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【プロンプトエンジニアリング】ケーススタディ生成・バイアス抽出のための包括的プロンプト
はじめに
以下に提示するのは、「バイアス抽出」→「軸づくり」→「マトリックス展開」→「評価・検証」の流れでケーススタディを抽出するための包括的プロンプト例です。
チャットでLLMに投げかける際、このプロンプトをもとにやり取りすると、盲点を突いた豊富なアイデアを得やすくなります。
これらのAIが出してくれるアイデアは、人間が議論する際の叩き台として有用ではないかと考えています。
プロンプト
【目的】
特定のテーマや事業領域において、バイアスをあえてあぶり出し、新しい観点から施策やアイデアを考えるケーススタディ(事例集)を作りたい。
以下のステップに沿って、具体的な内容を提案してください。
【テーマ】
{湯河原の温泉街の再生}
1. **ケース設定(状況の明確化)**
- まず、扱うテーマ(例:地域振興、EC事業、新商品開発など)や抱えている課題・背景を簡潔にまとめてください。
- そのテーマに関連する「一般的な常識」や「前提条件」が何かあれば挙げてください(例:〇〇はこうあるべき、△△は当たり前 など)。
2. **バイアス抽出(盲点・思い込みを洗い出す)**
- 上記の常識や前提条件が、実はどんなバイアスや思い込みに基づいているのかをリストアップしてください。
- 特に「本当にそれが正解なの?」と疑問を投げかける視点を意識して、面白い切り口で掘り下げてください。
- 可能であれば、人間が見落としがちな盲点を突くような問い(例:不便=悪なのか? 価格は安いほうがいいのか? など)を投げかけてください。
3. **軸づくり(両極端なパラメータの設定)**
- 抽出したバイアスを、わかりやすく「○○ <--> △△」の両極端な軸として整理してください(例:伝統デザイン <--> モダンデザイン、国内市場 <--> 海外市場 など)。
- いくつかの軸を用意し、ズラしたり逆手に取ったりする余地を作ってください。
4. **マトリックス展開&事例提案**
- 上記の軸から2つを選び、4象限に分けてアイデアや事例を提案してください。
- 「少しズラす」案と、「真逆にぶっ飛ばす」案の両方を示し、それぞれのメリット・デメリット、実施上の注意点を説明してください。
- 可能であれば、必要な予算やリソース、リスク管理など具体的な実行ステップも付け加えてください。
5. **評価・検証**
- 最後に、提示したアイデアや事例を評価する観点(市場規模、コスト、リスク、長期的効果など)を示し、「どれから手を付けるべきか」「優先度が高いのはどれか」を分析してください。
- 取り組むにあたって“専門家信仰”や“理想論”に流されるリスクがないか、あるいは“本音の問題(資金不足・人材不足など)”を直視したうえで検討できそうか、なども検証してください。
【期待するアウトプット】
- 上記ステップに沿った**ケーススタディのシナリオ**(具体的な状況設定やバイアス一覧、マトリックス分析など)。
- 各ステップでの**思考プロセス**(どんなバイアスがあって、それをどう取り除くか/どんなアイデアが出るか/どんな検証を行うか)を、箇条書きや見出しを使って整理した形。
【注意点】
- 必ずしも無難な提案だけでなく、斬新すぎる、あるいは実行が難しい発想でもかまいません。盲点を突くような刺激的なアイデアも期待しています。
- 必要に応じて「専門家なしで考えたら?」「“不便”や“欠点”を武器にできないか?」など、逆説的な視点も積極的に取り入れてください。
