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彼女に振られたので山暮らししようかと思う。#2
ヨッシャマンの失恋
2023年9月。
残暑などと生ぬるい事を言っていられない、うんざりするような暑い日だった。人々は疲れはて、それでいて血走った目をしていた。「この暑さはどうなんざんしょ~」などと口にしようものなら、取り囲まれて太陽光発電パネルにはりつけにされてしまいそうな危機感を私は感じていた。
そんな日に私は振られた。
「はたから見ている分には面白い人なんだけどね」と彼女は言った。
彼女の話を要約すると、どうやら私は
「金と将来性のなさ」で捨てられたらしい。
なるほど。
確かに私はいくらか変人の気があるとは思う。アリの世界で言えば、2割の働かないアリである。(あくまで比喩だ。仕事はちゃんとしていた)
彼女にいたっては、まごうことなき働きアリであり、思えば初めから違う道を歩いていたのだ。並んで歩いていたから、足元が見えなかった。
舗装された道路をヒールで歩く恋人の隣を、私はブッシュマンのように裸足で歩いていたのだ。平行して並ぶ未開発の土道を。
しかし、もっと違う振り方はできなかったものだろうか。
例えば、「あなたは素敵だけど、もっと好きな人ができてしまったの」みたいなことを言ってもらえたら、それなら仕方ないなぁという気にもなれただろうに。
とはいえ、よく研いだ日本刀で一刀両断してくれたのだからそこは感謝しなくてはならないだろう。錆び付いたノコギリで切りつけられたひには傷跡がひどく残る。
自分で言うのもなんだけど、私は女性に対してものすごく優しい。恋人の事も本当に大切にしてきたと思う。
娘にも、「自分の事を大切にしてくれる人と付き合うんだよ」などとしたり顔で言ったものである。
しかし、こうなってくると
結局、金かぁ……。
と切なくもなる。
が、経済力とはすなわち、狩猟時代でいえば獲物を取る能力である。生きる上で、女性が何よりも重視するのはしごくまっとうである。
社会不適合の2割のアリはどうすればいいのか。
答えは簡単である。2割の中から伴侶を探せばよいのだ。
8割のまっとうな人たちの中から見つけようとするから歪みが生まれるのである。
そんなわけで、山暮らしをしようかと思う。
うん、また上手く着地できなかった。
次回こそは。