声の大きさを使い分けるにはどうすればいいですか?
どうも。ボイトレをさせないボイストレーナーのヨシ・トクガワです。
今回は40代会社員、男性のTさんとのレッスンのお話です。
Tさんからご相談いただいたのはまさに今回のタイトルのこと。
「声の大きさを使い分けるにはどうすればいいですか?」
私はボイトレをさせないボイストレーナーなので一般的なボイストレーニングで取り入れられている発声練習や滑舌の練習は、いたしません(ドクターX風に)。
そんなのは無意味だと考えているくらいです。
レッスンでは、その日から誰でも活用できて、確実に声が変わるために必要なことをお伝えしていきます。
Tさんにもそのことをお伝えしました。
でも人は言葉で聞いても忘れてしまう生き物です。
忘れずに記憶に残りやすくするためには、体験として持ち帰っていただく必要があります。
なので、簡単なおもちゃを使って大切なことを体験していただきました。
これは初めてレッスンに来てくださるか方には必ず体験していただいていることでして、しかもおもちゃをプレゼントして忘れないようにしてもらっています。
話がそれてしまいましたがTさんがレッスンでリクエストしてくださったのは次のようなことでした。
いつも声が大きくて、近くにいる人にうるさいと言われたり、オフィスで他の人に聞かれたくない大事な話をしようとしても他の人に聞こえてしまったりして困っています。
遠くにいる人に話すときは便利なのですが、ちょうどいい声の大きさをだすにはどうすればいいですか?
答えを教えてしまうのは簡単なのですが、ただ情報を受け取るだけではなくてTさんの記憶にも残していただくために、いろいろな質問を交えながらTさんに「考える」ことをしていただきながらレッスンをすすめていきました。
1. 「なんとなく」で声を出していませんか?
あなたは「なんとなく」で声を出していませんか?
普段の会話や会社での会話において、わざわざ声の大きさをコントロールしたりすることはありませんよね。
それが普通だと思います。
だから「なんとなく」で声を出したり話したりすることが悪いわけではありません。
もちろん良いわけでもありません。
そもそも良い・悪いで判断したりすること自体がナンセンスなんです。正解・不正解で判断したり、マルかバツかで判断するのも同じ。非生産的なことです。
だってそれは誰かの基準に当てはめただけのバイアスのかかりまくった評価ですからね。
ただし。
「なんとなく」で声を出すことで困っていることが起きていたり、望んでいる結果と違うようなことが起きているようであれば、そのまま放置しておくわけにはいきませんよね。対処しなくては困っていることは永遠に起き続けるし、望んでいる結果も永遠に手に入れられませんからね。
Tさんにも同じような質問を聞き方を変えて投げかけてみました。
「例えば、少し離れたところにいる人に向けて話しかけるとしたら、どうしますか?」
Tさんは「大きな声を出す」と答えてくれました。
そんなTさんに私は隣まで近づいていってもう一つ質問しました。
「ではこのくらい近くにいる人に話しかけるとしたら、どうしますか?」
Tさんは「小さな声で話す」と答えてくれました。
さらに私は突っ込んだ質問をします。
「では、どうすれば声を大きくしたり小さくしたりできるでしょうか?」
Tさんはしばらく考え込みます。
私が「分からない、考えたことないという風に答えてくれてもいいですよ」と伝えると、Tさんは「考えたことないです」と答えてくれました。
大切なのは普段あまり意識していない、考えずに無意識でやっていることなんだと気がつくことです。
そうしないと、改善することは不可能です。
気づいていないことというのは本人にとって存在していないことと同じですからね。
2. 役割分担はきちんとさせる
「今までなんとなくで声を出していた」とか「あまり考えることなく無意識に声を出していた」ことに気がつけたなら、次のステップです。
次のステップは役割分担を知ることです。
声を出すときに自分のカラダではどんなことが行われているか?を知ることで、必要なことが起きていないことに気づいたり、必要なことは起きているけど足りないとかやりすぎということがわかります。
Tさんにも考えてもらうためにこんな質問をしました。
「遠くにいる人と話すときと、近くにいる人と話すときではどんな違いがありますか?」
この質問だけではなかなか難しいかもしれないので実際にTさんに体験していただきました。
その時のレッスンにはもうお一人参加されていました。
もう一人の参加者である女性のSさんに協力していただいて、Tさんに体験をお渡ししました。
まずSさんに少し離れてもらって、Tさんと距離をとっていただきました。
そして私はTさんの近くに行きます。
「まずはSさんに聞こえるようにお話ししてみてください」
この時、お話ししていただく内容は何でも構いません。大切なのは違いに気づくことなので、あまり意味のないことを話していただいた方が内容にとらわれなくてすむので「今日、このスタジオまでどうやって来たか?」を話してもらいました。
少し離れたところにいるSさんに聞こえるように話していただいた後、今度はこんな風にお願いしました。
「今度は、Sさんには聞こえないように、さっきと同じことを私だけに聞こえるように話してみてください」
先ほどと同じ内容をTさんがお話しし終えた後、こんな風に訪ねました。
「Sさんに聞こえるように話すのと、私だけに聞こえるように話すのでは、Tさんのカラダや感覚で違うことはありましたか?」
Tさんはこう答えてくれました。
「えっと…吐く息が違う気がします」
私がTさんに気づいて欲しかったことがまさにそれです。
遠くにいる人に話しかけるとき、近くにいる人に話しかけるときでは息の量やスピードが違うのです。
なぜなら、声が生まれるには主に声帯ヒダの緊張具合と息の量やスピードが関わっているからです。
そして、もちろんのことですがそれぞれの役割は違います。
ギターやピアノのような楽器に当てはめて考えてもらうとわかりやすいと思います。
ギターやピアノで大きい音を出したい場合、どうすればいいでしょうか???
