実していることです。機種によってディテールは異なりますが、下記のような特徴があります。
複数のカウントダウン(5分、3分など)をプリセットしておくことができる機種が多い。
5分前(予告信号)でカウントダウンボタンを押すタイミングがずれても、4分前(準備信号)で修正することができたりする。
バイブレーションや音でカウントダウンを知らせてくれたりする。
①大型セーリングタイマー
OptimumやGILLというブランドから大型タイマーが販売されています。
とても見やすいです。
手首にはめることはもちろん、上腕部に取り付けることもできます。上腕部に取り付けると、スタート前のテンパっているときにも、最小限のアクションで時間を確認できるという大きなメリットがあります。
操作ボタン類も大きいので、グローブをはめていても操作しやすいのもメリットです。
デメリットとしては、ベルト部と時計部がセパレートすることから、なんらかの衝撃で時計部が外れて、最悪は海に落とすこともあります。またベルト自体もワンタッチ式ベルトなので、ベルト自体がポロリと外れて時計ごと落としてしまうこともあります(珍しくない)。
大型タイマーに限らずヨット専用時計全般にいえるのは、時計としての精度があまり良くないです。月差30秒以上はズレる印象です。
②普通サイズのセーリングタイマー
大型タイマーの「見やすさ」はない代わりに、「落としにくい」という素晴らしいメリットがあります。
機能的には大型タイマーと変わりませんが、ボタンが小さいのでフルフィンガーグローブをはめていると操作しにくい、というデメリットがあります。
レースタイマーとしての機能に文句はありませんが、実際に使ってみると時刻がズレるという印象です(月差1分以上はありそう)。
電池の消耗も意外にはげしいです。さらに、電池を交換するときに気づいたのですが、裏蓋は細いOリングだけで防水性をキープしているので、G-SHOCKほどの防水性はないと思います。……このあたりはOptimumの大型タイマーも同じようなものだと想像しますが。
GILLのほか、RONSTANというブランドから販売されています。
③CASIO G-SHOCKファミリー
セーリング専用タイマーではありませんが、G-SHOCKファミリーを使う選手も多いです。
G-SHOCKをヨットで使うには、次の機能があると便利です。(防水性能はデフォルト。20気圧防水で十分です)
カウントダウン(CASIOでは「タイマー機能」と呼んでいる)
電波時計
カウントダウン(タイマー機能)も、ほとんどのデジタル系G-SHOCKで標準機能になっているようですが、全機種を確認したわけではないので、購入前には一応ご確認ください。
G-SHOCKのメリットとしては、正確でタフ、確かな防水性能というところでしょうか。デザインもカラーもいろいろなので、好みのスタイルに合わせられるのも大きなメリットです。
私自身も30年以上ヨットタイマーとしてG-SHOCK愛用していますが、なんの文句もありません。
強いてデメリットをいえば、カウントダウンのプリセットが1つしかできないこと。5分前にしておくのが良いでしょう。
また、専用タイマーと違って、5分前でカウントダウンをはじめるとそれ以降にタイマー補正ができないこと、そして操作ボタンも小さいのでフルフィンガーグローブをしていると操作しにくいこともデメリットでしょうか。
とはいっても、電波補正による正確な時刻表示は、正確な時刻をベースに運営されるレース(※)ではとても有効です。
上の写真のGW-M5610U-1CJFは、電波時計、タフソーラー、カントダウンが付いているうえに、ワールドタイム機能もあるので海外遠征でも役立ちます。
(※)ごくまれに、正確な時刻で運営しないトホホなレース委員会も存在します。
まとめ
以上、ざっくりとヨット用時計を説明しました。
メリット、デメリットを考えて購入していただければOKですが、ここに紹介した3つのタイプであれば、どれを購入しても大丈夫です。
これら以外に高級なヨット用時計もありますが、とりあえず必要なものではありません。
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