はじめに
令和6年能登半島地震は珠洲市の教育環境に大きな転換をもたらしました。子育て世帯の市外避難・転出により、児童生徒数が全体で3割減少。この急激な変化を受け、学校の統廃合を含めた再編の議論が保護者を中心に広がっています。
本資料の前半では、この新たな課題に向き合うための一助として、過去10年間の市議会における学校統廃合に関する議論を振り返ります。2014年から2023年までの会議録から抜粋した質疑応答を通じ、少子化、財政問題、教育の質、地域との関わりなど、多角的な視点から議論の変遷をたどります。
さらに、後半では震災後の地区住民意見交換会の記録や復興計画策定委員会の配布資料、関連する報道記事からも情報を収集し、現在の状況と課題を明らかにしています。統廃合を支持する意見と慎重な意見、市長の立場、市の対応、専門家の見解など、多様な視点を提示しています。
この資料は、教育の質の確保、地域コミュニティの維持、財政面での効率性、災害時の安全確保など、複雑に絡み合う要素を考慮しながら、珠洲市の教育環境の今後のあり方を考える上での基礎資料となることを目指しています。震災前の議論を踏まえつつ、新たな現実に直面する珠洲市の教育環境のあり方。この喫緊の課題に関心を寄せる住民の皆様が、長期的視点で考えを深める際の一助となれば幸いです。
前半要約
この資料は、2014年から2023年までの珠洲市議会での学校統廃合に関する議論を時系列でまとめたものです。主な論点は以下の通りです:
人口減少と児童生徒数の減少
小規模校の課題
同級生が少ない、または全くいない状況
学校行事や部活動の維持が困難
教師の過重労働
統合推進派の主張
より多くの同級生がいる環境を望む保護者の声
切磋琢磨できる環境の必要性
財政面での効率化
市長(泉谷満寿裕氏)の基本姿勢
統合に慎重な理由
学校統合による人口減少加速の懸念
地域の誇りと愛着を持てる教育の重要性
新たな取り組み
財政状況と公共施設の管理
この資料は、長年にわたる珠洲市の学校統廃合をめぐる議論の変遷を示しており、人口減少が進む中で、教育環境の維持と地域との関係性のバランスを取ることの難しさが浮き彫りになっています。
平成26年第2回定例会(第2号)
本文 2014-07-01
36 : 1番(米田幸助君)
市長の主張に対する疑問:
人口減少の深刻さ:
現状の課題:
同級生がいない、または極めて少ない状況
学校行事や部活動の維持が困難
教師の過重労働
保護者の声:
より多くの同級生がいる環境を望む声
学校統合を求める声の増加
提案:
将来的な人口増加時の再分散の可能性
小中一貫教育と学校統合は別問題として考える必要性
三崎と緑丘校区での再検討
要望:
38 : 市長(泉谷満寿裕君)
基本的な考え方:
地域に誇りと愛着を持てる教育の重要性
将来的な珠洲市への帰還を促す教育環境の維持
現状維持の方針:
学校統廃合の現状:
今後の方針:
児童・生徒数の推移を継続的に観察
必要に応じて検討委員会を再設置
広く関係者の意見を聴取
平成26年第7回定例会(第2号)
本文 2014-12-09
62 : 1番(米田幸助君)
前回の市長の答弁内容:
児童・生徒数の推移を見守る
必要に応じて検討委員会を再設置
広く関係者の意見を聴取
現状認識:
出生数の減少が顕著(広報での空白増加)
推移を見守る時期は過ぎたという声
具体的な数字:
昨年4月〜11月の出生数:54名
今年度12月4日までの出生数:44名
年間出生数が60名を割り込む可能性
小学校6年生の現在の児童数:約120名
12年後には現在の半数になる予測
質問内容:
64 : 市長(泉谷満寿裕君)
学校統廃合の基本方針:
検討委員会設置の判断基準:
児童・生徒数の推移
各学校における教育内容
登下校の安全を含む学校環境
地域事情
その他の様々な要素
今後の方針:
上記の要素を総合的に勘案
検討委員会の設置について判断
平成27年第5回定例会(第2号)
本文 2015-09-08
45 : 3番(米田幸助君)
現状認識:
宝立小中学校、大谷小中学校の開始
新図書館の検討が進行中
将来の課題:
提案:
複合化のメリット:
学校施設の高機能化と多機能化
多世代交流の促進
効果的・効率的な施設整備
地域コミュニティの形成
国の方針との整合性:
公共施設の総合的把握と財政運営との連動
