「日本語A:文学」基本情報⑦試験問題2"Paper2"[226]
今回は「試験問題2(Paper2)」に関する情報をまとめておきます。試験対策をこれから始める方や、IBDP日本語Aの試験はどんなものなのかを知りたい方向けにまとめました。どうぞご活用ください。解説動画も作成しました。
試験問題2(Paper2)
試験問題2(Paper2)では、これまでに読んだ2作品における内容と形式の比較・対比を行います。この試験問題は4つの一般的な問いで構成されており、これらの問いから1つを選択し、コースで学習した2つの作品に基づいた比較小論文を書きます。 試験時間は、SLもHLともに1時間45分です。
「一般的な問い」とは?
試験問題の「一般的な問い」とは一体どのようなものがあるのでしょうか。2021年よりも前の試験(ここでは文学形式に分かれています)も含まれていますが、いくつか問いを確認してみたいと思います。
旧式の試験では、戯曲や詩歌など他の文学形式もありますが、ここでは私が過去に演習で使用したものを紹介させていただきました。試験問題2(Paper2)は、SL・HLで共通しており、「言語A:言語と文学」とも共通しています。
コースの概念が頭に入っている人は気づかれたかもしれませんが、これらの問いは探究領域の「テクスト間相互関連性:テクストをつなげる」や、コースの7つの概念と関連しています。
試験に用いる文学作品について
試験で使える作品は、PRLから選んだものでもそうでなくても、翻訳作品もしくは学習している言語で書かれたものでも構いません。また、文学形式や組み合わせなども自由です。ただ、作者が異なる2人であれば問題ありません。また、学習した作品を試験に持ち込むことはできないので、作品の探究テーマや主題、その根拠などは頭に入れておく必要があります。当然ですが、他の評価要素(個人口述やHL小論文)で使用された作品をここで用いることはできません。
試験問題への事前準備として、学習した作品のうち3つをあらかじめ選択しておくと良いでしょう。そして、小論文の設問に合わせて2作品を選択することになります。作品の組み合わせとしては、広い範囲でつながりをもてるものが試験に活用しやすいです。例えば、テーマや概念、コンテクスト、スタイル(文体)、形式などにおいてつながりを持てるものであれば試験問題2(Paper2)に取り組みやすいと考えられます。
学習者ポートフォリオの活用
この試験では、探究領域の「テクスト間の関連性:テクストをつなげる」と関連しています。過去の試験でどのような観点から問いが設定されているかを読み取り、今自分が読んでいる作品をそれらにどのようにつなげることができるのかをよく考えておかなければなりません。別の試験である「個人口述(IO)」では、主にグローバルな問題をテーマとしてものを扱います。この試験問題2(Paper2)ではテクスト同士でのつながりという観点で作品の選定を進めるのが良いでしょう。
そのため、これまでに学習した作品を入念に分析しておく必要があります。例えば、テーマや探究領域、主要概念などのつながりを見つけ出し、まとめておくことで作品の選定がしやすくなります。作品を選ぶ時が一番大変な作業かもしれませんが、過去問やコース概念などを確認しながら作業を進めていくと効率良く準備ができます。
また、試験問題2(Paper2)の練習であまり満たせていない評価規準があれば、その対策も必要です。ポートフォリオを活用しながら、自身の課題や成長などを振り返りながら小論文を書く際の注意点を自分で確認しておくことが良いでしょう。
評価基準(合計30点)
規準A:知識、理解、解釈(10点)
ここでは、「作品についての知識と理解をどの程度示しているか。」「作品についての知識と理解をどの程度利用して、設問で問われている類似点と相違点についての結論を引き出しているか。」について評価されます。
◯高得点を取るためには
設問に関して、作品の知識と理解を示す必要があります。また、その程度によって評価が大きく分かれます。また、作品に含意される意味についての解釈が採点者に説得力を持って伝わることが必要です。そして、比較小論文であることから、作品同士の類似点や相違点をはっきりと示さなければなりません。
