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 こちらの記事では、平成31年度に「高校1年生の担任」をした時の取り組みについて書き留めておきたいと思います。

 私がかつて勤務していた学校は、ほとんどの生徒が4年生大学に進学し、部活動や学校行事も盛んです。多くの生徒が国公立大学や難関とされる私立大学に進学します。そんな学校なので、生活指導よりは進路指導の方が忙しいというイメージの学校です。

 それ以前の勤務校に比べて、授業中の妨害や対教師暴言、生徒同士の喧嘩、喫煙などの事案が会議の議題になることはほとんどありません。

 そんな大学進学への意識の高い高校なのですが、とにかく行事が盛り沢山です。教員はそれぞれ所属している分掌の業務を抱え、さらに部活動の仕事もこなしながら、授業準備やクラス運営、授業以外での生徒対応をしなければなりません。
 また、職員会議の内容は、授業や子どもたちのことを話す時間というよりは、あふれている業務の事務的な連絡をしているだけの時間という印象です。

 平成31年度から、教員としては2回目の「1年生の担任」になることが決まりました。高校生の場合、担任とはいっても普段の子どもたちとの関わる時間は限られています。自分が担当している授業と週1回のロングホームルーム、放課後の終礼程度(この学校では朝礼はありませんでした)で、関わりが持てているという実感はあまりありません。

 私個人としては、クラスの子どもたちや他のクラス、他学年の子どもたちが日頃どんな風に学んでいるのかを見たいと思っていたので、空いている時間は、よく校内をうろうろとしていました。関わりが少ないとは言っても、行事などを通して自分のクラスの子どもたちと接する機会が一番多いので、この1年間は楽しく充実した年にして欲しいと思い、これから求められる「21世紀型スキルの涵養」を今の学校現場でどれぐらい実践できるのかを試してみようと思いました。

情報処理力と情報編集力

 入学式の日に、藤原和博氏の「ジグソーパズル型(情報処理力)学力」「レゴ型(情報編集力)学力」に関する内容のプリントを配布し説明しました。

「みんな新しい環境で、期待と不安が入り混じったような不思議な気持ちだと思います。これからの高校生活を送る上で、みんなに覚えておいて欲しいことがあります。それは、この高校生活で、勉強も部活動も学校行事も、どれだけ自分の意志でどんなことをやってきたのか、これを積み重ねる3年間にしてほしいということです。高校での勉強は大きく変わります。みんなが受けてきたこれまでの勉強は、ほとんど答えが決まっている勉強をしてきました。ひょっとしたら、高校の授業でも、中学までと同じように、答えが決まっている授業もたくさんあるかも知れません。時にはそれが必要な時もあります。しかし、これからは大学入試が大きく変わります。どのように変わるのかはまだはっきりとはしていませんが、少なくともここで言えることは、自分が興味を持ったことをどれだけ追究できたのか、が問われることだと思います。これは、大学入試だけで求められていることではなく、これから社会に出た時に必要な力の1つなのです。これは1つのことだけやれば良いというものではありません。社会に出れば、英語とか化学みたいに科目で分けられて考えることはほとんどありません。環境や貧困などの問題について考えようと思えば、まずは何が問題なのか、その背景にはどんな状況があるのかなどを考えていかなくてはなりません。それを知るために英語、歴史、評論文(文章を正確に読む力)、科学的な知識が合わせて必要になります。実は、自分の興味のあることについて調べようと思うと、科目を超えていろんなことを勉強しないといけないことに気づきます。大学に入ろうと思えば大学入試を突破しないといけないことは間違いありませんが、大学入試のゴールに向かって走るのではなくて、自分の今のスタートから走り続けて、いろんな小さいゴールを経験しながら大学にたどり着くというイメージで毎日を過ごして欲しいと思います。」というような内容を伝えました。

 入学式ではみんな緊張と疲れもあるので、1回で全てが伝わるとは思ってはいませんが、このような内容の話を生徒と保護者の方にもお伝えしました。もちろん自分でも全てを完璧に伝えられたと思っていなかった(私も初めましての40人相手はかなり緊張していました)ので、ホームルームや授業などで何か活動をする度にこのような話をしてきました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

※ 情報処理力と情報編集力の違いとは?
 情報処理力(ジグソーパズル型学力):すでに正解があるものがバラバラにされ、それを完成させる力。途中変更が効かず修正できない。
 情報編集力(レゴ型学力):情報を組み合わせて、自由に世界観を作り出すことができる力。自分の発想力で付加価値を付けられる。修正は可能。
その他、一斉授業のデメリットやICTの活用法、ブレインストーミングの意義についても触れられています。

<参考HP>
藤原和博(2017.08.17)「ジグソーパズル型からレゴ型学力重視へー藤原和博氏が語るAI時代にも価値を早出する働き方」GLOBIS知見録
藤原和博(2015.09.23)「たった一度の人生を変える勉強をしよう〜藤原和博氏」GLOBIS知見録

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