私たちの声も同じことなんですが、多くの人は弦のチューニングを変えることで大きな声を出そうとしています。
つまり、声の大きさを喉でコントロールしようとしているのです。
うまくいくはずがないのに、残念ながら、役割分担がめちゃくちゃな人が多いんですね。だからすぐに喉が痛くなったり声が枯れたり、声が通らないという結果につながってしまうんです。
適材適所という言葉があるように、声を出すときもカラダの役割をきちんと分担させてあげましょうね。
3. 望んでいる結果が起きるためには?
今回のレッスンでTさんが気づいたように、声の大きさを使い分けるためにはどうすればいいに気がつくことができればあとは簡単です。
使い方がわかったら、望んでいる結果を起こすために必要なことをするだけ。とくに難しいことはありません。
Tさんにまた同じように少し離れたSさんと近くにいる私に話してみてもらいました。
今度は息の使い方を意識的にすることでどんな変化が起きるか体験してもらいました。
どれだけの息のスピードと量を使えばSさんに届けられるか?
また、どれだけの息のスピードと量があれば私にだけ届けられるか?
それを意識的に考えながら話してもらいました。
Tさんにどんな体験をしたか聞いてみると…
「とても楽に声を出すことができました。さっきより力を入れなくても声が出せるということもわかったし、スッと出てきた気がします」
私たちのカラダはとても良くできているので、意図すればそのように動こうとしてくれます。
だからこそ、カラダの構造に反した情報や現実とは違う間違った知識を持っていると、絶対にあり得ないことをやろうとしてしまい、それが望んだ結果にはならないということが起きてしまうのです。
でもそのことに気づいていない人が多いのが現状なんですよね。
ググって手に入るボイトレ関連の情報や発声・話し方に関する情報の約9割はカラダの構造に反したことですからね。
望んでいる結果を手に入れるためには、必要なプロセスを意識的に選択して実践するということが欠かせません。
今回のレッスンでTさんが体験したことがまさにそれです。
4. 必要な分だけ空気の振動を起こすために
さらにプロセスを丁寧に考えて行けば、望み通りの結果にたどり着く可能性はさらに高くなります。
では、遠くにいる人に話しかけるには、声を届けるには何をすればいいでしょうか?
声や音というのは空気の振動として相手に伝わっていきます。
近くにいる人にはそれだけの距離の空気の振動が起きれば十分なわけで、それ以上は必要ありません。
十分すぎる量を超えたなら「大きい」とか「うるさい」ということになるわけです。
同じく、遠くにいる人に話しかけたりするとき、必要な分の空気の振動が起こればいいのですが、足りないと「聞こえない」とか「気づいてもらえない」ということが起きます。
なので、空気の振動が起きるためのプロセスを丁寧に考えて、必要な分を起こせばいいのです。
役割分担のところでも触れましたが「息を吐くこと」についてもっと丁寧に考えて、起きてほしいことを起こしましょう。
そのためには呼吸に知識や情報、そしてカラダの構造に沿って理解することが書かせません。
呼吸に関する知識はnoteや私のサイト『声のトリセツ』にまとめてますのでご覧ください。
5. 使い方を変えれば魅力的にもなれる
ほとんどの方はこれだけでも確実に変化が起きます。なぜなら、カラダの使い方を知り、今までとは違う使い方をしたから。つまりプロセスが変わるので結果が変わるのは当然のことなんです。
変化が起きなかったとしたら、無意識に今までと同じ使い方をしているけれど、そのことに気がついていないのです。
変化が起きるのにはワケがあるし、変化が起きないのにもワケがあります。
そしてひとたび変化が起きれば、あなたが意図していない変化も起きます。
それは、あなたの声を聞いた人か受け取る印象が変わるからです。
実際にTさんの変化をSさんは「男らしさが増した」と表現していました。
もちろんTさんは、男らしく話をしようとは考えていませんでした。
ただ私がお伝えしたことを意識して話しただけで、女性にとっては「男らしさが増した」と感じてもらえるのです。もちろん人によって受け取り方は違います。
人によっては「親しみやすさ」を抱くかもしれませんし、「信頼感を感じる」かもしれません。もしくは、好意を抱いてくれることもあります。いずれにせよ、魅力的な印象を与えることは間違いありません。
今まで意識してこなかったことについて、ほんの少しでも意識して、今までとは違う使い方をするだけで、様々な変化が起きるのです。
6. まとめ
今回は声の大きさをコントロールするために意識すべきポイントについてのレッスンでした。
なんとなく声を出したり使い分けたりするのではなくて、発声におけるカラダの役割分担をしっかりと理解して、必要な結果を手にするためには何をすればいいのかを考え、その通りにカラダを使う。
ただそれだけで声の大きさは簡単にコントロールできるようになります。
もちろん、得られるものはそれだけにはとどまりません。
あなたの印象や立ち振る舞いが変わり、新たな人間関係が生まれていきます。
いつしかあなたの知らないところやあなたのいないところで「○○さんって最近変わったよね」という話題が上がれば、新たな人脈やご縁を運んできてくれるでしょう。
「知り合いに○○さんのことを話したら是非会ってみたいって言ってる人がいるんだけど…」
そこから新たなビジネスチャンスが掴めたり、一生をともに歩んでいく素敵なパートナーに巡り会える可能性もあるわけです。
この変化を通じて得られるものは計り知れませんよ!!
さぁ、あなたも「なんとなく」で声を出すのをやめてみませんか?
お読みいただきありがとうございました。
ボイトレをさせないボイストレーナー/アレクサンダー・テクニーク指導者
ヨシ・トクガワ
https://koenotorisetsu.com/