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医療系の勉強ちょっとやった人が見る実写版「はたらく細胞」

※この記事は映画「はたらく細胞」のネタバレを含みます。ご覧になっていない方はそのまま記事を閉じてください!









はたらく細胞といえば、2015年に原作の漫画が連載スタートし、
当時医療を学ぶ学生の間で必読書として話題となった漫画でした。
かくいう私も当時臨床検査(病院で血液検査とかエコー、心電図とかやりますよね、あのお仕事のことです)を学ぶ学科にいたので、1巻を買い、学友たちと「ああここはこうやって擬人化するのね!」と大いに盛り上がった記憶があります。

その後漫画自体は追ってませんでしたが、アニメは二期まで見て、家族に「ここはどういうこと?」と聞かれたら学生時代学んだことと照らし合わせながら解説したりしていました。

そんな折の実写映画化。
映像化に関しては信頼のおける監督さんだったのでなにも心配はありませんでしたが、内容だけどうなるんだろう?とワクワクしながら映画館に足を運びました。

まず最初は原作ダイジェストな感じ。
細菌たちの襲撃に白血球ら免疫細胞が駆けつけて退治していく……
細菌を演じる愛之助さんや真珠姐さんがこんなあっさりやられるのももったいないし、きっと別個体として何度かこの後も出るのでは?と思っていましたが、出ませんでしたね……

芦田愛菜ちゃん演じる高校生のニコちゃんで健康な体の「はたらく細胞」、阿部サダヲさん演じるお父さんで不摂生な中年の体の「はたらく細胞BLACK」両軸を展開する試みは面白かったです。
原作BLACKでは胃潰瘍の出血で同僚を失う展開でしたが、映画では中年オヤジの切れ痔で……なのがちょっと悲しかった(笑)
あと神経ニューロンのDJ KOOはなんだったんだ?セクシーサンバ隊は何????あそこだけ高熱の時に見る夢みたいで面白かったです。

そんなゆるゆる細胞ファンタジーが2時間続くのだとのんびり構えていた私に
衝撃の展開が襲いかかります。


宣伝を見たとき気になった、Fukaseさん演じる謎の男。
原作を読んだ人にはきっと正体がわかったでしょう。
原作でもインパクト大の敵キャラ、「がん細胞」。きっとこれが実写のラスボスなんだなと。

原作でも実写でも「健康な人でもがん細胞(というか増殖エラーを起こした細胞)は毎日5000個発生して、都度免疫細胞によって殺されている」とされているので、アニメで見たときと同じく自然免疫で押さえ込めるレベルで戦闘が済むんだろうなと思っていました。ま、高校生だからね!そんな大事にはならないでしょ!


中盤、白血球さんが目の下にほくろがある骨髄球くんと格闘演習をするシーンを見て愕然としました。

まずいぞ

この子ががん細胞になるの?

まずくない???



作中でも解説がありますが

白血球系の細胞ががん化して病気になると即ち


白血病

と呼ばれます。



感心したのは、骨髄球くんが子供なままがん細胞として覚醒したところ。
急性骨髄性白血病は、顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)になる前の未熟な細胞が異常に増殖して正常な血球を作れなくなる病気です。
それを成熟好中球の先生が指摘したところで「ちゃんとしてるな~」と思いました。
覚醒し大人みたいな見た目になっても精神は子供っぽい悪役にFukaseさんの怪演がハマりすぎている。

そんなこんなで血小板も減り、免疫力も落ち、倒れるニコちゃん。

ここから人間パートがしばらく続きます。
体の中にいる細胞はどうなっちゃうの?と思ったけど、人間パートが続いてよかったかも。というのも……

1.とりあえず輸血しよう……

ここでお父さんが献血をして、お父さんの体内の赤血球くんがニコちゃんの体内に派遣され二つの物語が合流します。
輸血組が合流したときにはもうわりとニコ陣営は壊滅状態……。
よかった、人間パートが多くて……体内舞台だと徐々に血球が減っていき崩壊していく様を見てるのはキツイだろうから……