- 出来上がったケーススタディは、バイアスを自覚しつつ、次のステップ(実行計画や意思決定)につなげられるようにまとめてください。
これらの要素を踏まえたうえで、私たちが見落としているバイアスに気付かせてくれるようなケーススタディを提案し、アイデアを深掘りしてください。
使い方のヒント
テーマを変えるだけで応用可能
地域おこし、商品開発、サービス設計、観光業、IT事業など、どんな分野でもこのステップでアイデアを掘り起こせます。
“バイアス抽出”を丁寧に
特にステップ2(バイアス抽出)を手厚くすると、より多彩な盲点を可視化しやすくなります。
部分的なやり取りもOK
必ず5ステップ全部を使う必要はなく、「まずバイアス抽出だけ」「まず軸づくりだけ」など段階を区切ってやり取りしても効果的です。
プロンプト適用事例①湯河原の温泉街の再生
以下は、「湯河原の温泉街の再生」をテーマに、バイアスをあえてあぶり出し、新しい視点を発見するためのケーススタディです。各ステップでの思考プロセスやアイデアの深掘りを意図しています。
1. ケース設定(状況の明確化)
1-1. テーマ・課題・背景の概要
テーマ: 湯河原の温泉街の再生
課題・背景:
温泉街の宿泊客・観光客が減少し、地域経済が縮小している。
若い層・インバウンド客(外国人旅行者)へのアピールが十分にできていない。
温泉街としての歴史的価値やブランドはあるが、他の有名観光地との競合が激しい。
地域住民にとっても、温泉街が日常の「にぎわいの場」となっていない。
1-2. 一般的な常識・前提条件
「温泉街は静かで風情ある場所であるべき」
「温泉旅館は高齢者・ファミリー層の利用がメイン」
「施設やサービスは“快適”・“便利”である方が良い」
「温泉街といえば“和”のイメージを前面に打ち出すべき」
「地元に人を呼び込み、宿泊してもらうことが地域振興の鍵」
2. バイアス抽出(盲点・思い込みを洗い出す)
2-1. リストアップされた常識・前提条件から導かれるバイアス
静かであるべき
「静かな環境こそが温泉街の最大の価値」
→ 実際は“にぎわい”を求める層や、ちょっとした雑多感が面白いと感じる旅行者もいるかもしれない。静寂=価値という考えは過度なバイアスになりうる。
高齢者・ファミリー層がメイン
「温泉は年配層や家族旅行向け」と決めつけている
→ 若者や外国人向けの新しい体験型コンテンツを開発する余地があるのに、その可能性を見落としている可能性。
快適・便利であるほど良い
「不便さ=欠点」という思い込み
→ “不便さ”や“素朴さ”にこそ観光客にとっての魅力があり得る。不便をあえて体験する「非日常感」を求めるニーズもある。
“和”のイメージにこだわるべき
「日本らしい旅館や和風のしつらえが温泉街のアイデンティティ」
→ 現代的デザインや異文化との融合を取り入れることで新鮮味が出るかもしれない。“和”のイメージに囚われすぎると新規顧客を取り込みにくい可能性。
地元に宿泊してもらってこそ地域振興
「外から人を呼び込み、宿泊・消費してもらうのがベスト」
→ 宿泊以外の形での経済活性化(たとえば日帰り客の滞在消費、オンラインでのブランド発信など)もありうる。
2-2. 疑問を投げかける問い
「静かな空間だけが魅力なのか?」
「“不便”を売りにしてはいけないのか?」
「若者が温泉に興味を持たないという思い込みは本当か?」
「必ずしも宿泊してもらわなくてはダメなのか?」
「伝統的な旅館と洋風・異国風の要素をミックスしてはいけないのか?」
3. 軸づくり(両極端なパラメータの設定)
