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Vol.4 アタックの起点!スクラムハーフに求められるキック
スクラムハーフ(以下、SH)のキックは、近年ますます重要なスキルの一つとなっています。特に負けが許されない国際試合では、キックの頻度が最も高く、各チームの戦術の中心に必ずSHのキックが組み込まれています。
早くパスを捌ける
ゲームコントロールができる
DFに掴まらない素早さ
動き続けられるスタミナ
以前のSHに求められる標準的なスキルはこのようなものでしたが、近年では、これらに加えて多様なキックスキルが必須となっています。今回は、いくつかのプレー映像を見ながら、現代ラグビーにおけるSHのキックスキルについて紹介していきます。
1.蹴れるSHが求められている
Inch perfect from Lucas Friday 😍 pic.twitter.com/9U8YlLTzWR
— England Rugby (@EnglandRugby) January 30, 2025
相手陣に入ってフェーズプレーを重ねていく中で、バックスペースに転がすキックでテリトリーを獲得。トップスピンでタッチラインに転がっていくような軌道で蹴っています。ラックに入る前にスペースを見つけ出し、ボールを拾う時にはすでにキックの決断をしているのが分かります。左足のキッカーが右サイドコーナーに蹴るのはかなり難しいスキルですが、小さなモーションで的確にコントロールしているのは練習の賜物ですね。
▼SHからのテリトリーキック
— Japan Elite Kicking 🇯🇵 #JEK (@JekOfficial) January 17, 2024
左利きは左コーナー、右利きは右コーナー(レベルが上がればもちろん両サイド)へのキックが基本。注目はSH髙橋選手の目線。全てのフェーズでバックスペースをチェックしていて、すぐに蹴り込める準備をしている。 #JEK @RICOH_BlackRams pic.twitter.com/pdTSnitGOd
2.ボックスキックの目的は再獲得
正確なボックスキックとハイボールキャッチで一気にトライまで! #JEK pic.twitter.com/9HJTosrzKE
— Japan Elite Kicking 🇯🇵 #JEK (@JekOfficial) September 3, 2022
空中でボールをキャッチする
空中で競り合ったルーズボールを拾う
相手のレシーバーにプレッシャーをかけてタックルとブレイクダウンでボールを奪う
一度キックで手放したボールを再獲得するのがボックスキックの最大の目的です。SHのキックは、「飛距離 25m/滞空時間4秒」前後が一般的な基準で、チェイサー(ラビット)との連動、そしてハイボールキャッチのスキルが必須です。高校生以上の試合ではかなり一般的なアタック戦術になり、ローリスクで効率良く前にボールを運ぶことができます。
SHボックスキックの応酬。どちらのキックも「距離25m/滞空時間4秒」前後のスポットに落とせているので空中コンテストもしくはブレイクダウンコンテストが起きる。 #JEK pic.twitter.com/pWFVvefsvM
— Japan Elite Kicking 🇯🇵 #JEK (@JekOfficial) November 11, 2024
ディフェンスの進化が著しいテストマッチレベルでは、SHボックスキックの応酬になることも多いです。少ないフェーズでボックスキックを蹴り込み、相手陣で再獲得を狙うボックスキックが最もリスクが低く、失点につながりにくいからです。
3.ボールの回転を工夫しよう
SHからのボックスキックは、ただのバックスピン以外にも横回転のキックや無回転キックなど、様々な球種で蹴るキッカーが出てきた。空中コンテストを狙うというよりは、上空でボールを変化させて、相手のミスを誘発させるのが目的。進化がすごい。 #JEK pic.twitter.com/SaWLdDuUvV
— Japan Elite Kicking 🇯🇵 #JEK (@JekOfficial) September 17, 2023
先日、リーグワンのある選手(SH)とボックスキックの回転について話しましたが「飛距離と滞空時間をコントロールするだけでは、相手にクリーンキャッチされてしまい再獲得にはつながらない」というのがトップレベルの現状です。そこで多くのキッカーが工夫しているのがボールの回転。基本となるバックスピンだけでなく、サイドスピンやトップスピン、無回転キックを駆使して、相手のキャッチングエラーを誘うようなプレーが見られるようになりました。
