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実習指導の経験を振り返る

実習教育についての執筆をする機会をいただいたので、下書きにnoteを使ってみました。実習経験や実習指導の経験を通して、精神保健福祉士として意識してきたことや大切にしてきたことを書き出してみて、3200字以内にまとめるのですが、このnoteでは字数に拘らず3200字を超えて、また、イラストや過去に作ったスライド、参考にした過去の記事も入れてみます。



後進育成を大事に思うキッカケ

 学生の頃は、ソーシャルワーカー(以下、SW)を目指しておらず、実習経験もなくアルバイトばかりの学生だった。ご縁で就職した精神科病院にはSWの勤務歴がなく、入職後「今後必要になるから」と、上司の指示でSWとしての活動を始めた。部屋もデスクもなく、パソコンも書類も何もない0からのスタートで、病院のみならず地域初のSWになり戸惑っていた。先輩SWの教えを求めて峠を越え、更に峠を越えてスーパービジョンに通った。先輩方から、SW不在だった病院や地域で何から取り組めばいいかアドバイスをもらい、支えてくれた。葛藤している悩みを聞いてもらったことが有り難かった。答えを教えてくれる訳ではないが、努力を労ってくれたり、気付きを促すヒントをもらい、「こういうことか!」と腑に落ちるまで数年かかったり、少しずつでも成長していると思えた。
 違う職場であっても、向き合って支えてくれる先輩方の姿勢に影響をうけ、先輩方のようなSWになりたいと思わせてくれた経験があった。

「困っていた」「自信がない」がキッカケ

 初めて勤務した地元鹿児島の精神科病院では、200床以上をSW1人体制で担当していた。当時はSWが1人職場の病院が珍しくなかった。勤務した7年間で、一緒に働いてくれる後輩ができた。この頃の後輩指導は、戸惑いながらもただ一生懸命だった。その後転職し、法人内には先輩はいたが、400床以上でSW2人体制の病院で、後輩を採用して育成し、体制を変えなければという思いと同時に、「大変そうな病院に人材が来るのか」「採用できても育成できるか」自信はなかった。
 だからこそ、「魅力を感じて希望してくれる工夫」や、「育成する力をつけなければ状況は変わらない」と気持ちを切り替えることができたのも、支えてくれる先輩方の存在があったからと思う。丁度、国家資格化され実習指導を経験するタイミングに恵まれたが、実習経験もなく後輩育成の経験も少ないので、実習指導は全く自信がなく、不安が大きかった。

初めての実習指導経験

 先輩方と相談しながら、毎年複数名受け入れた。相談室という部署も部屋もない新人時代を経験した僕は、「相談室の確保」「SWを院内に認知させる」工夫など熱く話していたと思う。「当事者理解」「自己覚知」「SWの役割」を大きなテーマと考えながら、実習生が何を「感じ」「思い」「考え」るかに着目することを、先輩から学ばせてもらった。実習生の様々な場面、体験、発言、行動を、丁寧に振り返りしようとしても上手くできず、悩んだことも多かった。

 当時は4週間の実習期間で、1週目は閉鎖病棟、2週目は開放病棟、3〜4週目にデイケアや訪問看護、支援センター、相談室を経験してもらった。閉鎖病棟からのスタートに不安を言葉にする実習生が多かったが、「急に閉鎖病棟に入院させられる患者さんの気持ちや、環境の変化について考える機会になった。」という言葉が多かった。また、板張りの床、穴だけのトイレ、鉄格子の「保護室でしばらく過ごしてもいいですか?」と意欲的な実習生に頼もしさを感じた。
 数十年も病院から出たことない患者さんを前に感じる衝撃、様々な症状を目にした戸惑い、病歴や生活歴から知る病気の怖さ、悲しさ、苦しさ、虚しさ、寂しさ、様々な感情と向き合う機会も多かった。一緒に麻雀や将棋や花札をして穏やかな患者さんが、退院できない現実に対し何ができるのか、葛藤を言葉にしながら熱心に学ぶ実習生に、精神科病院の古い常識に慣れてしまっている自分に気づき、刺激をもらっていた。

考えるのは指導だけではなかった

 実習指導の機会を通して、考えるようになったことがいくつかあった。それは、「指導力アップ」「人材確保」「現場の活性化」「SWの認知度アップ」「実習生の意欲を刺激する」そんなことだった。特に当時は、現在より閉鎖的に感じることが多く、実習生が出入りすることで、院内の意識を変える機会にしたいと考えた。また、若手スタッフと実習生の交流が、実習生は近い将来のイメージできたり、若手スタッフは先輩としての自覚や成長意欲をもつキッカケになればと思っていた。
 実習プログラムや指導のあり方の改善点を考えることも多かった。日本精神保健福祉士協会の実習指導者養成プレ講習の案内を見て迷わず申し込み、鹿児島から東京まで自腹で行くほど熱意があった。全国から集まった実習指導者との交流に、皆悩みながら工夫している話に刺激を受け、正解はないことを再認識した。そして、病院実習が2週間になった時、感情を揺さぶられる経験を学びに変換するにはとても短く感じ、自身の指導力の未熟さを感じた。
 実習生に対しては、感情や主観を大事に言語化してほしいと思っていた。感情移入するくらいの経験をができて、冷静さや客観性の大事さを実感できたり、失敗や課題を感じることで、学びの多い実習になればと思っていた。患者さんのこれまでの人生を見つめて、これからの人生を一緒に悩み、感情にも寄り添い、共に感動できることを大事にしたいと思っていた。