最も高い配点とその1つ下の判定の分かれ目となる日本語の違いに少し戸惑いますが、「問い」で求められたことの理解を示し、的確に判断しながら作品を活用できているかということです。作品に関する主張として「根拠」を示せていない場合、高い評価を得ることはできません。そして、問いに対しての解答になるよう作品同士の比較や問いとのつながりを示す必要があります。
規準B:分析と評価(10点)
ここでは、「言語、技法、スタイルの選択や、作者の幅広い選択がどのように意味を形成するかについて、どの程度分析し評価しているか。 」「分析と評価のスキルをどの程度効果的に使用して、両方の作品を比較・対比しているか。 」について評価されます。
◯高得点を取るためには
テクストの特徴と作者の選択について、洞察力と説得力のある分析が必要です。テクストの特徴や作者の選択がどのように意味を形成しているのかについての評価がどれぐらいできているかが評価の大きな分かれ目です。また、それらの比較や対比に関しても求められています。
規準Bで最も重要なのは、「作者の選択がどのように意味の構築に関わっているか」についての考察を明らかにすることです。作者が特定の意味を構築していることを捉え、その効果について分析できることが求められます。
規準C:焦点と構成(5点)
ここでは、「考えを示すにあたって、どの程度うまく構成し、バランスがよいか。焦点を絞っているか。」が評価されます。規準A・Bと違い、配点は5点です。
◯高得点を取るためには
課題に対して焦点が明確に絞られていることが必要です。そして、作品の取り上げ方のバランスが取れており、考えを発展させる過程が論理的で説得力のあるものが求められます。
規準Cでは、比較小論文の焦点と一貫性のある構成になっているかどうかが問われます。最初に焦点がどこにあるのかを明確にし、その根拠を示しつつ焦点がぶれないようにする工夫が必要です。仮にテクストの内容に関する知識を表現したとしても、それが焦点をぼやかすようなものだとすれば、基準Cでの評価を下げることになります。
規準D:言語(5点)
最後に、規準Dでは「言葉遣いはどの程度明確で、多様で、正確か。」「言語使用域とスタイルの選択はどの程度適切か(この文脈では、小論文に適切な語彙、語調、構文、専門用語などの要素を生徒が使用することを「言語使用域」と呼びます)」について評価されます。
◯高得点を取るためには
明確で効果的であり、正確な言葉遣いが必要です。文法や語彙、文の構造の正確さも求められます。学習者が書いた記述が効果的に表現されているかどうかが鍵になります。
これは試験問題1と同様、書かれた日本語の表現や語彙、文章そのものが評価されます。評価の基準となる文言についても、高いレベルのものが求められているため、練習の段階で自分の苦手な表現(語彙、文章など)に気づき、なるべく丁寧に対策を進めておく必要があります。
試験準備
まずは、問いを分析し試験問題2(Paper2)に使えそうな作品を3つに絞り込むことからスタートします。探究領域やコース概念などを元に、これまでに読んできたテクスト間のつながりを確認します。
また、もし学校から試験問題2(Paper2)のサンプルを手に入れることができたら、探究領域やコース概念などと問いの関わりを考えることができます。また、書いた比較小論文を実際に生徒自身が採点してみるというのも良いでしょう。そうすれば、自分が小論文を書く時にどのようなことを意識すれば良いのかを考える材料になります。
以上が、試験問題2(Paper2)に関する基本情報です。この試験で求められているのは、作品の解釈・分析・評価で、それを比較しながら小論文を書き進めていく必要があります。そのため、他の比較小論文に取り組んでいる生徒の文章に触れたり、自分で書いたものを読み返して作品に関する理解・分析ができているかどうか、それを問いに結びけてどのようにまとめることができているかを確認しつつ、練習の中で本番に向けた準備をなさるのが良いと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
<参考資料>
・IBO「『日本語A 文学』指導の手引き2021年第1回試験」
・IBO「国際バカロレア(IB)ディプロマプログラム(DP)科目概要」(2022.09.26閲覧)