施設の更新、統合、長寿命化の推進
他自治体の事例:
47 : 市長(泉谷満寿裕君)
学校の今後のあり方に関する方針:
市長の基本的な考え:
地域に誇りと愛着を持てる教育の重要性
学校統合による人口減少加速の事例を懸念
小中一貫教育を通じて、現状維持を目指す
図書館に関する見解:
市民の文化度を測る指標として重要
市民全体の教養に関わる施設
定住促進にも寄与する
新図書館に関する方針:
平成27年第6回定例会(第2号)
本文 2015-12-08
48 : 3番(米田幸助君)
幼小中一貫教育について:
切磋琢磨できる教育環境の必要性:
人口減少対策としての教育環境の重要性
小中一貫教育やふるさと教育の評価と充実の必要性
学校統合と小中一貫教育・ふるさと教育の共存可能性
現状の課題:
提案:
学校統合のメリット:
国が推奨する1学年2〜3クラスの実現可能性
子どもたちの切磋琢磨できる環境の創出
要望:
保護者へのアンケート実施
学校統合に関する市民の声を聞く機会の創出
50 : 市長(泉谷満寿裕君)
学校統廃合に関する基本的な考え:
珠洲市の現状:
9つの小学校が旧自治体ごとに存在
各地域の特徴ある伝統文化、地域性を重視
地域活性化の取り組み:
学校統合に関する過去の経緯:
小規模校の教育環境:
今後の方針:
平成28年第1回定例会(第2号)
本文 2016-03-07
74 : 3番(米田幸助君)
地域発展の定義と学校維持の関係:
市長の言う「地域の発展」の具体的な定義を求める
旧町村ごとの学校維持と人口減少の関係性への疑問
珠洲市の歴史と現状:
合併の意義と現在の人口減少の現状
青年団活動の変化と地域意識の関係
学校統合に関する住民の意見:
統合を望む声の真意(子どもたちのためという視点)
市民憲章との関連
アンケート実施の再提案:
広聴活動としてのアンケートの意義
市民の声を聞く方法についての質問
PTA連合会の要請に関する疑問:
学校統合に関するPTA連合会の実際の立場
前回の答弁内容との矛盾点
76 : 市長(泉谷満寿裕君)
学校統廃合と地域発展の考え方:
アンケート実施に関する立場:
PTA連合会の要請に関する説明:
要望活動の経緯と内容:
要望の結果:
謝罪と評価:
PTA連合会関係者への配慮が不足したことへの謝罪
要望実現に対する安堵感
平成28年第2回定例会(第2号)
本文 2016-06-21
25 : 11番(赤坂敏昭君)
通学手段の現状:
スクールバスの増加
マイカー送迎の増加
その他の手段(徒歩、自転車、路線バス等)
質問事項:
通学の安全性に関する懸念:
提案と要望:
a. 路線バス通学における定期補助の規定見直し:
小学校:3km以上→距離の緩和
中学校:6km以上→距離の緩和
b. 路線バスの活用促進:
期待される効果:
保護者(特に高齢者)の送迎負担軽減
小学生低学年の通学手段確保
中学生の路線バス利用増加
具体的な事例:
31 : 教育委員会事務局長(鍛治鉄雄君)
通学手段の現状(全児童生徒数744名):
徒歩:342名
スクールバス:66名
路線バス:16名
自転車:269名
マイカー送迎:51名
現行の通学費補助基準:
補助対象者の見直しについて:
バス路線・ダイヤの見直しについて:
珠洲市公共交通活性化協議会で議論中
児童生徒の通学にも配慮
協議会の内容を踏まえて教育委員会で対応予定
平成30年第3回定例会(第2号)
本文 2018-09-11
72 : 3番(米田幸助君)
学校冷房設置に関する予算について:
調査・設計費用として2,300万円が計上
この金額の妥当性への疑問
学校統合に関する意見:
学校統合に関する懸念:
教育環境に関する提案:
子どもたちにとってベストな教育環境を整備すべき
珠洲市全体で子どもたちを育てる姿勢が必要
今後の方針に関する要望:
市民の声を丁寧に聞いてビジョンを作成すべき
その上で冷房設置を検討すべき
具体的な質問:
なぜ調査設計費用だけで2,300万円もかかるのか
この金額で実際に冷房を設置できるのではないか
74 : 市長(泉谷満寿裕君)
エアコン設置と学校統廃合の関係:
エアコン設置の方針:
設置費用の見込み:
1教室当たり約200万円
受変電設備の整備に1校当たり約2,000万円
今後の進め方:
実施設計後、できるだけ早期に整備を目指す
