【ショートショート】『髙橋』
「なぁ、髙橋。
念力って存在すると思うか?俺はないと思う。
例えば、ここにトランプがワンセット、つまり五十二枚あるだろ?
このトランプの表を見ないで、赤か黒か当てれるか。
到底無理だ。
試しにやってみよう。
左から赤、黒、赤、赤、黒。
どれひっくり返してみよう。
ほら全部外れてる。
やっぱり念力なんて存在しないんだよ。
何だよ、髙橋。つまらなそうな顔するなって。
じゃあ小話を一つ。
まだ飛行機が庶民には特別だった頃の話だ。
主な乗客はビジネスマンで、とある日の飛行機に上司と部下の2人が乗り込んだ。
「飛行機初めてかい?」
「ええ。初めてです。」
部下がこう答えると上司は鞄を漁ってこう言う。
「ならば、これを渡そう。耳にいいものさ。」
飴だ。
飛行機が離陸するとその急激な気圧の変化から、耳抜きをする必要がある。
飴を舐めれば、唾液を飲み込むときに耳抜きができるって寸法だ。
「ええ、ありがとうございます。」
と部下は受け取った飴を耳に押し込んだ、、
おい髙橋。起きてるか?じゃあこれはどうだ?
「リボン」
「リットン調査団」
「隣人」
「リコピン」
「リンチ」
「リアス式海岸」
「リーン」はい。
しりとりを最速で終わらせる言葉集、、、っておい!ちょ!どこいくんだよ!わかった話変えるから!
友達の女の子がしてきた自慢話。
この前の土砂降りの雨の日に、傘を持ってなかったらしい。
トボトボ歩いて帰宅してると、後ろからすらっとした大学生くらいのイケメンが現れた。
「これ良かったら使ってください。」
なんて言って、使っていた傘を差し出してくれたらしい。
受け取るのを躊躇していると
「家までまだかかりますよね。僕の家すぐそこなので。」
と言って強引に傘を渡されて、そのまま彼は居なくなった、、、、。
中身もできた水も滴るいい男に出会えたって、俺に自慢してきたんだよ。
おい、髙橋聞いてるか?
さっきから俺が話してばっかりじゃねぇかよ。
しりとりでもするか?
俺からな、、、「リンチ」、、、ってそんな怯えるなよ。
しゃべれないのか?まぁしゃべれねぇよなぁ。
連れてきてからずっとそうだもんな。
はぁ。」
ニャー
「何だよ。しゃべれんじゃねかよ。髙橋。」
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