このへんのシーンはがん細胞回と出血性ショック回がベースになっている感じはありますが、あれは外傷(事故でもしたのかな?)によるものだったので、止血と輸血により一命を取り留めていた記憶があります。
でも今回は急性骨髄性白血病。
ここから事態はどんどん悪化していきます。

2.化学療法

身体中に「抗がん剤」と名のついたミサイルが飛んで町を燃やし尽くす。
擬人化するとかなりインパクトがありショッキングに見えますね。抗がん剤だとどうしても正常な組織も害してしまうので……
でもそんなことより私は医師のセリフに絶望しました。

「骨髄移植」

そこまでやるか……

ん?骨髄移植っていうと……

いやいやそんなまさか

え?!?!

NKさん?!?!

キラーTさん?!?!


まさか主要キャラが退場するとは……

ここから白血球さんだけで大丈夫……?


嫌な予感は当たるもので


3.放射線治療

骨髄球の白血病はそのまま、造血組織にいる未熟な細胞が悪さをしている病気なので
健康な骨髄にまるまる取っ替えてやろう!というのが骨髄移植なのですが、
移植された骨髄の免疫細胞は移植された先の細胞を異物と認識して攻撃してしまう。元の体の免疫細胞とかち合ったらお互いに攻撃しあって目も当てられない。
ならどうするか?

元の免疫細胞をなくしてしまうしかない。

放射線照射を表すオーロラのような光で血球細胞たちが消し飛ぶ描写は、わかっていてもかなりショッキングでした。

それでもその光から逃れて、おびただしい数の仲間たちの残骸が散らばる荒野を駆け、白血球さんは敵と戦うことをやめず、赤血球はまだ生きてる細胞に酸素を運ぶのをやめない。

滅び行く世界でも、自分の仕事を全うする「はたらく細胞」たちにただ圧倒されるばかりでした。

白血病細胞に白血球さんが投げ掛けた
「俺たちは、お前を生かしてやることも、直してやることもできない」

擬人化しているので、がん細胞でもなんとかなったのではないか?と思ってしまいそうになりますが、一介の好中球に過ぎない彼にはそれができない。
赤血球は酸素と二酸化炭素の交換に特化しているし、好中球だって異物への攻撃しかできないし、キラーTはヘルパーTの司令がないと動けないようになってるし、血小板は傷口の修復しかできない。
一つ一つ役割の違う細胞が各々の役割に準じて働いて、人間というひとつの生き物の生命活動を維持している。その働きを研究して、病気や怪我のときに「人間の生命活動を維持するため」外からアプローチするのが医療なのだと私は思いました。
最終的に人間が生きていればいい。
ミクロの世界ではえらいことになっていたとしても。


正直、病理学や血液学を学ぶときに「漫画連載ではここまでできないだろうな~w」って思っていた展開をやられて唖然としました。
だって白血病なんてやったら、血球細胞がメインのこの話だと惨劇になるのが目に見えてるから。
原作とは違う人間だから、主要メンバーも原作とは違う個体なんだろうと解釈はでき、しかも単発の話だからこその強みですよね。

崩れ行く教会で目を閉じる佐藤健……
なおも荒野を行く永野芽郁そしてホワイトアウト……

感情が追い付かない中、荒れ果てた大地を無邪気に走る金髪幼児(移植された造血幹細胞)があまりにもベタすぎたのは置いておいて、
新しい骨髄が定着して回復したニコちゃんにお礼を言われた医師が
「お礼は自分の体に言ってあげてください」と笑顔で返すシーンで
そりゃ……細胞たち頑張ったけどさ……
とやるせない気持ちに。

ニコちゃんの体では、新しい骨髄から生まれた血球細胞たちが変わらず元気に働いている。そうしてニコちゃんの体の生命活動を維持している。……という所で二代目白血球さんが人斬り抜刀斎だったのでじわった ここの骨髄は刀使うんだ……

なんというか、予想よりハードな映画になっててびっくりしました。
でも病気と戦うって、ミクロの世界だとこうだよなぁと改めて考えさせられました。

みんなも健康第一で!体のSOSに早く気づくためにも健診ちゃんとしような!!
いまこうしている間も約37兆個の細胞は働いているぞ!!!

終わり

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