国の交付金に関する動向を注視
財源確保を図りながら進める
平成30年第4回定例会(第2号)
本文 2018-12-11
66 : 3番(米田幸助君)
エアコン設置に関する予算:
質問事項:
a. 今年の猛暑による問題や対処法
b. 過去の猛暑による問題
c. 冷房設置の決定理由
d. 臨時的合同授業の検討可能性
現状の課題:
出生数の減少(年間約50人、今年は36人)
9つの小学校への分散
学校運営の課題:
提案:
前回の回答への反論:
学校統合と冷房設置は切り離して考えられない
統合の有無で数億円の差が生じる
68 : 教育委員会事務局長(山下浩子君)
今年の猛暑対策:
扇風機の使用
水筒持参と小まめな水分補給の指示
グリーンカーテンの設置
エアコン設置済みの特別教室での授業実施
エアコン設置の必要性:
児童生徒の安全と健康確保
災害時の避難所としての機能
エアコン設置と学校統廃合の関係:
今後の計画:
財源確保:
国の補正予算による臨時特例交付金の活用
有利な財源確保に努める
整備方針:
令和2年第1回定例会(第2号)
本文 2020-03-04
93 : 5番(濱田隆伸君)
学校数と生徒数の推移:
平成元年:小学校15校(1,875人)、中学校7校(1,180人)、高校2校(1,372人)
現在:小学校7校+宝立小中+大谷小中(407人)、中学校2校+宝立小中+大谷小中(229人)
現状の課題:
出生数の現状:
昨年の出生数54人、近年は年間50人程度
今後の増加は困難と予想
学校維持費用:
保護者・生徒の希望:
提案:
学校統合の必要性
市内無償バスの活用
自由選択制の導入検討
宝立小中、大谷小中は残し、他の7つの小学校を統合
95 : 市長(泉谷満寿裕君)
基本的な考え方:
教育の目標:
現状維持の方針:
各学校の特色ある教育活動を通じた地域づくりを重視
できるだけ現状を維持する意向
学校統合に関して:
117 : 3番(番匠雅典君)
大谷保育所の休止について:
質問事項:
大谷地区の今後の児童数推移予測
他保育所に通う児童の大谷小中学校への進学可能性
懸念事項:
保育所休止による大谷小中学校の児童数減少
友達の少ない環境への子どもたちの適応
提案:
幼稚園児から中学生までの一貫教育の実施
別府市立東山幼、小・中学校の事例を参考に
提案の利点:
一貫した教育環境の提供
PTA活動の統合による効果的な取り組み
子どもたちの人格形成への貢献
要望:
119 : 市長(泉谷満寿裕君)
大谷地区の未就学児童数の現状:
幼、小中学校の導入に対する見解:
大谷保育所の休所決定:
令和2年度の入所申し込みが4名
適正な保育環境の確保が困難と判断
今後の方針:
令和2年第7回定例会(第2号)
本文 2020-12-08
7 : 4番(濱野隆三君)
高校生徒数の推移と学校再編の歴史
昭和40年から現在までの生徒数の大幅な減少
珠洲市と能登町における高校の統廃合の経緯
現状の課題
飯田高校の定員割れ(特に1年生)
県の再編整備基本指針による統合検討の可能性
飯高応援団への支援
市の支援内容、金額、今後の支援策
ふるさと納税制度の活用可能性
生徒の全国募集
市の対応方針
行政組織内の担当部署設置
学校、PTA、応援団、地元団体との連携
全国募集体制の整備と運営支援
9 : 市長(泉谷満寿裕君)
飯田高校の現状:
生徒募集策:
奥能登エリア外や石川県外からの生徒募集が重要
石川県教育委員会の方針や動向を注視
受入れ体制整備:
飯高応援団への支援:
ふるさと納税の活用:
今後の支援策:
地方創生推進交付金事業への申請準備
市外、県外生徒の住居・食事確保の支援
ウエイトリフティング関連:
専用練習場や設備の整備済み
市外、県外からの留学生募集を検討
行政の体制:
今後の方針:
令和3年第7回定例会(第1号)
本文 2021-11-30
8 : 市長(泉谷満寿裕君)
財政状況:
課題:
大型建設事業による公債費の増加
施設・設備の老朽化に伴う経費増加
義務的経費の増加傾向
新型コロナ対策の継続
市税・地方交付税の減収見込み
対応策:
各分野・施設の必要性、効果、運営コストの検証
施設の統廃合や跡地利用の検討
令和4年度予算編成方針:
まちづくり総合指針や総合戦略を踏まえた持続可能な珠洲市の実現
継続的事業(社会資本整備、人材育成、移住・定住促進)の継続
