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僕たちはどう生きるか

「なんか新型のウイルスが中国で流行ってるらしいぜ、リアルバイオハザード起きてる」

「なにそれ、草。ブカーンシティじゃん」

「オリンピックまでに終わってほしいよな」

そんな与太話をしていたのが去年の1月の頭。

リアルバイオハザードは人の精神と思考力を奪い、貧困と猜疑心と緩やかな死を与えた。

僕らはなんの希望もなく、俯きながら死んだように生きるゾンビになってしまった。

あれから1年経った1月の7日、僕たちはまだ、救いのない世界を生きている。


緊急事態宣言

昨日、一都三県を対象に2度目の緊急事態宣言が出た。

Go Toトラベルなどの国策で、ほんの少しだけ日本に活気が戻ってきた途端の感染爆発。連日の感染者は2000人を超え、いよいよこの世が怪しくなってきた。

チープな異世界転生ラノベの世界に連れていかれたかのような気分だ。

街も人も変わらないのに、人の生き方や世界の在り方は完全に変わってしまった。

世界は目に見えない菌に壊されて、僕らは別の世界に連れていかれてしまった。

人類も所詮、地球というシステムの一部なだけなのかもしれない。

僕の時計は2020年のまま止まってしまっている。失われた1年。何となく肌で感じるのはもうビフォーコロナには戻れないということ。

もう居酒屋でピッチャーを回し飲みしながらバカ騒ぎしていた時代には戻れない。

世界が、経済が、人との繋がりが壊れても僕たちの人生は続いていく。1度きりのこの人生は世界の時計が壊れても前に進んでいく。

まじで世の中どうなってんだよ。

変わってしまった世界で死んだように生きるくらいなら、変化を受け入れて少しでも楽しく生を全うするしかない。

リモートワーク、オンラインデート、巣ごもり消費、密の回避…

今までの世界になかったものをどんどん受け入れ、順応するしかないのかもしれない。新しい常識がどんどん生まれてくる。

もう人間関係は生身の身体を必要としない。

Zoom越しの声や笑顔は、かけがえのないものだ。オンラインでの出会いや交流はどこか本気になれなかったけど、今はもうそんなこと言ってられない。

予防医療の価値が相対的に上がっている。

もう病気になったら病院に行く時代ではない。通院すること自体がリスクなこの世界では、病気を未然に防ぐセルフメディケーションが必要だ。

個人のメディア化も加速するだろう。

未知のウイルスに罹患したらどうなってしまうのか。後遺症とどう向き合えばいい?生活は?

大事なことを国は何も教えてはくれないし、未曽有の事態に対し、年長者の経験は全く役に立たない。

個人の実体験や、テレビに映らない有識者の知見がもっと必要だ。当事者の生きた情報が沢山ほしい。

会社もアテにならない。

上場企業も外資系も、等しく危機を迎えている。常識は本当に意味が無くなった。力のある上層部の人間が会社を見限ってどんどん外に出ていく。

貯金も人脈もなく、大企業の看板にしがみついて、抜きんでたスキルもなくルーティーンな社会人生活を続けている僕は常に将来の不安を抱く。

ここまで長期化すると耐えきれない企業がどんどん潰れていくだろう。もう転職は望めないし、非正規が正規雇用されるのも厳しくなるだろう。

さっきUFJ銀行に行ったら、ATMの数が半分くらいになっていた。オンラインでの取引メインに舵を切ったということなんだろう。

そりゃそうだ。窓口業務や受付はもはや誰にでも出来る仕事ではなくなった。

人と人の接点がリスクになる時代が来てしまった。

生身の人間の受付はなくなり、AIやチャットbotが機械的に、簡単な窓口業務をオンライン上でこなす時代がもうそこまで来ている。

貨幣のやり取りや貨幣そのものもリスクが高いから、キャッシュレス化は輪をかけて加速するんじゃないだろうか。


鷲田清一が「清潔シンドローム」と言うことを昔言っていた。もう道を往来する人とすれ違うことすら怖い。

岩井克人は「身体の疎外によって人は世界の中心から弾き飛ばされる」と言っていた。人との関わりが希薄になった世界で、人は驚くほど簡単に心を失った。

現代文を読みながらそんな世界来るわけないじゃんって思ってた高校生活から10年近く経った今、そんな世界に本当になってしまった。

経済学を修めた訳ではないが、なんとなく分かる。本当の不景気はここから始まる。

新しい技術や概念に仕事を奪われる人が出て、それに適応できない人は時代にどんどん取り残されて社会から弾き飛ばされていく。

PCを使えない管理職が窓際に追いやられたように、ZoomやEightを使いこなせない人間はこの先危ういのかもしれない。

他人事ではない。プログラミング教育が義務化されて、当たり前のようにコードを書ける世代が社会に流入してきた時、僕の価値はどれくらいあるんだろうか。

もっと勉強しなければならない。知恵とスキルを身につけて、少しでも豊かに生きる工夫をしなければ。

どうしようもない世界に何とか順応して、殺しても死なないゾンビのような逞しさを手に入れたい、と今はただ思う。

そういえば昨日は人日の節句だった。

七草粥ではなくカツサンドを食べながらふと思う。

かゆ、うま。

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