パナソニックによるブルーヨンダー買収のねらい
パナソニックが米ソフト大手のブルーヨンダーを完全買収します。これまでの出資額20%から100%に一気に引き上げます。
よくある大手製造業のソフトウェア転換なのか
市場の評価なども含め、ニュース記事ではソフト転換が語られていますね。それがそれほど好感されず評価を落としている面もあるようです。
ちなみに日本マイクロソフトから樋口氏を代表として招いたのが2017年、翌年の2018年にはヤフーや日本IBMなどでマーケ職を歴任した山口氏が、さらに2019年には米アップルやGoogle NestでCTOを務めた松岡氏がフェローとして参画。これだけの人員を揃えてソフトに傾かない方が不自然というものです。
役員クラスを外部からハイアリングしている点では、富士通にも通じるところがありますが、パナソニックの方はこれまで小動きだった気がします。ここへ来て一気にギアを上げるでしょうか。
ソフトウェア化の先にある本当のねらい
同社のリリースや発信記事を見るに、サプライチェーン(SCM)の強化・自律化にテコ入れすると述べています。ブルーヨンダーはソフトウェアの中でもAIで需要予測などに強みを持つ点が評価されています。
同社が本気でねらっているのは、脱製造業してソフトウェア業に進むことではなく、サービスイノベーション分野への進出ではないかと見ています。
ねらいはサービスイノベーション分野
この分野で有名な事例がロールスロイス、ええ、あの高級車の会社です。といっても注目すべきはクルマではなくジャンボジェットです。最近はご時世もあってすっかり空港が遠のいてしまいましたが、飛行機に乗った際に主翼に搭載されているジェットエンジンを見ると、ロールスロイスのロゴがついています(ちなみにGEのロゴがついていることもある)。
彼らはジャンボジェットのジェットエンジンの製造をしていますが、あるときから「ジェットエンジンの販売」をやめます。代わりに提供することにしたのは、メンテナンスやエンジンの交換などすべてを含めた「ジェット機の推進力」。
これぞ「サブスク」といった感じです。どでかいジェット機の肝であるエンジンをメンテ込みで安定的に提供してもらえるのは、フライトサービスを提供するJALやANAからすればメリットは非常に大きいでしょう。
対するロールスロイスの方も、メンテナンスなどの売上チャネルが増えるだけでなく、納品したエンジンの稼働データをすべて入手することができます。故障予測はもちろん、稼働予測などもできるでしょう。メンテナンス計画にとどまらず、次期機の開発や提案にも使えそうです。
双方にとってメリットの大きい、まさにWin-Winな構図です。
パナソニックの今後
現在までのところ、ご時世もあってか樋口社長就任の以降で目立って業績が上向いたとか、利益率が向上したということもなさそうです。今後、売上の4割を占めるB2Cを維持するか、それとも市場が予測するB2Bに傾倒していくのか、ブルーヨンダー社の買収により動きはこれから大きくなるはずです。
市場開拓も、その中でのサービス展開も、これから楽しみです。