デジタルトランスフォーメーションによる利便性向上など新施策の検討
全体的な方針:
厳しい財政状況を踏まえた慎重な予算編成
「デジタル田園都市」構想への対応
令和4年第4回定例会(第2号)
本文 2022-06-21
5 : 市長(泉谷満寿裕君)
市債残高の推移:
2006年度末:335億円
2021年度末:244億円余り
約90億円の削減を達成
今後の財政運営方針:
公共施設の更新・統廃合・維持管理:
地域振興事業(奥能登国際芸術祭など):
目標:
取り組み:
令和4年第5回定例会(第2号)
本文 2022-09-13
58 : 7番(中板秀一郎君)
遊休施設の問題:
人口減少に伴い、特に過疎地域で顕著
珠洲市内でもかなりの件数が存在
総務省の要請(2014年4月):
珠洲市の対応:
質問事項:
現在利用のない公共建築物の数と名称
計画の見直しを内部的に年度ごとに行っているか
統合保育所開設に伴う既存5か所の保育所の活用法検討状況
課題:
60 : 市長(泉谷満寿裕君)
統廃合により用途廃止された施設の現状:
公共施設等総合管理計画:
保育所統合に伴う既存保育所の利活用計画:
飯田保育所の具体的計画:
令和4年第7回定例会(第1号)
本文 2022-11-29
8 : 市長(泉谷満寿裕君)
財政状況:
課題:
大型建設事業による公債費の増加
施設・設備の老朽化に伴う経費増加
義務的経費の増加傾向
新型コロナ対策の継続
市税・地方交付税の減収見込み
令和5年度予算編成方針:
各分野・施設の必要性、効果、運営コストの検証
施設の統廃合や跡地利用の検討
まちづくり総合指針や総合戦略を踏まえた持続可能な珠洲市の実現
継続的事業(社会資本整備、人材育成、移住・定住促進)の継続
デジタルトランスフォーメーションによる利便性向上など新施策の検討
全体的な方針:
厳しい財政状況を踏まえた慎重な予算編成
新規起債への慎重な対応
令和4年第7回定例会(第2号)
本文 2022-12-06
94 : 5番(濱田隆伸君)
96 : 市長(泉谷満寿裕君)
小学校統合に関する市長の考え:
地域に誇りと愛着を持てる教育を重視
できる限り現状維持を目指す
学校運営の現状:
新たな取り組み:
今後の方針:
様々な状況を勘案
望ましい教育環境の在り方を総合的に検討
令和5年第2回定例会(第1号)
本文 2023-02-28
8 : 市長(泉谷満寿裕君)
珠洲市議会議事録の抜粋は以上です。
後半は、地区住民意見交換会の記録や復興計画策定委員会の配布資料、報道記事から、学校再編についての記述を抜粋したものです。
後半要約
背景と現状:
珠洲市は1954年に3町6村が合併してできた市で、現在も旧町村ごとに9つの小学校(うち2校は義務教育学校)が存在している。
少子化が進行しており、年間の出生数が50人を下回っている。
2024年1月の能登半島地震後、小中学生の数が約2〜3割減少した。
統廃合に関する主な意見:
統廃合を支持する意見:
少人数過ぎると学習活動や部活動に制限がある。
友人関係の構築が難しい。
教育の質や競争心の維持が困難。
経済的効率性の向上。
統廃合に慎重な意見:
市長(泉谷満寿裕氏)の立場:
市の対応と取り組み:
2023年度から「小規模特認校制度」を導入し、大谷小中学校を指定校とした。
仮設グラウンドの整備や、学校施設の再建を進めている。
復興計画策定委員会で、学校施設の集約や子育て環境の充実を検討項目としている。
専門家の見解:
和光大学の山本由美教授は、能登地域でも東日本大震災後の東北地方同様、廃校が増える可能性を指摘。
一方で、安全面や地域コミュニティの観点から拙速な統廃合に警鐘を鳴らしている。
統廃合を検討する際は、子どもや保護者、住民への影響を考慮し、徹底した合意形成が必要だと強調。
今後の課題:
児童生徒数の減少傾向への対応。
地域コミュニティの維持と教育の質の確保のバランス。
災害時の安全確保と学校の役割の再検討。
住民、特に子育て世帯の意見を十分に聴取し、反映させること。
長期的な視点での教育環境の整備と、地域の持続可能性の両立。
この問題は、教育の質、地域社会の維持、財政面、安全性など多くの要素が絡み合う複雑な課題であり、今後も慎重な議論と検討が必要とされています。
地区住民意見交換会
