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「伊東建築塾」が再確認させてくれたコト

 前回の話からは脱線しちゃうんだけど、ちょっと箸休めということで。「古い建物の改修にふれると、こっちの身体感覚まで物凄く生き返る」という話です。

 今から79年前(昭和11年)に建てられたという元・法務局(松山法務局 大三島出張所)をコミュニティースペースとして蘇らせる試み。題して「みんなのいえ」プロジェクト。

 建築家の伊東豊雄さんという方がはじめた「伊東建築塾」の塾生さんたちが、改修作業にいそしんでいる。

 ほとんど社会人の方で、神奈川や京都などの各地から、なんと週末だけこの愛媛の島に集まってくる(真ん中の女性は塾生ではないが、我々と塾の方々を繋いでくれた)。通いですよ、通い!

「交通費トンデモないんじゃないですか?!」

「まぁね(笑)でも、合宿みたいで楽しいっすよ」

 いやいやホント、好きなことしている表情って見ているだけで、ビールがすすみますなぁ(仕事があって飲めなかったのでエアビールだけど)。大工さん、設計士、新人ニート、みんなそれぞれの得意分野があってカッコイイ! 

 元々あった素材は、できるだけ活かすそう。

 奥は職員が住んでいた長屋と繋がっていて、作業中に入れてもらったのだが――、むき出しの土壁、朽ちかけた木材の匂い、薄いガラス越しの光とか、色んな情報が五感にずいずい押し入ってくる!! 

 土壁はところどころ崩れ落ちているけど、塾生の皆さんが手作業で塗りなおしてる。もちろん素材は土なので、古い素材をもう一度溶いて、接着剤と混ぜて練り直し、もう一度壁に塗る。なんて無駄がないんだ! リユーサブル!!

 補強のために、竹が組んである。塗材も藁なんかと一緒に混ぜてあって、要はお好み焼きのキャベツみたいなもんですね。多分。簡単に割けないようになっている。

 下の写真は、昭和初期(?)に導入したばかりの洋式トイレ……のカーテン、これを選んだのはハイカラな人だったのかも。

 こんなこと一つ一つが、貴重な資料だ。文化としてだけじゃなく、職人その人の「仕事」としても。私はナンシー関さんが大好きで文章をすべて模写してみたことがあるけど、彼女が残した物をあえてなぞってみることでその凄さをビシビシ感じることができた。建物の修復についても同じ感覚を生じるんじゃないかと思って尋ねたところ、答えはイエスだった。

「実際に中に触れてみると、″本当によくできているなぁ”とか感心することがたくさんありますね」

 土壁塗りも実践は初めてだそうだが、「どうしても割れてきちゃうんですよね。でももう少し○○を△△すれば違ってくるかも……」と愛おしそうに表面を撫でる。

 こっち来てから、「身体ってこう使うんだ」「頭ってこう使うんだ」ということを感じるのが楽しくなっている。伊東塾の皆さんがそれをまた再確認させてくれた。ありがとうごぜえますだ。また焼肉屋で呑みましょうネ。

                              (続く)

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吉野かぁこ
カラス雑誌「CROW'S」の制作費や、虐待サバイバーさんに取材しにいくための交通費として、ありがたく使わせていただきます!!