上記で見つかったバイアスを、両極端の軸として整理してみます。
静寂 ↔ にぎやか
従来の「静かな温泉街」イメージと、フェスやイベントで盛り上がる「にぎわい」を対比。
快適・便利 ↔ 不便・素朴
最新設備やスムーズなサービスを追求するか、あえて不便さや素朴な風情を残すか。
和の伝統 ↔ モダン・異文化融合
伝統的な“和”スタイルを突き詰めるか、革新的なデザインや海外のエッセンスを取り入れるか。
宿泊重視 ↔ 非宿泊型(体験・日帰り)重視
従来の宿泊型ビジネスを優先するか、滞在体験やデイユース、オンライン・リモート事業などへ展開するか。
4. マトリックス展開&事例提案
ここでは例として、以下の2軸を選んで4象限に分けます。
軸A: 「和の伝統 ↔ モダン・異文化融合」
軸B: 「快適・便利 ↔ 不便・素朴」
4-1. 4象限の整理
快適・便利 不便・素朴 和の伝統 ① 伝統×快適(少しズラす) ② 伝統×不便(真逆にぶっ飛ばす) モダン・異文化 ③ モダン×快適(少しズラす) ④ モダン×不便(真逆にぶっ飛ばす)
以下、それぞれの象限でのアイデア事例を提案します。
① 伝統 × 快適(少しズラす)
アイデア例
伝統的な和旅館や木造建築に最新のIoTやAIサービスを導入する。
電子決済・多言語対応サービスを充実させ、外国人旅行者でもストレスなく利用できるようにする。
メリット
従来の和風のイメージを損なわずに、利便性をアップできる。
海外観光客にも受け入れやすい“ハイテク・ジャパニーズ”な魅力を演出。
デメリット・注意点
機器導入コストやシステム保守費用がかかる。
「昔ながらの雰囲気が失われる」と感じる層への配慮が必要。
実行ステップ例
既存施設にWi-Fi・電子決済端末・多言語案内システムを整備。
スタッフ研修(外国語対応、IT機器の扱い)を計画的に実施。
費用対効果の検証(導入後の宿泊者数・顧客満足度などを比較)。
② 伝統 × 不便(真逆にぶっ飛ばす)
アイデア例
あえて“昭和レトロ”や“江戸期”の空気感を完全再現。スマホやテレビの利用を制限したり、和装のみで滞在する体験を提供。
町全体を「無電化エリア(あえて夜間はランタンのみ)」のように演出して、強烈な“非日常”を体感してもらう。
メリット
インバウンド需要や若年層の「異世界」「レトロ体験」ニーズに刺さる可能性。
他の温泉街にはない強い個性を確立できる。
デメリット・注意点
現代の生活に慣れた人にはストレスが大きい。クレームや評判リスクがある。
実施には町全体や複数の旅館の協力が必要で、ハードルが高い。
実行ステップ例
まずは一部の宿泊施設やエリアで「レトロ体験ゾーン」を試験的に運用。
参加者やインフルエンサーのSNS発信で話題化を狙う。
地域住民の合意を取りながら段階的にスケールアップ(町単位で夜間照明を減らすなど)。
③ モダン・異文化 × 快適(少しズラす)
アイデア例
近代建築や海外デザイナーを起用した“スタイリッシュ温泉リゾート”を作る。
温泉×カクテルバー、温泉×サウナフェスなどのイベントを定期開催。
メリット
若者やデザイン好き、外国人観光客に刺さりやすい。
新しい写真映え・SNS映えスポットとして話題になりやすい。
デメリット・注意点
建築・内装のコストが高額になりやすい。
従来の和風文化を重んじる層からは反発を受ける可能性。
実行ステップ例
まずは既存施設の一部を改装して「サウナ×カクテルバー」「ヨガスタジオ併設」などの実験的スペースを設置。
SNSで外国人クリエイターとのコラボ企画を打ち出す。
予算・効果を見ながら、徐々に街全体のデザインにも波及させる。
④ モダン・異文化 × 不便(真逆にぶっ飛ばす)
