【GPTs】フェルミ推定をもっと身近に!あなたの代わりに推定して答えを出すGPTs:ビジネスや身の回りの問題解決にも
はじめに:フェルミ推定を採用面接問題だけに留めておくのはもったいない
フェルミ推定とは、限られた情報やデータから、論理的思考と創造性を駆使して、ある数量を推定する手法です。
最も有名な問題は以下のようなものです。
フェルミ推定に関する書籍もたくさん出版されています。
例えば、「東京23区にあるマンホールの数は?」「地球上に蟻は何匹いるか?」といった、一見答えがわからないような問題に対して、推定を行います。
この推定方法は、物理学者エンリコ・フェルミの名前にちなんで名付けられました。彼は、宇宙には高度な文明を持つ惑星が数多く存在するはずだと考え、「宇宙には地球以外にも生命が存在するのか?」という問いに対して、論理的な推論に基づいて推定を試みました。
ビジネスの現場でのあらゆる見積もりに使ってみる。
フェルミ推定の例題として出される問題は、日常から離れた?例題が多いです。
東京23区にあるマンホールの数は?
地球上に蟻は何匹いるか?
人類史上、最も売れた本の数は?
しかし、フェルミ推定は思考ツールですから、本当はもっと日常的に使って良いのです。
でも、そうはいっても、フェルミ推定は問題ごとに細かく仮説を立てる必要があり、面倒です。
そこで問題だけ入力すれば、推定プロセスを代わりにやってくれるフェルミ推定GPTsを作りました。ChatGPT Plusユーザーは無料でお試しいただけます。
(GPTsとはChatGPT Plusユーザーが利用できるChatGPT上で利用できる様々な種類のWebアプリケーションです。)
フェルミ推定GPTs
これを作ってみた結果、確率的推論を行う大規模言語モデルであるGPT−4にとって、フェルミ推定は実はかなり得意分野ではないかという印象を持っています(フェルミ推定のための仮説を設計するのが面倒な作者の言い訳です)。
以下、3つほど事例を作成しましたので、GPTの推論結果に説得力があるか、お確かめください。
事例1:創薬企業のコスト削減額を推定
以前書いたnote記事中に、モデルナ社がGPTsアプリを導入することで「数週間かかっていた作業が数分で終わった」という内容がありました。
数週間といっても2週間から10週間まで幅があるし、数分といっても2分から10分まで幅があります。
何人の従業員がこの業務に関わっていたのかも言及されていません。
この情報、読者にとって大事だよ、Wall Street Journalの記者さん、もっとしっかり取材してくれよ、と内心思います。
こんな時こそフェルミ推定の出番です。
フェルミ推定GPTsに対して以下の質問をしてみました。
以下はその出力結果です。
推定結果(フェルミ推定GPTsの出力)
この問題を解決するために、まずは問題の前提を確認し、それから推定に必要な情報を整理する必要があります。問題文から、以下の情報が得られます:
以前は数週間かかっていた規制当局からの問い合わせに対する回答作成プロセスが数分で完了するようになった。
この効率化がどれだけのコスト削減につながったかを推定する。
ステップ1: プロセスの効率化
まず、元々のプロセスにかかる時間(数週間)と新しいプロセスにかかる時間(数分)を比較して、時間の節約を計算します。具体的には、3週間と15分と仮定して計算します。
ステップ2: 時間の金銭換算
次に、時間の節約を金銭に換算します。ここで必要なのは、プロセスに関わる労働者の時給または労働コストです。アメリカでの平均的なバイオテクノロジー関連の専門家の時給を50ドルと仮定します。
ステップ3: コストの計算
プロセスの時間がどれだけ短縮されたかに基づいて、コスト削減を計算します。
推定の評価と不確実性
この推定は、多くの仮定(プロセスの期間、時給、作業効率など)に基づいているため、実際のコスト削減はこの値から大きく異なる可能性があります。また、GPTsの開発と維持のコストも考慮する必要がありますが、それについての具体的なデータがないため、この推定はあくまで時間効率化による直接的なコスト削減のみを考慮しています。
これにより、モデルナ社のプロセス効率化による推定されるコスト削減は約60,000ドルとなります。この推定が現実の状況をどの程度反映しているかは、より詳細な情報が必要ですが、大まかな見積もりとしてはこのような計算が可能です。
以上がフェルミ推定GPTsの出力結果です。
この推定額は、従業員 一人当たりの金額であり、この業務に複数名が関われば、その掛け算の金額になるし、年に数回このような業務が行われるとすれば、これまた掛け算を行なって合計の1年間のコスト削減額を算出することができます。
このように面倒な概算や見積もりも、フェルミ推定GPTsを使えば簡単に済ませることができます。
新規事業計画の企画書であったり、マーケティング施策の企画案であったり、 その他日々のいろいろな見積もりや予測の根拠の説明に使えますね。
フェルミ推定の日常的かつ柔軟な応用法について、より具体的なイメージを持っていただくためにもう2つほど事例を挙げます。
事例2:世界中で1年間に食べられるビッグマックに使用されるビーフパティは、肉牛何頭分に相当するか?