高いレベルのSHボックスキックはこの角度でボールに当てるのが主流に。サイドスピンが掛かって味方は再獲得しやすく、相手は処理しにくい回転に。 #JEK pic.twitter.com/TEVXkpOBui
— Japan Elite Kicking 🇯🇵 #JEK (@JekOfficial) November 10, 2024
SHからのボックスキック。オーバーヘッドでボールを蹴り上げることで、トップスピンに近い形でボールが加速しながら落ちてくる。キャッチする側は落下点すら読むことができない。 #JEK pic.twitter.com/ubtt9UU5Lc
— Japan Elite Kicking 🇯🇵 #JEK (@JekOfficial) September 8, 2024
空中コンテストやブレイクダウンコンテストで再獲得を狙うだけでなく、ボールに不規則な回転をかけて相手のキャッチミスを誘うプレーです。このようなキックができれば、相手のレシーバーは落下点を読むことができず、キャッチングのの精度が著しく下がり、再獲得という目的につながるのです。
4.ロングキックもSHから
9からのボックスキックはハイパントだけではなくテリトリーキックとして使うチームも増えてきています。距離が出れば50-22のチャンスもあります。#JEK pic.twitter.com/IIRr9A9lZq
— Japan Elite Kicking 🇯🇵 #JEK (@JekOfficial) July 9, 2022
日本のラグビーでは、長いキックを蹴れる選手は圧倒的にスタンドオフ(以下、SO)に起用される傾向があります。そのため、SOのロングキックでテリトリーを獲得する戦術が主流です。しかし、世界レベルの試合ではSHのキックがより重要視され、ブレイクダウンからボールを下げることなく、一つのキックで相手陣深くまで侵入できれば、テリトリー獲得において大きなアドバンテージを得られます。現在のリーグワンや代表クラスでも、ラックからワンステップで50m超のテリトリーキックを蹴れるSHはごくわずかです。このようなところにSHのキックの伸びしろがあると考えています。
これはすごい!フィールド中央から左足でコーナーへ50-22キック成功。両足で精度の高いキックができるのは何よりも強い武器! #JEK @Dupont9A
— Japan Elite Kicking 🇯🇵 #JEK (@JekOfficial) March 12, 2023
pic.twitter.com/uiD5NR5dKV
5.前にパスできる唯一の手段
最もボールタッチの多いスクラムハーフから蹴れるのは、効率がいい。ただ、最もプレッシャーがかかるポジションでもあるので、スキルがなければ失敗に終わることも多い。パスが上手いだけではなく、キックも自在に操れるSHは価値が高い。 #JEK @andrewfrugby
— Japan Elite Kicking 🇯🇵 #JEK (@JekOfficial) June 9, 2024
pic.twitter.com/Du9GWA6W0K
昔も今も、ほとんどのアタックはSHのパスアウトから始まります。SHは最もボールに触れる機会が多く、攻撃の起点となる存在です。手を使うパススキルはもちろん、足を使って ① 前に/② 遠くに/③ 速く/ボールを運べる「キックパス」ができれば、アタックのバリエーションはさらに広がります。
SHからのキックパスがインゴールへ。誰もがタッチラインを割ると思った瞬間、弾んだバウンドを空中でキャッチしてグラウンディング!あきらめずにチェイスする重要性。 #JEK pic.twitter.com/mCDKvjmOn5
— Japan Elite Kicking 🇯🇵 #JEK (@JekOfficial) September 3, 2023
6.まとめ
近年、SHに求められる役割やスキルはますます増えています。最も多くボールに触れ、すべてのアタックの中心となるSHだからこそ、パスと同様にキックスキルの高い選手が活躍するのは言うまでもありません。
また、SHは他のポジションと違い、前を向いてプレーする機会が極めて少ないのも特徴です。密集近辺のディフェンスをどうかわし、効果的なキックを蹴れるかが、活躍の鍵となります。
参考になったという方は、このnoteのリンクをスクラムハーフの選手に送りつけてください。笑