Music Ally Japanへいただいたご質問、全てお答えします。

Music Ally Japan チャンネル 第二弾「#02:音楽ストリーミング経済と、アーティスト・マーケティング」をご視聴いただきありがとうございました。時間の関係上、全てのご質問にお答えできなかったのですが、Music Allyさんより質問状をいただきましたので、ここで回答させていただきます。

Q. 現状の音楽サブスクが違法ダウンロードからの脱却を目指すことでサービス提供が可能になったように思えるのですが、今後の音楽エコシステムを考えた場合ユーザーセントリック方式など持続可能な方法を考える必要があると思われますか?

A. サブスク はすでに持続可能なシステムになっていると思います。ただ、あくまでも現時点で、という事になります。永遠に持続可能なものはない訳で、時代によってシステムは淘汰され、進化していくと思います。新たなものを生むには今あるものを誰よりも使い倒し、理解する事。そして常に疑問視する事。そういう意味で日本はこの分野で遅れをとっています。ユーザーも音楽関係者(アーティスト含む)もサブスクを使いきれていません。
まずは使い倒す事で、世界と並ぶ事が先決だと思います。
その先に改善点があれば自然と見えてくると思います。

Q. "IT業界の人間ですが、これから音楽ビジネスに関わっていきたいと考えている者です。
対馬さんに質問させてください。楽曲制作において、どのような関わり方をしていますか?
マーケティング、コンセプトづくり、企画面などに関わってビジネス観点で売れる音楽のアドバイスをしていたりするのでしょうか。

A. まずはアーティストから出てくるものを待ちますが、チームとして全員が関わる作品なのでスタッフ目線で思う事があれば伝えるようにしています。
あくまでそのアーティストの個性を尊重し、より良い部分を引き出すイメージです。
うちのアーティストはプロデューサーでもあるので全体を俯瞰で見て作れる人間が多いのですが、やはり物作りに第三者の目は必要だと思っています。(当然の話ですがアーティストは我々スタッフより音楽を作る能力が圧倒的に高いので、リスペクトする姿勢は常に持ちながら向き合う事が大事だと思っています)

Q. ストリーミングを延ばすために、今現状はTikTok→LINE MUSIC→その他DSPへの波及が大きいと思ってますが、TikTokでのバズを検知するような方法があればご指南いただきたいです。

A. 「TikTokでのバズを検知する」というのは「どのようにバスったかを探す方法が知りたい」という意味でしょうか?もしくは「どうやったらバズるか?」という事でしょうか?
前者であれば純粋にエゴサーチなどで検知する方法しか知りません。後者は、、、本当に難しいですね。
TikTokのようなトレンドが目まぐるしく変わっていくSNSは狙ってヒットを起こすのは困難だからこそ面白いとも言えるのではないでしょうか?
定番としてはビジュアル的にひきがあるもの、繰り返したくなる(真似したくなる)ような歌詞、笑いのあるものは強いですよね。それを生み出すのが難しい訳ですが・・・。(月並みな返答ですみません)

Q. 音楽業界に就職を希望しております。ストリーミングで再生回数を伸ばすために、プレイリストに掲載してもらうことが重要だと認識しているのですが、PlaylistPushなどのサービスはご利用されていますでしょうか?

A. PlaylistPush、submit hubなど大いに利用すべきだと思います。
ただ、ご存知の通りプレイリストはあくまでもキュレーターが気に入ってくれた事で入るものです。大事なのはその先、つまりリスナーの皆さんに刺さるかだと思います。
少なくてもいいので、熱量のあるファンを増やしていった方が長い目でみると全員ハッピーだと思います。たくさんのフォロワーがいる大型プレイリストに入ると、あっという間に世界中に自分たちの音楽を届ける事ができます。とても効率的ですが、そこからファンになってもらう導線も大事ですね。ライブやSNSでのコミュニケーションを欠かさずより興味を持っていただいたり、メディアにアプローチするなど複合的に活動し循環させていく事が重要だと思います。

Q. 業界未経験でレーベルに就職を希望しておりますが、ご縁がなく採用に繋がりません。今後はどういった能力が必要で、どういったアピールが必要でしょうか。

A. 他の業界と根本は同じだと思いますが強いて言うのであればめげない、諦めない、つまり継続力が大事だと思います。
すぐにヒットする事もありますが、基本時間がかかる事の方が多いので・・・。
一度浮上したように思えても必ず下り坂に遭遇します。それが長い道のりになる事も多いです。
いつか結果が見えてくると信じアーティストと二人三脚で継続する事が出来れば必ず結果は出ます。
人気商売なので正直シビアな世界ですが、焦らず鈍感力で乗り切る人が最後には勝つ業界かもしれません。

