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2024年第3回IBDP日本語A SSST準備講座〜日本語の分析・表現の練習②[424]

 6月のIBDP日本語A準備講座の報告をさせていただきます。基本的には6月は2回と決めて、ブックリストの完成と日本語で書くエッセイのチェックをしました。生徒はみんな日本語に触れた環境が非常に多様なので、それぞれ書いてもらったエッセイを一緒に見て、これからどんなことを意識してトレーニングをすべきなのかを考えてきました。一応、6月のレッスン目標はここまでなのですが、もう少し時間をかけて日本語でエッセイを書くトレーニングをしたいという気持ちを持ってくれた生徒が数名おりましたので、3回目以降のレッスンも提供することにしました。今日は3回目のレッスン記録をいたします。
 受講生全員が原則対象となっている2回目までのレッスン内容については以下の記事から確認していただけます。

中井久夫「きのこの匂い」の再分析

 前回の授業では、1回目の課題「きのこの匂い」について分析しました。読むにはかなり難解な文章であることを事前に生徒たちに伝えつつ、内容が読みづらい文章に対するアプローチの仕方や、実際に自分一人で分析をした時に何が足りなかったのかを確認します。できれば、その授業を受け理解が深まった状態でもう一度分析文を書いてみることに挑戦してもらいたいと思っていたので、3回目を受講した生徒には分析文をもう一度書き直してもらって、最初に書いた文とどれぐらい何が異なるのかを言葉にして話してもらいました。

 2回目の執筆をして振り返りをした際に、生徒たちからのコメントでは「最初、一人で読んだ時に分からないと思っていたところが理解できると、文章全体で筆者が伝えたいことがはっきりとわかったので書きやすくなった」「自分がよく理解できていないまま文章にすると、やはりそこを先生から問われることがわかった。もっと理解度を深められるようにしたい」などがあり、前回よりも生徒たちの認識が深くなったことがわかりました。
 さらに、今回生徒たちは自分の意思で「書き直す」という選択をしてくれたので、かなり日本語の文章も上達したように感じます。やはり、自分の意思決定に基づいて学ぶことはとても大切だということもわかりました。最後に私が用意した模範解答と解説をして、真似られそうなところや自分自身の今後の分析方法をどう改善していくのかを話してもらいました。

 ちなみに、この文章では宗教的な前提を理解していると読み解きやすくなるところが一部あります。今回は、この前提を事前に予備知識として準備することが難しいとしても、時代や宗教など背景知識があることで、その文学作品の読み取りに役立つことが伝わったようでした。私はもともと社会科の教員でもあるので、そういった部分も一般的な教養として、深入りしない程度に生徒たちに共有していきたいと思います。そうすることで、他の科目においてもつながりが生まれ良い効果が得られることが期待できます。

日本語表現演習「世界の共通言語は変わると思いますか?」

 日本語で考え表現する演習として、「世界の共通言語」に関する記事を読んで、考えたことを話してもらいました。ここでは、自分の考えを日本語で表現し、講師とのディスカッションの中で考えを広げたり、単純に話すことを楽しむのが目的です。DPの勉強だけに的を絞るのではなく、リラックスして日本語で交流することも授業の中では大切にしています。

 記事の内容は、アラビア語を話す人の割合が増えているという以外にも、世界でどれぐらいの人がどんな言語を話すのか、現在のデータやこれまでの変化などにも目を通し、「共通語とされる英語の役割」がどのようなものなのかについて改めて考えていきました。
 そこでは「これからも共通語としての英語は残るのかどうか」という話に収まることなく、「世界中に存在する言語の価値は、住む地域によってその状況や需要は大きく異なる」という、英語にとらわれない言語の世界を広く捉える必要があるという意見が多くありました。
 インターナショナルな環境で育つ生徒たちは、さすが!と私が思わず感心するような考えや意見が多く、日常的に言語や文化の多様性を身をもって学んでいるため、言語に対する捉え方も非常に広いと感じました。一方で、同じテーマを日本にいる高校生に、大学受験の小論文のテーマとして出したことがあったのですが、日本でしか生活したことがなかったり、そもそも外国の文化や言語が身近にない生徒にこのテーマを提示すると、自分には身近には感じられなかったようで、根拠がはっきりとしないまま「これからはアラビア語が共通語になると思う」だったり「英語はこれまでも共通語だったからこれからもそうだと思う」というような意見ぐらいしか出てこなかったので、生活環境の違いで思考の広さにも影響が出てくるということがわかりました。これはバイリンガル教育についてまとめられた中島和子さんの著書にも記されていました。

次回の課題:石原吉郎「葬式列車」

 1つ目の課題が終了したところで、引き続き4回目の講座の希望も出ましたので次の課題である石原吉郎さんの「葬式列車」の分析に入ります。今回は詩の形式の文学的文章を分析します。これも難解な文章であることを事前に伝え、作品の主題や文章に見られる表現の特徴などを分析していきます。まずは、何も情報が得られていない状態でどれぐらい自力で読み取れるのか、理解するのが難しいと思ったところなどを明確にしておくことを次回までの課題として設定しました。

 今回は分析文を書くのではなく、詩を読んで分析するところまでを課題にしています。次の授業で、生徒が分析したことや疑問に思ったことを発表してもらい、そこから解説に進んでいきます。課題を終えるごとに、自分の理解が足りなかったところ、前回と比べてうまくできたところを明確にしながら授業を進めていきます。

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