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知識や経験が少なくてもいい?他社と比べない、自分らしいくらしの「こだわり」の育て方 (後編)
知識や経験が少なくてもいい?他社と比べない、
自分らしいくらしの「こだわり」の育て方 (前編)
の続きになります
「今日、何時間生きましたか?」
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長谷
ここまでのお話で、くらしを豊かにするこだわりのあり方がどのようなものなのか、その輪郭が徐々につかめてきたように感じます。
鞍田
長谷さんがおっしゃったように「こだわり」って、ちょっとアクが強い言葉というか・・・・・・そういう意味では「こだわり=リズムの素」くらいで捉えるのがちょうどいいのかな、と思ったりもします。「ルーティン」だと、ちょっと気取った感じになりますしね(笑)
長谷
こだわりは、くらしを豊かにするリズムの素ーーなんだかグッと身近になった気がします!
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鞍田
リズムでいうと、僕の場合、朝ごはんのメニューが決まっていて。食パンと珈琲と、カスピ海ヨーグルト。これがもう20年以上、ずっと同じなんです。趣味から育てていくのもいいですが、そういうささやかな反復される日々のリズムみたいなものから「もしかしたら、これ、自分らしいかも」と感じられるこだわりを見いだしていくのも、案外いいのかもしれません。
長谷
僕も毎朝、珈琲豆を挽いてペーパードリップしてお気に入りのマグカップで飲むことで、くらしにリズムを作っている気がします。タイパやコスパでは測れない、ささやかだけど確かに幸せなくらしの「小確幸」だなと感じてます。
鞍田
それは素敵ですね。僕たちは日々の仕事や生活で「時間と対価」について考えることが多い。けれども、くらしって本来、そういうものじゃないと思うんです。
僕の友人に福島県奥会津の昭和村で営まれている布づくりの可能性を探っている女性たちがいます。糸の材料となる「からむし(苧麻)」という植物を育て、繊維を取って糸をつくり、布をつくるところまですべて手仕事で、ものすごく手間がかかるんですよ。
その友人たちが東京の糸づくりの実演をした時に、会場から「その作業を何時間やったら一反の布になりますか?」という質問が出たことがあったんですね。
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長谷
それは気になります。
鞍田
そしたら「そんなこと、今まで考えたこともない」と答えたんです。僕はそれを聞いて「ああ、彼らにとって糸づくりは生きることとセットというか、それ自体なんだ」と気づきました。僕らは「今日何時間仕事した」とは言うけど、「今日は何時間生きた」とは言わないじゃないですか。
長谷
たしかにそうですね・・・・・・! 糸づくりの姿勢が、先ほど出てきた「ある」状態に近いなと感じました。
鞍田
まさにそうなんです。「時間をお金に換算すること」が効果的な場面もあると思いますが、それだけが人間として当たり前の在り方ではなくて。むしろ、時にはそういう価値観を突き放すことが、これからの世界で大事になってくるのではないかな、と感じています。
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こだわりが生むリズムで、踊るようにくらしを楽しもう
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鞍田さんのお話を伺って、物が大量生産され始めた100年前に「物質的な豊かさだけでなく、よりよい生活は何かを追求」することで多くの民衆の共感を集めた『民藝』が、情報にあふれている現代社会に再び注目されている理由が分かった気がしました。
これまではSNSでいたずらに自分を表現したり、他社の評価に一喜一憂したりと、日々の制約に縛られタイパ・コスパの世界に引き込まれることで足が止まり、自分らしいくらしを見失っていたことも、多々あったなと感じます。
「こだわり」は、そのような価値観に飲み込まれそうになるのを、一度引き止めてくれる存在だと感じました。固まってしまった思考を少しでもほぐしていくためには、まずは「直観」で世界を捉えて、些細なことでも自分の心が震えるものに出合うことを、大事にしていきたいです。
没頭して、他社どころか、自分のことさえも忘れてしまうーー夢中二慣れる「こだわり≒くらしのリズム」をたくさん持つことで、踊るように楽しく暮らせるようになるかもしれません。そんな「あり」方を目指して、これからもいろんなこだわりの種を見つけ、育てていきたいなと思います。
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photo by 川島彩水