アイデア例
“秘境”をテーマにした、自然環境を活かしたワイルド温泉キャンプ。テントサウナや森林浴を中心に、スマホ圏外体験を打ち出す。
アフリカ風・北欧風の部族的/民族的な要素を取り入れ、湯河原にいながら「異世界に飛んだような」感覚を演出。
メリット
今までにない体験型コンテンツで、マニア・冒険心のある層を呼び込める。
SNSなどで拡散性が高く、一気に認知度が上がる可能性。
デメリット・注意点
衛生面・安全面などのリスク管理が重要。
“非日常”が強すぎて、リピーターや地元客を遠ざける可能性。
実行ステップ例
安全面を担保したうえで、山間部や海沿いの空き地に「温泉キャンプ」用地を開発。
海外のアウトドア系クリエイターやブランドとコラボして世界観を演出。
運営マニュアルを整備し、事故やトラブル時の対応策を明確化。
5. 評価・検証
5-1. アイデアを評価する観点
市場規模
国内外の旅行者向け需要、SNSやインフルエンサーによる波及効果など。
コスト
初期投資(設備改修・デザイン費用など)やランニングコスト(スタッフ教育、メンテナンス費など)。
リスク
衛生・安全面の確保、クレーム・評判悪化リスクなど。
長期的効果
リピーター獲得、地域ブランド価値向上、住民の暮らしへの良い影響。
5-2. 優先度分析と着手の順番
① 伝統×快適:
比較的「導入ハードルが低く、既存施設を少しずつアップグレードできる」ため、実現性は高い。
まずはこの軸から着手し、徐々に外部リソースを取り入れつつ改良するのが無難。
③ モダン×快適:
コストは高いが、話題性・集客力が見込める。
投資回収の見通しを立てながら、②や④のような極端な施策に進む前の“実験場”としても機能する。
② 伝統×不便 & ④ モダン×不便:
かなり尖ったコンセプトで、ハイリスク・ハイリターン。
インバウンドや若者向けのプロモーションで一気にブーム化する可能性はあるが、地元の協力体制や安全面の準備が必須。
段階的にテスト運営をして、問題点を洗い出してから本格展開するとよい。
5-3. “専門家信仰”や“理想論”・“本音の問題”への検証
専門家信仰・理想論に流されないか?
建築デザイナーやIT導入コンサル、観光アドバイザーなどの専門家の意見は大事だが、現場の住民・旅館業者の声を無視すると失敗する恐れあり。
まずは少額のテスト導入やプロトタイプイベントを実施し、利用者の生の反応を確認しながら検証することが重要。
本音の問題(資金不足・人材不足など)を直視できるか?
AI導入やデザイン改修にはコストがかかる。公的助成金や地域クラウドファンディングなどの仕組みを活用して解決を図る。
観光客対応には外国語人材なども必要。地域住民の再雇用や大学との連携、インバウンド人材の呼び込みを検討。
まとめ
湯河原の温泉街再生に向けたケーススタディとして、あえて「常識」や「前提条件」を疑い、以下のようなステップを踏むことで新たな観点を得られます。
状況の明確化
従来の温泉街のイメージや課題を簡潔に把握し、何が“当たり前”とされているかを整理。
バイアス抽出
「静寂こそ価値」「快適であるべき」などの思い込みを疑い、“不便や素朴をあえて売りにする”などの逆説的な視点を持つ。
軸づくり
伝統 vs. モダン、不便 vs. 快適など、両極端なパラメータを設定し、発想を広げる。
マトリックス展開&事例提案
4象限のアイデアを具体化し、斬新であっても実行可能性や注意点を洗い出す。
評価・検証
市場規模、コスト、リスク、長期的効果などの視点を織り交ぜ、「最初に取り組むべき施策」や「段階的にテストする施策」を選定。
