アニメ私塾卒業論文

序文

 こんばんは。15年度にアニメ私塾に入学し、この春(一旦)卒業しOBとなった由水(よしみず)と申します。この度、三年間の総括として卒業論文を書かせて頂きました。
 題して「40代のオッサンがアニメ私塾で三年間勉強した結果www」…在校生や入学志望の皆さんの参考になれば幸いです。

アニメ私塾と私

 私は子供のころから図画/工作が好きで、ガンダム世代/ファミコン世代のご多分に漏れず、アニメにもゲームにもどっぷり浸ってきました。しかし、結局美大や専門学校には進まず、せいぜい美術部で燻っていたのです。

 が、転機は突然訪れます。威勢よく「いくぜ100万台!」とぶち上げて、初代プレイステーションが登場。その波に乗り、趣味で作っていた3DCGを持ち込んで、ゲーム会社にまぐれで入社。あれよあれよという間に、気づけばCGプロダクションを経営していました。
 その間光のスピードで月日は流れ、20年が経過。いつしか仕事の中心はゲームから、次第にアニメに移っていったのです。そしてある日、自分の中で燻っていたアニメ魂が再び燃え上がるのです。

 作画好きの端くれとして、中途半端な「アニメ風CG」は作りたくない。そのためには作画の技術と経験をしっかり手に入れなければ。しかし、この歳で専門学校に入学するのも、アニメ会社に就職するのも無理筋。途方に暮れていたその時、アニメ私塾と出会ったのです。

 「プロのアニメ技術を多くの人に!!」これこそ私が求めていたものでした。

課題山積

 なんとか滑り込んだ一年目(現プロ養成コース)。昔取った杵柄で、多少覚えはあったものの、模写、ポーズ制作、空間表現へと進むにつれ、どんどん描けなくなっていきます。そしてはたと気付きました。「…待てよ、これは小テストだな…」と。
 課題の練習をして、その中から多少マシに描けたものを送ってさえいれば、上手くなる…そんな甘い話は無いわけです。これは「どれくらい描けてないかを否が応でも公衆の面前で突きつけられる小テスト」だったのです!「計ったな、室井さん!」

 それからというもの、千体デッサン・電車クロッキーなど必死でデッサン力をあげる日々。特に二年目(現アニメーションコース)ではデッサン力が露骨に結果に現れます。
 同時に、画力の中でデッサン力はレーダーチャートの一角でしかないことも見えてきます。更にやるべきことが積み増していくのです。
 結局描いた数でしか画力は上がらない。これはしかし逆から見れば、描いた分は(たとえ何歳であろうと)確実に上手くなるということ。そう考えると、絵を描く/動かす楽しさを味わう心の余裕が生まれてきました。

 そしてあっという間に二年目も大詰め、1カット制作が始まります。映像制作者の端くれとして、詰め込みすぎが危険なことは重々承知していますから、当初比較的簡単な内容を考えていました。しかし、内容の弱さを突っ込まれ、またレイアウト添削で盛り上がるうち、いつの間にか30秒超、動画枚数250枚以上という大作となっていました。おかげで〆切前は本業さながら、会社に泊まり込んでの仕上げ作業。CGだろうが作画だろうが、結局最後は意地の世界です。

 結果、お陰様で二段(プロ原画マン相当)の認定を頂戴し、ずうずうしくも、「ここまで来たらプロの現場で描いてみたい」という野望がムクリと芽生えてくるのでした。
 そして三年目の創作相談コースで、市販の原画集やコンテをつかった動画・原画の練習を経て、ついに二原、そして念願の原画のお仕事を曲がりなりにも承りました。子供の頃の夢が一つ叶った瞬間です。

私塾の人々

 さて、入塾してみてまず驚いたのは、同世代の塾生さんが他にもいたこと、また一回り近く違う室井さんとやたら話が合う事、そして二回り近く違う塾生さん達が分け隔てなく接してくれた事です。これには今も大変感謝しております。また、合宿やオフ会、忘年会等を通じて普段会う事のない多種多様な方々とお会いでき、それだけでも大きな財産となりました。

 現に今、私たちの会社のメンバーは半数以上がアニメ私塾卒業生です。皆CGは未経験でしたが、社内の勉強会で少しずつCGアニメーターとして成長してくれています。また、この春からは私塾のつながりで知り合った作画監督さんともご一緒することになりました。これは作画を学ばなければ決して得られなかった縁であり、この場を提供してくれた室井さんに改めて感謝します。

最後に

 CG畑の私が何故、三年もかけて作画を勉強し、44歳にもなって原画にチャレンジしたのかといえば、もう作画だとか、CGだとかで「内輪もめ」をする時代ではないと思ったからです。ちょうど『SHIROBAKO』6話のように。

 PIXAR/ディズニーでは、とっくの昔にCGと作画が協調して映画を製作しています。日本のアニメも、作画とCGが協調して次代のアニメを制作する時代を迎えつつあるのだと思います。ゲームがスーファミからプレステに変化した時代のように、今日本のアニメも変化の只中にあります。変化の時代にはチャンスが生まれます。そしてチャンスをつかむのはいつの時代も、強者ではなく適者です。適者であるために、作画兼CGアニメーターとして、明日からもチャレンジを楽しみたいと思います。

 室井さん、私塾の皆さん、三年間本当にありがとうございました

(了)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?