M-1

 先日、M-1を見た。出演している芸人さんは皆それぞれの色があり、腹が痛くなるほど笑わせてもらった。過去最多の応募者10330組の中から選ばれた、たった10組だからそりゃ面白い。10330組の中には、興味本位で受けたり、お笑いを仕事にしていない人もいるだろうが、ほとんどはこの大会で人生を変えに来ていると考えるととても壮大なイベントである様に感じた。
 その芸人さん達の素晴らしいと感じた点が一つある。面白いのは勿論なのだが、敗退が決定したコンビや、思ったよりも点数が伸びなかったコンビのどれもが、必ず最後にボケて笑いをとっていた点だ。芸人だから当たり前だと思うかもしれないが、ずっと目指していた目標が叶わないと分かり、打ちのめされたその瞬間にも人を笑わせる、というプロ意識の下、笑いを取る事を全うする。
それはとても難しく、精神力が要求される物だ。
 中には、今年がラストイヤーのコンビもいる。彼らの場合、来年のリベンジの可能性はそこで潰え、それは即ち夢の完全な終焉を意味する。そんな中でも舞台に立っていることを忘れずに、自分の仕事を全うする姿は非常に格好が良く、眩しい。
 芸人に限らず、自分の仕事に誇りを持ち、どんな場面でも仕事をやり遂げる人々は美しい。芸人達が自分達の出番の最後に見せた笑いは、強がりでも、照れ隠しでもなく、彼らの仕事への譲れない思いが表れたものなのだろう。

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