IBDP日本語A"Paper1"の練習をしてみよう〜SSST生との学び記録【329】
今年から、IB校とのやりとりをしながら日本語Aのチューターをしています。学校から最初にお願いされたのは、最終試験である"Paper1"の練習問題を作成してほしいということでした。
これは「学ぶことについての自覚的になる」ことが目的とされており、生徒が取り組みやすい題材で用意して大丈夫だということでした。
SSSTの授業で行うこと
SSSTや言語Aのガイドブックを読みながら、自分なりにどうサポートをすれば良いかを、約3年かけて考えてきました。基本的には生徒が自学習で進めていけるようにすることが重要だと考えています。
そのため、初めて学ぶ学習者にとって理解するのが難しい最終試験の内容や評価規準、文学作品の選定方法、学習ペースの確認などを一緒に行っていきます。
また、こちらは「学習アドバイスをするペースメーカー」としての役割はこなしますが、あくまで自分で学習を進めてもらうことを重視します。
現状をフィードバックする時にこちらからの意見も出しますが、学習に関する最終決定を行うのは本人と考えます。生徒だけで自主的に進めることについて問題があると判断した場合は、保護者に確認するようにしていますが、今のところそういったケースは起こっていません。
IBDP日本語Aの基本的な情報についてはこちらのマガジンでまとめています。情報が必要な方はこちらをご覧いただけたらと思います。
"Paper1"の練習
今月の末に"Paper1"の試験(練習)を行うということで、早速その準備に取り掛かりました。
IBDP日本語Aの中でも試験の種類は3種類(HLの生徒は4種類)あり、生徒にとってはいろんな情報が錯綜して混乱しがちです。そのため、今回はこの機会を利用して"Paper1"の試験の特徴と評価規準について確認し、簡単な練習を一緒にしました。
初見の文学作品の分析をする
他の試験との違いは、初見の文学作品を分析するということです。そのため、これまでに読んだ作品について内容や分析したことを頭に入れておくのではなく、その場で理解して論点を立てていかなければいけません。
今回は、旧カリキュラムの過去問でもある中桐雅夫の"Birdie"を一緒に分析することにしました。タイトルの意味や作中の表現技法の特徴、作品の主題をメインに一緒に考えていきました。
表現技法の確認
Paper1の練習に入る前に、基本的な表現技法の確認を行います。既に生徒が理解しているものもあるので、文学分析において概ね必要になるものを一緒に確認して、わからないところは説明を加えたり、どんな例があるかを示しながら進めていきます。
「理解・分析・表現」の喜びを体感する
私のSSSTのサポートでは、演習や分析などの簡単なワークも授業の中で一緒に行います。その理由は、SSSTの補助で宿題を出してしまうと他の科目とのバランスが取れなくなったり、時間内で集中して取り組んだかどうかがわからないために、その時の思考の過程をたどれないと考えているからです。
もちろん、試験問題の過去問を解く時は時間がかかるので、それは授業外で時間を取ることになりますが、なるべく演習は授業時間内で確保し頭の中は新鮮な状態でディスカッションができるようにしたいと思っています。
実際の演習では、その前に確認した表現技法を探してその意味を考えたり、書かれている文章の奥にある作者が伝えようとしている(主題)こと、タイトルの分析などを考えていきます。
そこで自分の気づいたこと、気になる表現だけれど分析がまだできないところなどをどんどん言語化してもらって、作品の主題や細かい部分を見ることの楽しさを味わってもらいます。
また、作品を理解することと、分析することと、考えたことを表現するのは違うフェーズだと考えています。
作品の特徴は捉えられている(理解はある)けれど、主題とのつながりが曖昧(分析がいまいち)だったり、作品の主題と細かい特徴の把握はできていても(理解と分析はできている)、それを文章表現するときにうまく伝わらない文章になっている(表現がいまいち)ことなどがあり、これを一緒に助言すると生徒は混乱すると思います。
そのため、この段階での演習においても、それぞれの評価の観点から作品を見ていくようにすることで、生徒自身も「今何を問われているのか」「今どのスキルを鍛えているのか」がはっきりと分かった状態で学ぶことができます。
このように学習の効率も高めながら授業を進めていくことも、チューターとしては必要な役割だと考えています。
生徒の成長が何よりの喜び
IBでの学びは、次の進路につなげるためにハイスコアを取ることが目標の一つではありますが、何よりも、学ぶことで感じる充実感や自分の成長を感じられるような機会をたくさん用意したいと思っています。
学習をただ消費するのか、自分の成長に生産的につなげるのかは、その後の人生において多大なる影響力を持っています。
だからこそ、忙しい時間の中でも授業では学びに集中し、新しい発見や自分の成長を感じられるようなフィードバックを自他共にできる環境にしたいと思っています。これはIBDPのサポートに限らず、継承語としての小中学生のサポートも一緒です。
自分が成長することを感じられるのは、どんな年齢のどんな人にとっても嬉しいことです。そのようにして子どもたちが学びを自分のものにし、たくましく人生を歩んでいけるようにこれからもサポートを続けていきたいと思います。