無理して話しかけなくてもいいと聞いてとても楽になりました
どうも。ボイトレをさせないボイストレーナーのヨシ・トクガワです。
30代女性(Aさん)とのレッスンでのエピソードです。
私が大切にしていることやなぜ発声練習をしないのか?をお伝えした後、Aさんに「どんなシチュエーションでレッスンをしてみたいですか?」と質問したところ、この2つで気になることがあるとのこと。
・お店で注文する際、店員さんを呼んでも気づいてもらえない。
(一緒にいる友人が呼ぶとすぐに気づいてくれる)
・子供を幼稚園に送った後、同級生のお母さんに挨拶ができず後ろめたい
「どちらのシチュエーションを取り上げてレッスンをしましょうかね?」と話していると、もう1人の参加者(女性、Bさん)も「職場などで複数人が会話をしていると、話を遮るのが申し訳なくて挨拶できない」と近い状況で困っているとのことでした。
2人が困っていることが近い状況だったので「子供を幼稚園に送った後、同級生のお母さんに挨拶する」というシチュエーションでレッスンをすることに。
レッスンはこんな感じで進んでいきました。
1.いつも通りにしてもらう
Bさんとと私が世間話をしているそばで、Aさんがいつもやっているように幼稚園に子供を預けてから帰る、ということをやってみてもらいました。
実際にやってもらうと、Aさんは挨拶をせずにそのまま通り過ぎて行かれて窓際で顔を隠すようにしていました。
その時のAさんのカラダの使い方や表情ついて私はあることに気づきました。
2.どんな体験をしたか?
実際にいつも通りにやってみたとき、どんな体験や気づきがあったのかを思い出してもらいました。
するとAさんは「挨拶をしなきゃいけないと考えるとその場から早く去りたくなりました」と話してくれました。
なるほど。私がAさんのカラダの使い方や表情を見ていて、わずかな緊張があったことに気づいたのは、Aさんがその場から去りたいと思った瞬間だったわけです。
ちなみに、ここで言う【緊張】とは、一般的に使われている緊張とは違った意味合いです。一般的に緊張という言葉を使うとき、「今、とても緊張している」とか「人前に立つと緊張する」というような使い方をしますよね。
ここでいう緊張は、筋緊張によってカラダのどこかを固めるという意味です。
Aさんのある考えがカラダを固めて、その場から去りたくなる反応に繋がっていると私は考えました。
3.思い込みを手放す
そのある考えとは、Aさんが【挨拶をしなければいけない】と考えていることです。その考えがAさんの後ろめたさに繋がっていると予測しました。
そこで私はAさんにこんな風に伝えました。
「挨拶をしたければすればいいし、したくなければ挨拶せずに帰ってもいいんですよ。もしAさんが挨拶せずに帰りたいなら、そうしてください」
その時、Aさんの表情が大きく変化しました。何か凝り固まっていたものが解きほぐされていたかのように、とても柔らかく広がりのある表情になったのです。
「無理して話しかけなくてもいいと聞いてとても楽になりました」
私が先ほどのように伝えたのは【挨拶をしなくてはらない】という思い込みや固定観念を手放してもらいたかったからなのですが、その意図がAさんにうまく伝わったようです。
4.自分で選択する
「~しなければならない」という思い込みや固定観念を手放すことができれば、あとはご自分でそれを実践していただくだけ。それだけで確実に変化が訪れます。
このことをAさんがご自分で実践できることを体験してもらうために、もう一度同じシチュエーションをやってみることを提案しました。
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では、もう一度さっきと同じシチュエーションをやってみましょう。
もしAさんが挨拶したければしてもいいし、したくなければそのまま帰っても構いません。
どちらを選ぶかはAさんの自由ですし、どちらを選んでも正解です。
どちらでもいいので、選んだことを行動に移すときに私がお伝えしたカラダの使い方を意識した上で、Aさんが選んだことをやってみてください。
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※「カラダの使い方」についてどんなことをお伝えしたかはここでは割愛します
またBさんと私が世間話をしている横で、もう一度さっきと同じく「幼稚園に子供を預けて帰る」という状況を想定してAさんにやってみてもらいました。
「おはようございます」
すると今度は無言で去らずに、Aさんが一言挨拶をしてからその場を立ち去っていきました。
【子供を幼稚園に送った後、同級生のお母さんに挨拶ができず後ろめたい】と仰っていたAさんが、「おはようございます」と挨拶ができたことがとても大きな変化です。
5.レッスンを通じて伝えたかったこと
変化したと言っても、実際に幼稚園でもなければ、同級生の母親はそこにはいません。イメージトレーニングでしかないので、変化を認めない方もいるでしょう。
ところが、先ほどは挨拶せずに立ち去ったAさんにとって、自分から挨拶できたことはとてもとても大きな変化です。そしてそれを誰から強制されたわけでもなく、Aさんがご自分で選んだということに意味があります。
だから挨拶ができた、できなかったという結果は本当はどちらでもよくって、「Aさんがご自分で選ぶ」ことを実践してもらうことが私の狙いでした。
それができれば、次に幼稚園で同じシチュエーションがあったとしても、Aさんがご自分で選択できるようになるからです。
声関するコンプレックスや悩みを解決するためには、ノウハウやテクニックでは役に立ちません。
本当に大切なのは【今ご自分が置かれている状況や環境において何をするか?】を自分で考えて・選んで・実践すること。
それができれば確実に変化が訪れます。
それまでの行動プロセスが変わるわけですから、結果が変わるのは当たり前ですよね。
もちろん、やるかやらないかは本人の自由なので「やらない」という選択もいいと思います。ただし、コンプレックスや悩みの原因はずっと残り続けるわけですが(^_^;)
お読みいただきありがとうございました。
ボイトレをさせないボイストレーナー/アレクサンダー・テクニーク指導者
ヨシ・トクガワ
https://koenotorisetsu.com/