専門家任せになりすぎず、現場の声や資金・人材確保の課題と向き合う。
こうした思考プロセスを踏むことで、自分たちが見落としているバイアスに気付きやすくなります。そして、単なる温泉街の改修にとどまらず、日常の“当たり前”を問い直すきっかけにもなるでしょう。ぜひ、実行計画を作る際はこのような多角的・逆説的な視点を取り入れてみてください。
プロンプト適用事例②
以下では、「輸入食材価格の高騰」をテーマに、バイアスをあえてあぶり出すためのケーススタディ(事例集)を提案します。各ステップごとにポイントを整理しながら、盲点を突くような刺激的な視点を盛り込みました。
1. ケース設定(状況の明確化)
1-1. テーマ・課題・背景のまとめ
テーマ: 輸入食材の価格高騰
課題・背景:
円安や世界情勢の変化(紛争・物流混乱・環境規制など)により、特定の輸入食材(穀物・コーヒー豆・チョコレート原料・オリーブオイルなど)の仕入れ価格が上昇している。
飲食店や食品メーカーなどの事業者は、これまでの収益モデルが厳しくなり、メニュー改定・仕入先変更・値上げなどを検討せざるを得ない状況。
消費者は「今まで通りの価格帯で買えるはず」と思いこんでいるが、実際には値上げが避けられず、企業と消費者の双方に不満や戸惑いが広がっている。
1-2. 一般的な常識・前提条件
「食材コストはなるべく安いほうがいい」
「輸入食材の品質は国内調達より高い(または希少である)ため、多少高価でも仕方ない」
「価格上昇があれば、それを早めに消費者に転嫁するのが当然」
「消費者は値上げにはネガティブに反応する」
「輸入品がなければ国内の食文化は成り立たない」
こうした「当たり前」「常識」が、どこかにバイアスや盲点を含んでいるかもしれません。以下で掘り下げていきます。
2. バイアス抽出(盲点・思い込みを洗い出す)
ここでは、上記の常識や前提条件に潜むバイアスを洗い出し、「本当にそうなのか?」という視点で問い直します。
「安いほうがいい」バイアス
価格が安いこと=善、という価値観。
質や安全性、供給の安定度など“価格以外”の要素は、どの程度考慮されているのか?
安さの追求が却って質の低下や供給リスクを増やし、最終的に企業イメージを毀損するリスクはないか?
「輸入のほうが品質が高い(価値がある)」バイアス
「特定の国(例:ヨーロッパ産ワイン、イタリアのオリーブオイル、南米のコーヒーなど)=ブランド力が高い」というイメージにとらわれていないか?
そもそも「なぜその産地でなければならないのか?」の本質的理由を見直すと、新しい発想が生まれる可能性がある。
「値上げはネガティブ」バイアス
値上げ自体が“悪いこと”という認識があるが、本当にそうか?
値上げすることで、商品・サービス全体の価値を上げるチャンスになり得るかもしれない。
値上げしたぶんを新サービス(顧客体験)や品質向上に還元できるかもしれない。
「輸入品がなければ国内の食文化は成り立たない」バイアス
外国の食材を取り入れてきた歴史は事実だが、国内の生産・加工技術が進んでいる領域はないのか?
代替品・新技術・フードテックによる新たな可能性を見落としていないか?
「専門家や大手の意見が絶対」バイアス
食品の調達やマーケティングにおいて、大手コンサルや業界有識者のアドバイスが“唯一の正解”と思い込んでいないか?
素人目線や小規模事業者のアイデアに、新たな打開策が隠れているかもしれない。
「不便は悪」バイアス
輸入に時間がかかる、コストが高いといった“不便”は、絶対に解消すべきものなのか?
あえて“不便”な特性をサービス化(例:希少性やストーリーとして売りにする)できないか?