第1回地区住民意見交換会の議事録には、学校の統廃合に関する意見とそれに対する市長の回答が複数あり。
復興計画策定委員会
第2回配布資料「資料1 意見と対応」に学校の統廃合についての意見と市の対応方針あり。
第2回配布資料「資料2 地区住民意見交換会」に学校の統廃合について意見と市の回答あり。
第2回配布資料「資料3 ホームページによる意見募集の結果」に、学校の統廃合に関する意見あり。
その他、珠洲市の公表資料
『珠洲市まちづくり総合指針』・『珠洲市まち・ひと・しごと創生総合戦略』・『珠洲市人口ビジョン』の改訂
珠洲市総合教育会議
『珠洲市公共施設等総合管理計画』の改訂
学校の再編に言及している報道
集約化前提の復興あり得ない=泉谷満寿裕・石川県珠洲市長
「人はどんどん離れ…」地震が統廃合に拍車 奥能登では小中学生が2割減に
学校の統廃合問題に詳しい山本由美氏の論文
【論文】学校統廃合の新しい段階と対抗軸の可能性
◎要約
新しい統廃合の傾向:
統廃合政策の変遷:
2000年頃から廃校数が高止まり、特に東京都で顕著
新自由主義的教育改革(学校選択制、学力テスト、学校評価の導入など)が背景にある
2014年からの「地方創生」政策により統廃合が加速
公共施設等総合管理計画の影響:
PFI(民間資金等活用事業)の問題点:
企業の利潤追求と公共性の実現が対立
教育の住民自治の実現が困難になる
行政と事業者の癒着の懸念
企業破綻・撤退時のリスク
経済的抑制効果への疑問
複合施設化の課題:
子どもの安全やセキュリティ上の問題
情報保護や教育条件の悪化
対抗軸の可能性:
地域コミュニティのインフラを守る市民運動の台頭
住民投票条例制定運動などの民主的プロセスの要求
「非自民」リベラル系首長の当選による政策変更
著者は、学校統廃合や新たな施設開設に際して、子どもの意見表明や市民の声を反映するルートの保障が必要だと主張しています。また、正確な情報提供により保護者を巻き込んだ学校を守る運動が、新自由主義的な自治体改革への対抗軸となる可能性を示唆しています。
【論文】学校統廃合の新局面と教育論を無視したその問題性
◎要約
学校統廃合の新たな局面:
統廃合の背景:
コロナ禍の影響:
教育論からの乖離:
統廃合推進のための制度利用:
問題点と課題:
対応策:
著者は、学校統廃合や小中一貫校化が教育論を無視して進められていることを批判し、住民自治の基盤である学校を守るために、住民の学習と運動が重要であると主張しています。
【論文】学校統廃合で広域化が進む学区域とマンモス校―学校再編の実態と課題―
◎要約
学校統廃合の急増:
統廃合の実態:
統廃合を促進する要因:
財政誘導(地方債の適用、国庫負担など)
「義務教育学校」への国庫負担の拡大
合併自治体の財政難
広域化する学区域:
統廃合の正当化に使われる「教育的」理由:
自治体独自の「適正規模」基準の設定
新学習指導要領の「新しい学び」を根拠とする説明
複式学級への偏見的な批判
巨大規模校の出現:
つくば市や流山市などでの大規模学校の設立
教育の中身よりも「収容」を優先した学校建設
コミュニティ形成の欠如
問題点と課題:
地域コミュニティの解体と新自由主義的再編
教育的効果の検証不足
持続可能なまちづくりビジョンの欠如
著者は、コスト削減や新自由主義的な地域再編のために進められる学校統廃合の問題点を指摘し、特に広域化する学区域とマンモス校の出現に懸念を示しています。また、地域コミュニティが共同して対抗していくことの重要性を強調しています。
【論文】「地方創生」のもとの学校統廃合を検証する
◎要約
学校統廃合の背景と経緯:
小中一貫校と「義務教育学校」の導入:
学校統廃合の基準と「手引」:
「地方創生」と公共施設適正配置計画:
小中一貫校の実態:
過疎地の小規模校や被災地での導入
一般校との差異化を図る傾向
施設分離型の「小中一貫型制度」の導入
アメリカの事例との比較:
学力テスト結果による学校評価と統廃合
公設民営化とバウチャー制度の導入
大阪府での類似制度の導入と影響
統廃合に対する対抗軸:
著者は、小中一貫校や「義務教育学校」の教育的効果が十分に検証されていないにもかかわらず、統廃合の手段として利用されている現状を批判しています。また、新自由主義的教育改革のデメリットを検証し、保護者や地域住民との共同による対抗軸の形成が重要だと主張しています。