新しい環境で意識したこと

 30代に神奈川県に転居し、新しく開設したばかりの精神科を有する病院で働くことになった。院内のあらゆる改善に他職種と協力し取り組みながら、人材不足の相談室だからこそ、これまでの経験を活かし実習受け入れを意識した。院内も相談室も課題が多く、「指導力アップ」「人材確保」「現場の活性化」「院内のSW認知度アップ」を図ろうと、入職2年後に実習受入れを始めた。はじめは1名から毎年増やし、多くの養成校から実習を受入れた。同僚や後輩の協力を得ながら、実習指導者も採用と並行して増やしていった。
 「実習」も「職場」も並行してより良くする。先輩も後輩も、指導者も実習生も、共に影響し合い成長する。お互いが「感じたこと」「思ったこと」「考えたこと」を言語化しやすい雰囲気づくりや、自分にないものを補い高め合える環境づくりを意識していた。

 「実習生の意欲を刺激する」工夫として、養成校の違う実習生を2人1組で同じ実習期間を過ごしてもらい、実習生がお互いを参考にしたり刺激し合い、気づきや行動化への相乗効果を促すように意識していた。

 実習報告会も可能な限り出席することも意識していた。他の実習先の実習内容を参考にしたり、他の実習指導者や養成校の先生方の様々な意見を参考にしたり、そして何よりも、実習を振り返りどんな学びになったのか、学生の発表はとても刺激になっていた。


実習受け入れから得られた効果

実習受け入れは難しい、忙しい、余裕がない、人材も不足してる。そんな現場に参考になればと、過去にまとめたスライドをせっかくなので残しておこうと思います。


「伝える難しさ」はトライ&エラーで学ぶ

 様々な養成校から、「現場の精神保健福祉士の現状、やりがい、必要と思う資質」などをテーマに授業で話す機会をいただいていた。都内、埼玉、神奈川の養成校や、通信のスクーリングなど、多くの養成校にお世話になり、学生さんに「伝える」機会が多かった。学生の心に引っかかる言葉、メッセージ、疑問、何か感じてほしいと思いながら「伝える難しさ」を毎回毎回感じていた。何か届いたのか、響いたのか、その時はわからない。
 毎回いろんな反省があった。長い説明よりもキーワードから想像を促したり、話し方の工夫、話しだけより視覚的工夫、文字だけより図や写真、印象に残る伝え方とは・・など、試行錯誤です。僕は話が上手くはないので、視覚的な工夫と組み合わせることで、若い世代は特に反応が明らかに違うことを感じていた。
 実習前の学年で病院見学に来てくれる学生たちに、写真や動画などを活用するようになった。現場のスタッフたちに動画制作を提案し、「何を伝えるのか」「どこに焦点を当てるのか」など議論する、そのプロセスも現場のSWたちが何を大事にしたいのか、何を伝えたいのか、学ばせてもらう機会になっていた。
 この時の経験は、コロナ禍のオンライン実習にとても役立った。


お互いに学び合うことが大切

 こうして実習指導の経験を振り返って改めて思うのは、実習指導の経験を通して、自分自身の成長にもなり得られたものが多かったということです。 
 「学生の言語化を促し、学生が話しながら整理できたり気づきを促そう」と思っていても、ついつい熱が入って喋りすぎている自分がいて、言葉と気持ちのキャッチボールを意識するようになった。「指導者は、間違わずしっかり見本を示さなければ」と思っていたが、 日々の業務に追われがちで、それを理由に日々感じる課題や苦手なことから目を逸らしたくなる自分がいることを伝えてもいいと思うようになった。職場にも自分にも誰にでも課題があり、大事なのは「課題に気づき、どう向き合い、どう行動するか」ということを、実習生の課題に一緒に向き合いながら、学ばせてもらっていたと思える。

 更に今後を思うと、時代の変化が早く、自分の経験してきた常識は通用しないことが増えている。実習生や若い世代に教えてもらうことから発見も多い。経験者として指導者として伝え指導する機会を通し、世代や立場に関係なくお互いに学び合う気持ちを大切に、これからも後進育成へ取り組んでいきたい。


2023年に書いた記事を参考に、改めて整理してみました。コロナ禍でのオンライン実習や実習に関する疑問や課題に感じていることは、今回盛り込まないことにしましたが、書き出していくと更に思い出されることが多く、たくさん削除して、今回はこのように書いてみました。でも、まだまだ整理した方がいいと感じました。

2023年の記事はこちら↓です。


最後まで読んでくださりありがとうございます。

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