3. 軸づくり(両極端なパラメータの設定)
バイアスから浮かび上がった視点を、「○○ <--> △△」で対極的に整理します。複数の軸を設定し、それぞれのズレや逆手の取り方を検討しやすくします。
価格軸: 「安さを徹底」 <--> 「高付加価値を追求」
調達軸: 「輸入中心」 <--> 「国内生産・地産地消」
価値提供軸: 「コモディティ(大量生産・同質化)」 <--> 「プレミアム体験(希少性・ストーリー重視)」
視点軸: 「専門家・大手企業の常識」 <--> 「素人・小規模事業者の発想」
利便性軸: 「速さ・手軽さ」 <--> 「あえての不便・スロー体験」
4. マトリックス展開&事例提案
ここでは、例として 「価格軸」 と 「調達軸」 を掛け合わせた4象限マトリックスを作り、具体的アイデアを提案します。
4-1. 4象限マトリックス
低価格を重視 高付加価値を重視 輸入中心 [A] 輸入コストを徹底的に削減 [B] 輸入品でも高級・希少性を売りに 国内・地産地消 [C] 国内調達で低価格路線 [D] 国内素材のブランド化・高付加価値化
以下、それぞれの象限において「少しズラす案(斬新さ中程度)」と「真逆にぶっ飛ばす案(かなり挑戦的)」を示します。
A. 「輸入コストを徹底的に削減」(低価格 × 輸入中心)
少しズラす案
共同購入・共同物流: 飲食店や食品メーカーが共同でコンテナを借りて一括輸入する。物流費を分担し、まとめ買いで単価を下げる。
長期契約による価格安定: 産地や商社と長期契約を結び、リスク分散しながら価格を一定に保つ。
真逆にぶっ飛ばす案
“賞味期限ギリギリ”専門商社を設立する。輸入されるものの中で、本来廃棄される直前の在庫を買い取り、超低価格で売る。
商品ロス削減の社会的意義をアピールしつつ、原価を極限まで抑えた価格提供が可能。
船便にこだわらず、あえて超スロー物流を採用し、その代わり爆安に設定する。
「3か月待てば半額で買えるコーヒー豆」など、不便を付加価値とする。
B. 「輸入品でも高級・希少性を売りに」(高付加価値 × 輸入中心)
少しズラす案
生産者ストーリーを前面に出す輸入ビジネス:
たとえば「この農家は環境保護に熱心で、有機栽培が特徴」など、生産者のこだわりやストーリーをコンテンツ化する。
同時に、食材の履歴管理やトレーサビリティを強化し、安全・安心への付加価値を明確化する。
体験型マーケティング:
輸入先の生産地域をオンラインツアーや動画配信で紹介し、「希少なチーズを生産者とつないでテイスティング会」などを行う。
真逆にぶっ飛ばす案
“超高級路線”で、逆に価格を10倍にする:
同じ商品でも超高価格で売り出し、希少性を徹底的に演出。顧客層を富裕層や企業ギフト市場に特化する。
「世界一高価なオリーブオイル」「サステナブル農園限定ロット」など希少価値を尖らせる。
サブスク型の“VIP限定食材クラブ”を設立:
高額な月額会費を払い、極めて希少な輸入品を優先提供する。毎月限定アイテムを届けることで特別感を演出。
C. 「国内調達で低価格路線」(低価格 × 国内・地産地消)
少しズラす案
地域連携で“地域特産物の定番化”を狙う:
地方農家や漁協と直接取引し、流通コストを下げる。
大手量販店やチェーン店と契約し、商品を全国展開させる。
農産物の“二次加工品”開発:
形が悪かったり、市場規格外の農産物を使い、新商品(ペーストやソースなど)を低価格で開発。
“もったいない”を逆手に、安く手に入れられる原材料を活用。
真逆にぶっ飛ばす案
“都市型農業”や“室内農業”に徹底投資し、大規模化して価格を下げる:
水耕栽培や垂直農法などで生産効率を高め、輸送コストを削減。
最終的に輸入品より圧倒的に安い価格を目指す。
ゼロから“国内カカオ”や“国内コーヒー豆”の生産を実現するプロジェクト:
技術的ハードルが高いが、もし成功すれば輸入に頼らない“国産化”が可能。
