見出し画像

Vol.4 アタックの起点!スクラムハーフに求められるキック

スクラムハーフ(以下、SH)のキックは、近年ますます重要なスキルの一つとなっています。特に負けが許されない国際試合では、キックの頻度が最も高く、各チームの戦術の中心に必ずSHのキックが組み込まれています。

  • 早くパスを捌ける

  • ゲームコントロールができる

  • DFに掴まらない素早さ

  • 動き続けられるスタミナ

以前のSHに求められる標準的なスキルはこのようなものでしたが、近年では、これらに加えて多様なキックスキルが必須となっています。今回は、いくつかのプレー映像を見ながら、現代ラグビーにおけるSHのキックスキルについて紹介していきます。


1.蹴れるSHが求められている

相手陣に入ってフェーズプレーを重ねていく中で、バックスペースに転がすキックでテリトリーを獲得。トップスピンでタッチラインに転がっていくような軌道で蹴っています。ラックに入る前にスペースを見つけ出し、ボールを拾う時にはすでにキックの決断をしているのが分かります。左足のキッカーが右サイドコーナーに蹴るのはかなり難しいスキルですが、小さなモーションで的確にコントロールしているのは練習の賜物ですね。

2.ボックスキックの目的は再獲得

  • 空中でボールをキャッチする

  • 空中で競り合ったルーズボールを拾う

  • 相手のレシーバーにプレッシャーをかけてタックルとブレイクダウンでボールを奪う

一度キックで手放したボールを再獲得するのがボックスキックの最大の目的です。SHのキックは、「飛距離 25m/滞空時間4秒」前後が一般的な基準で、チェイサー(ラビット)との連動、そしてハイボールキャッチのスキルが必須です。高校生以上の試合ではかなり一般的なアタック戦術になり、ローリスクで効率良く前にボールを運ぶことができます。

ディフェンスの進化が著しいテストマッチレベルでは、SHボックスキックの応酬になることも多いです。少ないフェーズでボックスキックを蹴り込み、相手陣で再獲得を狙うボックスキックが最もリスクが低く、失点につながりにくいからです。

3.ボールの回転を工夫しよう

先日、リーグワンのある選手(SH)とボックスキックの回転について話しましたが「飛距離と滞空時間をコントロールするだけでは、相手にクリーンキャッチされてしまい再獲得にはつながらない」というのがトップレベルの現状です。そこで多くのキッカーが工夫しているのがボールの回転。基本となるバックスピンだけでなく、サイドスピンやトップスピン、無回転キックを駆使して、相手のキャッチングエラーを誘うようなプレーが見られるようになりました。

空中コンテストやブレイクダウンコンテストで再獲得を狙うだけでなく、ボールに不規則な回転をかけて相手のキャッチミスを誘うプレーです。このようなキックができれば、相手のレシーバーは落下点を読むことができず、キャッチングのの精度が著しく下がり、再獲得という目的につながるのです。

4.ロングキックもSHから

日本のラグビーでは、長いキックを蹴れる選手は圧倒的にスタンドオフ(以下、SO)に起用される傾向があります。そのため、SOのロングキックでテリトリーを獲得する戦術が主流です。しかし、世界レベルの試合ではSHのキックがより重要視され、ブレイクダウンからボールを下げることなく、一つのキックで相手陣深くまで侵入できれば、テリトリー獲得において大きなアドバンテージを得られます。現在のリーグワンや代表クラスでも、ラックからワンステップで50m超のテリトリーキックを蹴れるSHはごくわずかです。このようなところにSHのキックの伸びしろがあると考えています。

5.前にパスできる唯一の手段

昔も今も、ほとんどのアタックはSHのパスアウトから始まります。SHは最もボールに触れる機会が多く、攻撃の起点となる存在です。手を使うパススキルはもちろん、足を使って ① 前に/② 遠くに/③ 速く/ボールを運べる「キックパス」ができれば、アタックのバリエーションはさらに広がります。

6.まとめ

近年、SHに求められる役割やスキルはますます増えています。最も多くボールに触れ、すべてのアタックの中心となるSHだからこそ、パスと同様にキックスキルの高い選手が活躍するのは言うまでもありません。
また、SHは他のポジションと違い、前を向いてプレーする機会が極めて少ないのも特徴です。密集近辺のディフェンスをどうかわし、効果的なキックを蹴れるかが、活躍の鍵となります。


参考になったという方は、このnoteのリンクをスクラムハーフの選手に送りつけてください。笑


いいなと思ったら応援しよう!