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若者たちが嬉々として産地を訪問する時代

近頃、生産工場を公開するオープンファクトリーの取組が全国各地に拡がっています。先日打ち合わせをしていて、オープンファクトリーなんてものがそんなにたくさんあるのですか!?という声を聴いたのでそういう方もまだまだ多いのでしょうか。

一番最初に始めたのはおそらく新潟の「工場の祭典」でしょう。その後に続いて福井の「RENEW」があり、ハタ印が立ち上げた山梨のオープンファクトリーなどがあります。繊維産業の中で言えば、山梨はかなり早いほうだったと思います。2017年から始まっているので。

こうした取り組みは街の中にサポーターを生み出し、工場にファンを生み出し、地域に楽しさを与えてきました。最近は自分の周りにも産地や工場が好きでいろんな土地を巡る強者が増えてきました。(嬉々として繊維工場を訪問する人たちを、産地ウォーカーとかテキスタイルオタクと勝手に括っています)

近畿の経済産業局では、万博に向けてこのオープンファクトリーを増やそうとしているのだとか。

開催する地域社会(住民)にとっては、自らのまちの魅力や奥行きを再認識する契機となり、企業にとっては、地域社会と新しい接点を持つことで、 地域の企業としての意識(ローカル・カンパニー・プライド)の芽生えやイノベーティブな着想を得る機会につながっています。

近畿経済産業局:地域一体型オープンファクトリー

良いことがたくさん書かれていますが、工場を開くというのは(そして、それをきちんと軌道に載せるのは)かんたんなことではありません。

そもそも工場は本来、観光場所ではないから大人数を受け入れにくい場所です。中心地からは外れた辺境にあることのほうが多い上、特に日本は小規模の工場が多く、団体を受け入れにくいです。大人数を受け入れられる工場は、就業規則がしっかりしているのでわざわざ開催するとそれはそれで大変です。

見学中は工場を止めるまで行かずとも、複数人の手を止めることになるし、作業の流れを妨げることにもなります。相応の負担が伴っています。

負担を厭わない、受け入れ側の心意気というものが必要になってきますし、企画者もかなりの労力を割くことになります。誰かに任せたら全部きれいにまとまるってものでもなく、しかも、きれいにまとめたところで、最初からたくさんの人が来てくれるわけでもありません。

どの土地もそういう現実に悩みながらあがき続けて、今があるはずで、そうした取組が評価されて、前向きに捉えてもらえるようになったことは本当にすばらしいことです。自分がメーカーに勤めていたころはこういった動きはまったく想像できませんでした。

海外との価格競争や職人の高齢化が製造業の課題だった時代は終わり、熱意のある若者が密に関わって高付加価値の製品や体験が次々と生み出される時代になりました。規模の縮小と時代の変遷の分岐点を超える瞬間を目の当たりにできたのでしょう。今まさに、新しい時代の潮流が生まれている瞬間に立ち会っているのを感じています。

8月29日に糸編・宮浦くんの呼びかけにより、全国7地域の繊維産地オープンファクトリーキックオフイベントが新宿の文化学園で行われます。彼いわく、全国的に繊維産地が立ち上がり工場の門戸が開いたことにより、世界中の産地好きが各産地とつながっていける時代。そんな新しい時代の入り口で、各地でオープンファクトリーの旗を振るキーパーソン達に集まってもらう夢のようなキックオフイベントです。

前向きな試行錯誤を厭わない熱量と継続する信念で、世界はこんな風に姿を変えるのだ。ぜひその最前線に立ち会いに来てください。

繊維産地オープンファクトリーキックオフイベント
日程:2024年 8月29日 17:00-19:00 (16:30開場)
会場:文化学園 C091(C館9階)
〒151-8521 東京都渋谷区代々木3丁目22-1
入場料:無料
参加をご希望の方は下記のフォームへご入力ください

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSezUIKlKEj1H03MI7AhWHbXHmaUUpLeNkOVF97iOAwcwCCRgQ/viewform

産地の学校による産地遠征プログラムもあります。ひとりではなく、みんなでまわりたい!という方はこちらもおすすめです。