価格は下げられないかもしれないが、輸入コスト分を他の面で工夫できれば長期的には低価格に寄与する可能性も。
D. 「国内素材のブランド化・高付加価値化」(高付加価値 × 国内・地産地消)
少しズラす案
地域資源を“輸入品の代替”に仕立てる:
例えば「和製オリーブオイル」「和製チーズ」「国産小麦のクラフトパスタ」などをブランド化。
既存の“外国イメージ”に対抗しうる品質をめざす。
体験型観光(アグリツーリズム)+高価格商品販売:
観光客や企業向けに「収穫体験+地元シェフの料理」を組み合わせ、高付加価値商品を現地価格で販売。
真逆にぶっ飛ばす案
“海外進出”を逆手に取り、国内ブランドを海外展開で価値向上:
国内で生産した高品質食材を海外の富裕層に販売し、“逆輸入”ブランドイメージを作り出す。
結果的に国内でも「海外で評価された=本物」として高値で売りやすくなる。
伝統品種の復活や希少品種の発掘を徹底し、クラフト感を最大化:
江戸時代から続く在来種、限られた地域だけで採れる食材などを再評価・再生産して超高級市場に特化。
いわば国産版の“トリュフ”や“高級スパイス”を生み出すイメージ。
5. 評価・検証
5-1. アイデアの評価観点
市場規模: どの程度の売上・マーケットポテンシャルがあるか。
コスト: 初期投資・ランニングコスト・人件費などの負担はどれくらいか。
リスク: 法規制・品質リスク・在庫リスク・物流リスクなど。
長期的効果: 為替や国際情勢の変動に強くなるか、ブランド力が継続的に高まるか。
社会的インパクト: 地域活性化やSDGs貢献、フードロス削減などの社会的評価は得られるか。
5-2. どれから手をつけるべきか(優先度分析)
短期的にリスクが小さい案(例:A-1、C-1など)
共同購入や地域連携などは比較的ハードルが低く、成果が出るまでのスピードも早い。
まずはここから取り組み、キャッシュフローや安定化を図るメリットがある。
長期的に大きなリターンを狙う案(例:B-2、C-2、D-2など)
大規模投資や技術開発、海外展開が必要なためリスクは大きいが、成功すれば差別化度合いが高く、国際的なブランド確立が期待できる。
余力のある企業や、ベンチャー的にリスクを取れる組織が挑戦する価値がある。
5-3. 専門家信仰や理想論に流されるリスク
専門家や大手企業の分析をうのみにしない:
大手企業のノウハウは有用だが、中小規模で成功するビジネスモデルは必ずしも同じとは限らない。
“素人”や“小規模事業者”のアイデアを取り入れる余地を常に確保する。
資金・人材不足への現実的な対処:
「やりたいこと」はあっても、実際に動かすための予算や人材が足りないケースが多い。
その場合は、まずはスモールスタートで検証し、成果を見ながら拡大するステップが無難。
不便や欠点を“武器”にできるか?
“待たされる”“割高”などのネガティブ要素を、むしろプレミアム感やストーリーに変換できる可能性を常に検討する。
まとめ:バイアスを自覚し、新たな選択肢を模索する
輸入食材価格の高騰に対する対応策を考えるにあたり、以下の点が重要です。
「価格は安いほうがいい」「輸入品は品質が高い」などの固定概念を疑う。
両極端な軸で整理し、一度は“真逆”の可能性も検討してみる。
短期的に実行しやすい案と、長期的に大きなリターンを狙う案を組み合わせる。
専門家や大企業の常識にとらわれすぎず、小規模事業者・地方の知恵を取り込む。
不便や欠点を逆手にとったビジネスモデル(フードロス、スロー物流など)も選択肢に入れる。
このように多角的な視点からケーススタディを行うことで、単純な値上げやコスト削減だけではない、新しい施策やビジネスモデルを生み出す可能性があります。バイアスに気づき、自分たちが見落としていた“盲点”をあぶり出すことが、本質的なイノベーションにつながる鍵となるでしょう。