漫画キングダムから学ぶ会社経営 #22:外交官の政治的交渉術
本記事は、「漫画キングダムから学ぶ会社経営」と題し、毎回、様々な視点から漫画キングダムとビジネス(特に経営)での共通点及びそこから得られる学びについてまとめていきます。今回は22回目の記事になります、過去の投稿はこちらからご覧ください。
これまで21回の記事では、主に将軍や武将、王様について触れました。ビジネスでいう所の社長や、実際に売りを挙げる営業やコマーシャル部門についての考察でした。もちろん、これらは会社経営の根源になりますので、重要で花形になりますが、会社や組織を経営するにあたっては、これらと同等に重要なのが、サービス部門と言われる部署です。直接ビジネスを生み出す訳ではないが、会社という大きな組織をマネージする上で欠かせないものとなります。サービス部門には、人事、総務、経理、法務、広報などが含まれます。今回から数回、これら会社でいうサービス部門とキングダム登場人物をリンクさせ考察したいと思います。
今回は、蔡沢についてです。
蔡沢と言えば、キングダム初登場時は呂不韋の側近4柱の一人として、主に外交、政治担当として登場しますが、昭王時代には丞相として仕え、さらには呂不韋失脚後も嬴政に仕えるなど、長く秦国に尽くします。「#2:平等かつ積極的な人事戦略」でも触れましたが、蔡沢は燕という東の国の出身になります。蔡沢は実在し、史実にも優秀な政治家として記載されています。
蔡沢はキングダム内では主に外交官として活躍します。外交官というのは主に国における役職ですので、一般的な会社には外交官という役職はほとんどないと思いますが、広報やExternal Relationsという部署に該当します。日本の会社の広報というと、製品の紹介をしたり、メディアの窓口になったりというイメージですが、外資系のExternal Relationsはただの紹介や、外部の窓口だけでなく、会社の代表として外部機関との交渉なども行う非常に重要な部署になり、外交官的な役目も担います。ロビー活動などもこれに当たります。
それでは、蔡沢が秦という国にとってどのような役割を果たしたのでしょうか。以下3つの例を基に考察します。
1) 日々の交渉、関係構築により均衡を保つ。
蔡沢は、自分のコネやネットワークを最大限活用し、主要国(特に顔が利く東の燕や斉)の主要人物と頻繁に面会し、情報を得、関係構築をしています。これは直接的にビジネスになったり、利を得る事には見えませんが、長期的に見た関係構築にとっては重要な行為であり、軽視すべき行動ではありません。会社で言うと、やたら顧客に会いに行って、時にはただ飲みに行ったりする営業マンがいますが、彼らは決してただ会社の経費を使って雑談をしている訳ではなく、いざという時の関係構築と重要な情報を得る為にこのように日々時間を使っているのです。ビジネスというのは流動的であり、このような行為というのは、社会的均衡を保つ為にも非常に重要です。
2) 危機を避ける。
上記の関係構築が前提ですが、いざ、国や会社が大ピンチに陥た時に、この関係を最大限に活用し、そのピンチから抜け出すというのも重要な役務になります。キングダムでは、合従軍に攻め込まれた時が良い例になります。当初は秦は斉国含む6国に攻め込まれそうでしたが、蔡沢が直接斉王に交渉して、直前に斉が合従軍から抜ける交渉に成功します。この結果、秦は国が亡びる事を免れました。この交渉は恐らく蔡沢でなければ成功しませんでした。合従軍の戦いにおいて最大の功績になります。
3) 戦わずして勝つ。
最後は、蔡沢が死ぬ直前に成し遂げた大仕事になります。斉国建国王と秦国嬴政のトップ会談の実現です。この時代、恐らく各国の王同士が直接会談する事はほとんどなかったと思いますが、蔡沢は嬴政の中華統一という目標を、自分が生きているうちにできる最大限の手助けとしてこの会談を実現させます。この会談により、斉国は条件付きでありますが、斉国の降伏を約束します。国をひとつ落とすのに数十万の兵と、金、時間がかかる中、交渉→会談→約束というプロセスを経て戦わずして勝つ事に成功するのです。
このように、蔡沢は自身のネットワーク及び交渉術を最大限活用し、武力行使の時代において、戦わずして勝つという事を成し遂げるのです。交渉というのは、どんな時代も非常に有用で大きな利益をもたらすという事を蔡沢は教えてくれました。
一般的な会社においては規模が違いすぎて、しっくりこないかもしれませんが、自身の職務や立場において蔡沢のような交渉ができないか今一度考えてみてはいかがでしょうか?例えば、プロジェクト一つにおいても、事前に根回しや関係を構築する事により、長期的に見て、効率化出来る事はありませんか?最小限のリソースでコンペに勝つ為に何かできる事はありませんか?正々堂々と武力行使だけが仕事ではありません。日々の仕事に蔡沢の交渉術を取り入れてみましょう。
では、また次回。
注)写真はすべて漫画キングダムより引用