Q. 日本の音楽業界は伸びるという話でしたが、国内市場は人口的にも下がっていくと思います。
伸びると言える理由としては、グッズ販売、NOTEなど話にあった複数サービスでのマネタイズ方法が伸びるなるからでしょうか?

A. 日本のアーティストにとっての伸びしろは「海外マーケット」です。
おっしゃる通り日本の若者の人口は減っていきます。
韓国は何年も前にその問題に直面し世界へ向かい結果を出してきました。
アジア人は音楽シーンにおいてマイノリティでしたが、それが少しずつ変わってきました。
アーティストは日本だけでなく世界を見て音楽を作る事。そして日本の音楽関係者はそういったアーティストにきちんと時間とお金をかける事。
同時に一番近い日本のファンを大事にする事。
その両輪が今後の鍵だと思います。

Q. DSPで回りやすい曲は傾向をみるとあると思うのですが、そちらは意識して制作をされますか?または所属の方はプレイリストやピッチ相手を意識して曲作りをしますか?”

A. 基本はアーティストのパッションから出てくる音楽を大事にしています。
ただ、この曲のこの部分を少し変えたらプレイリスト(や、音楽ファンのみなさん)により気に入ってもらえるのでは?と思ったときはアーティストに伝えるようにしています。
そこがアーテイストにとってどこまで大事な部分かスタッフサイドは分からないので「譲れない」という事であれば無理して変更する必要はないと思ってます。
ただアーティスト的に「それもアリだね」と受け入れてくれるような内容であれば、そのヴァージョンも作ってもらい、みんなで並べて試聴会しながら決めたりします。
我々スタッフはアーティストにとって最も近い熱心なリスナー(ファン)でありコンサルタントだと思っています。


Q. 中間層でそこそこ活動できているインディペンデントアーティストが、いまメジャーレーベルに所属する意味やメリットは、どこにあると思われますか?

A. これは単純明快ですがより大きなヒットを作りたいと思えば確実にメジャーにいくべきだと思います。
自分の作りたい音を優先したい、好きな人に聞いてもらえればいい、と思えばインディでいいと思います。
ただし、これはあくまで国内マーケットでの話です。
上記の通りこれから海外へも積極的にアプローチすべきだと考えた時、メジャーかインディか、ではなく担当者次第だと思います。
海外に拠点があるメジャーに所属=海外展開もしてもらえるか?と考えると現状は難しいので、規模ではなく担当スタッフの知識、行動力、英語力などが結果として出てくると思います。


Q. 松島さんの記事など読んでいますが、日本のなかなか若いアーティストは自身でSNS発信をしたがらなかったりします(変に格好をつけて英語ばかりつかったり)。
OrigamiさんはアーティストとはSNSの動き方を会話されたりしていますか?

A. SNSの話は良くします。
ただし、スタッフの言葉よりも本人の言葉がダイレクトに伝わるのがSNSの醍醐味なので最終的にスタッフではなく自分自身の言葉を使って展開していけるアーティストが勝つ事になります。あくまでコンサルとしての助言はしますが、その意見をどのように利用してブレイクするかはアーティストそれぞれのセルフプロデュース能力にかかってくると思います。

Q. K-POPが海外では1つのジャンルとして認識されていると思いますがJ-POPが同じように海外で評価されるためには何が不足していて何が必要ですか?

A. 世界中の音楽ファンが好きだと思えるグルーヴ、メロディ、ジャンルなどを徹底的に理解する事。
その上で日本人ならではの個性をいかに出せるか、だと思います。
例えば、いくら運動能力が高くても、その国で流行っていないスポーツをやっていたら見てもらう機会はありません。(ニュージーランドではヨットが国技ですが我々日本人はレースのルールやトップ選手の名前を知りません。をそれと同じです。)
現状のJ-POPはヨット選手と野球選手のような状況で、同じルールで争えるものにはなっていないと思います。
もちろん世界の音楽トレンドやツボを完全に理解した上で、あえて外していく挑戦は大いにありだと思いますが、まずはルールに合わせ、その中で個性を出す事が必要だと思います。


Q. これから音楽業界に就職を考えている者です。今回の対談を踏まえると、デジタルマーケティング(SNS、WEB)の知識や重要性が高まると感じたのですが、就職の前にマーケティングの知識や実務経験を持っていた方がよいのでしょうか?

A. 必須ではありませんし実際にやりながら学べばいいと思います。
ただし、矛盾していますが今は誰でもデジタル上で色々なトライや研究が簡単にできる時代です。
プレイリスト作ってSNSを使いフォロワーを増やしてみる、とかyoutubeチャンネルを展開してみる、など誰でもできるのでどんどんやった人が勝つ時代かもしれません。

Q. お三方に質問させてください。日本でデジタルマーケティングに積極的に取り組んでいるとおもうレーベル、事務所、アーティストさんなど教えていただけますか?”

具体的なレーベル、という事ではありませんが、日本の音楽業界におけるデジタルマーケティングはここ最近、ついに動き始めたと実感しています。
上記の通り日本は正直遅れをとっている状況ですので牽制するよりも日本の音楽業界全体で情報をシェアしていきながら、他の国に追いつく事が急務だと思います。
そういう意味で今回のパネルディスカッション、カンファレンスは有意義だったと思いますし参加させていただいた自分自身も勉強になりました。

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