上司の生体認証
お盆の時期だから、というわけではないけれど、なんだかずっと心に残ってる、
でも本当にほんのちょっとした話です。
1年前にこの日記に書いた亡くなった元職場の上司が、ちょうど亡くなって四十九日くらい経ったころに夢に出てきた。
私はホテルかどこかの、いわゆる「ちょっとしたパーティー」に出席していた。
いかにも夢らしく、そこには友達もいれば芸能人もいるような立食パーティー。
私はその亡くなった元上司と同じテーブルにいた。
特別な感じもなく、よく見知ったいつものグレーのスーツを着て、お酒を片手に私に向き合っていた。
冗談が大好きな上司だった。
よく高田純次の真似をしていた。
お酒とたばこも大好きな人だった。
目の前の人が既にこの世にはいないことを夢の中でも私は理解していたのでとても驚いたけれど、あ、まだこの人は生きているんだっけ、と勘違いするほどに自然で、私が退職して以来、久々に会えたことを嬉しく思った。
私が「(上司)さん!?(上司)さんですか!?本当に!?ほんものですか!?」と興奮気味に尋ねると、彼はこう答えた。
「吉ちゃん久しぶり。そうだよ、俺だよ。なんなら生体認証で証明してみせようか?生体認証…あ、俺もう生きてないんだった(笑)」
これだけ聞くとブラックジョークだけど、私にはおかしくておかしくて、なんだか大笑いしてしまった。「私の知ってるいつもの上司だ」と安心した。生体認証しなくてもわかる、彼はほんものだった。
上司も一緒に笑っていた。
そう、冗談が大好きな上司だった。
よく高田純次の真似をしていた。
お酒とたばこも大好きな人だった。
でも実はとても仕事ができる優しくかっこいい人で、ことあるごとに私のことを気にかけて「吉ちゃん、吉ちゃん」と呼んでくれた。
直属の上司ではないけれど、とてもとても好きな上司だった。
なんとなくだけど、そうしてお別れを改めて言いに来てくれた気がする。
なんとも上司らしい最後の挨拶だな、とクスッとしてしまう朝だった。
その夢を1年経った今でもふとしたときに何度も思い出す。
こんな笑い話も元上司との思い出のひとつとして改めて文章にしておこうといざ書いてみたら、急に涙が止まらなくなってしまった。
おかしいな、お通夜のときは全く泣けなかったのに。
生体認証じゃなくてもいいから、今年も会いに来てくれないかなあ。