以下がGPTsの回答です。
ビッグマックに使用されるビーフパティが1年間に世界中で消費される総量を推定し、それが肉牛何頭分に相当するかを見積もる問題です。この推定にはいくつかの段階を踏む必要があります。
1. ビッグマックの年間販売数の推定
まず、ビッグマックの年間販売数を推定します。具体的なデータがないため、仮定として計算します。例えば、世界中でマクドナルドが約4万店舗あり、1日あたり平均100個のビッグマックが各店で売られるとします。計算は以下のようになります。
2. ビッグマック1個あたりのビーフ使用量
ビッグマックには通常2枚のビーフパティが使用されています。各パティの重量を約45グラムとします。したがって、1個のビッグマックには90グラムのビーフが使われます。
3. 年間のビーフ使用総量
4. 肉牛1頭あたりのビーフ供給量
肉牛1頭から得られるビーフの量は様々ですが、平均的には約400キログラムとされています。
5. 肉牛何頭分かの計算
この推定には多くの仮定が含まれているため、実際の数字とは異なる可能性がありますが、おおよその計算としてはこのようになります。
以上がGPTsの回答です。
確かに、推定で出した答えは正確な情報ではありません。推定です。
しかし、このGPTsが仮説としての計算式を立てる際に用いたパラメーター(店舗数や、1店舗で1日に販売されるビックマックの数)は、参考になるはずです。
もしかしたら、このような店舗数は 1日あたりの販売数など、 細かくブレイクダウンされたパラメーターであれば、インターネットで調べたら出てくるかもしれません。
これをスターバックスのカフェラテが1年間に販売される数など、 対象を変更して応用すれば、調査対象企業のおおよその活動状況を推測できるようになります。
事例3: Microsoft社の1年間の人員採用コストは?
以下GPTsの回答です。
マイクロソフト社の1年間の人員採用コストを推定するために、いくつかの要因を考慮する必要があります。公式なデータがない場合、以下のようなステップで推計を行います:
従業員数の増加: マイクロソフトがどれくらいの人員を毎年採用しているかの平均値を見つける。
採用コスト: 業界平均や類似企業のデータから、1人あたりの採用コストを推定する。
ステップ 1: 従業員数の増加
2023年の報告によると、マイクロソフトは約20万人以上の従業員を抱えています。過去数年間のデータから、年間の人員増加率が約5%と仮定すると、1年間に約10,000人の新規採用があると推定できます。
ステップ 2: 採用コスト
一般的な技術系企業での1人あたりの採用コストは、広告、リクルーターの費用、面接の旅費補助、採用イベント等を含めると約$4,000から$7,000とされています。ここでは中間値の$5,500を使用します。
計算
10,000人 x $5,500 = $55,000,000
これにより、マイクロソフトの1年間の人員採用コストは約5500万ドルと推定されます。この推定はあくまで概算であり、実際の数字は異なる可能性があることを留意してください。また、新型コロナウイルスの影響や経済状況の変化により、採用計画や採用コストが大きく変動する可能性もあります。
まとめ
フェルミ推定GPTs、いかがでしたでしょうか。
投げかける課題によってGPTsの回答に対するやる気もかなり違っているのがお分かりになったと思います。
3番目の事例などは、かなり手抜きされた回答だと感じた方も多いのではないでしょうか。
回答に満足しない場合は再度聞くとか聞き方を変えるとかいろいろな方法があります。
例えば、3番目であれば「 日本支店でのマネージャークラス以上の 1年間の人員の採用コスト」 などとかなり条件を絞って聞くと、やる気を出して丁寧な回答を出してくる可能性もあります。
一方、1番目の事例や2番目の事例の回答は、企画書などに採用しても良いレベルかもしれません。
このように、フェルミ推定は、決して学問上の問題に対する手がかりを得るための方法に限定されるものではないし、ましてや面接試験でだけ使われるものでもありません。
私たちが日常出会っている疑問のうち、数字で答えが欲しいものについて、全て実行できる、恐ろしいほどの汎用性を持った推論テクニックです。
気軽に使ってみることで、人に何かを説明する際や、自分が意思決定をする際に役に立つことをじわじわ実感されると思います。
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