佐藤正午『小説家の四季』2020年 秋
傾倒している小説家・佐藤正午
直木賞を受賞した『月の満ち欠け』で佐藤正午の作品に出会い、その巧妙な筆致に心を奪われました。それから、彼の作品を全作網羅的に読み進めています。(ハマると、何でも「全部知りたい!読ませろ!」と突っ走ってしまう読書家なので…。オタク気質というやつです。)スタンプラリーを押し進めるように、スターウォーズシリーズを全巻買い集めていくように正午作品を読んでいくと、あることに気が付きました。
佐藤正午は「随筆の名手なのだ」ということに。『ありのすさび』は今まで読んできた小説家のエッセイのなかで最も好きです。
シニカルなまなざし、冗長な言い回し。彼の随筆文は、くせになる。何度も読みたくなる。
そしてなんと嬉しいことに!彼は現在、Web 岩波で随筆の連載を持っている…!!
それが『小説家の四季』。3か月ごとに新しい随筆が読めます。これで佐藤正午の生存確認をしている節は否めません。随筆巧者っぷりをもれなく味わえるので、ぜひ多くの方に読んでいただきたい。(岩波の回し者みたいになってしまう)
10月10日掲載の『小説家の四季』2020年 秋
今月掲載の『2020年秋』を読み、(彼が佐世保で生きていることに安堵しつつも)感じたことを、ちょっとnoteします。
コロナ禍で、自称高齢者の彼(65歳)は人に会うことがめっきりなくなり、話の種が無い。これまででは、どんな季節でも、人に会えば何かしら書く話題にできた。しょうがない、部屋の中に目を向け、話題を探すほかない、といったふうに続く。何気なく置かれたコーヒーカップとそれにまつわる記憶。一つのモチーフだけであんなにも語り尽くせる、書き尽くせることに何百回目かの明るいため息が出た。
読後、「胃にやさしいミルクコーヒーをすすろう、ベランダで」という気持ちになった。
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