中川ヨウ produce Tango & More (2022/08/27 東京・渋谷 JZ Brat)
前夜に続いて JZ Brat でのライブ。この日は音楽評論家・中川ヨウさんのプロデュースによる “Tango & More” と題されたライブでした。出演は青木菜穂子さん、北村聡さん、西嶋徹さん、藤本一馬さん。
非常に内容の濃いライブでした。揺るぎない力強さとしなやかさを持ったタンゴと & More に相当する数々の楽曲の豊かな広がりに、とても満たされた気分になりました。
タンゴに関してまず印象に残ったのが第1部2曲目に演奏された “Aquel agosto” (あの八月)。タンゴの定型を離れた自由な構成がとても魅力的でした。5曲目の「ルビー」はバンドネオンとコントラバスの二重奏。タンゴ界で今最も注目を浴びるコントラバス奏者の一人、フアン・パブロ・ナバーロの編曲で、西嶋さんが「思わず引いた」という難所続出の内容ながら、見事な演奏でした。この曲に限らず、西嶋さんのコントラバスはいわゆる「ベース」の重責を担いつつも、随所で弦セクション的な役割も果たしていたように思います。第2部3曲目に演奏されたスタンダードの歌のタンゴ「見知らぬ二人のように」は青木さんの編曲が冴え渡る快演。他にピアソラ作品やスタンダード曲も青木マジックな編曲と各人の卓越した演奏力で聴き応えがありました。
タンゴ以外については、アリエル・ラミレス、リリアン・サバら現代アルゼンチンフォルクローレの重要人物の作品、そしてメンバー各自の自作が演奏されました (北村さんの枠は自作ではなく上述の「ルビー」)。特にオリジナルは、アルゼンチンで実際に暮らした生活体験に根差した青木作品、カルロス・アギーレやシルビア・イリオンドといったアルゼンチンのミュージシャンへの共感と敬意に溢れた藤本作品、凛とした美しさと厳しさを感じさせる西嶋作品、と三者三様で、いずれも心に残るものでした。
Tango & More というテーマ設定とそれを具現化するミュージシャンのブッキング等、この日のライブは中川ヨウさんのプロデュースならではの内容だったと思います。ヨウさんご自身はこれが最後のタンゴライブのプロデュースとおっしゃっていますが、願わくばいつか心変わりして、また私達を楽しませつつタンゴ界に刺激を与えて頂きたいと思います。
最後にひとつ心残り。この日はアーティストカクテル飲み損ないました。Tangoholic 2 (タンゴ中毒2) という名前からして気になってたんだけど注文のタイミングを逃しちゃった。残念です。
中川ヨウ produce Tango & More
日時:2022年8月27日 18:00~
場所:東京・渋谷 JZ Brat Sound of Tokyo
プロデュース:中川ヨウ
出演者:
曲目:
【第1部】
Decarissimo デカリシモ (アストル・ピアソラ)
Aquel agosto あの八月 (エクトル・オルテガ)
Pájaros 小鳥たち (青木菜穂子)
The pledge of friendship ザ・プレッジ・オブ・フレンドシップ (藤本一馬)
Rubí ルビー (フアン・カルロス・コビアン、エンリケ・カディカモ) – バンドネオンとコントラバスの二重奏
El día que me quieras 想いの届く日 (カルロス・ガルデル、アルフレド・レ・ペラ)
Mumuki ムムキ (アストル・ピアソラ)
Nocturna ノクトゥルナ (フリアン・プラサ)
【第2部】
Zamba de usted あなたのサンバ (アリエル・ラミレス) – ピアノソロ
Tardes lejanas 遥かなる午後 (青木菜穂子)
Como dos extraños 見知らぬ二人のように (ペドロ・ラウレンス、ホセ・マリア・コントゥルシ)
El retratador エル・レトラタドール (西嶋徹)
Estrella del rio エストレージャ・デル・リオ (藤本一馬)
Alfonsina y el mar アルフォンシーナと海 (アリエル・ラミレス、フェリクス・ルナ)
Romance del diablo 悪魔のロマンス (アストル・ピアソラ)
Cantando bajito カンタンド・バヒート (リリアン・サバ)
【アンコール】
Por una cabeza 首の差で (カルロス・ガルデル、アルフレド・レ・ペラ)
ブログとの同時投稿です。
2023/01/19
Aquel agosto (あの八月) の作曲者名に誤りがあったので修正しました。
エクトル・ノチェッティ→エクトル・オルテガ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?