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【第21話】「病院」どうする、行く? 行かない?

◇秋の気管支炎まつり

 前回は金欠の話かと思ったら、今度もまた辛気くせぇテーマだなぁ。と舌打ちされるかもしれないが、田舎暮らしをするなら避けては通れないのである。

 だって、気管支炎になっちゃったんだもん♪

 半月ばかり喉が痛かったのだが、仕事がひと段落したらチャンスとばかりに落城された。先週から呼吸も会話もままならず、家の中でさえ数歩歩いては一休みという、なんかもう常にエベレストで生活しているような状態だったのである。(登ったことないけど)

 医者? んなもん行ってないっすよ。


◇最寄りの内科まで、車で20分

 人口6000人を抱えるこの島ではあるが、(私の知る限り)医者と呼べる機関は4カ所しか存在しない。

内科 兼 外科クリニック=1軒

歯医者=2軒

動物病院=1軒

(いや、実はひっそりと総合病院が1軒あるのだが……。どういう訳かとても入りづらい。私の中の野性がそのドアをくぐるのを全力で拒否するのだ。確か医師が2人か3人とか。本当はとっても親切でいい病院なのかもしれないが、私のチキンハート故まだ勇気が持てないのだ。だからカウントしてません。すみません)

 今の家から島内にある最寄りの内科までは、車をすっ飛ばして20分。免許を取ったとはいえ、朦朧とした状態での運転はまだ怖く、かといって平日に夫に送り迎えしてもらうのも悪い気がして(「地域おこし協力隊」の有休が減るしな!)、多少のことでは行く気がしない。呼吸困難な状況が「多少」なのかはいささか疑問だが、移住前と移住後では「多少」のレベルを見直さなけばならない、ということなのかもしれない。

 食糧の自給自足を目指すなら「クスリも自給自足だ」と、無農薬レモンに蜂蜜&ショウガ汁を加えて、景気づけにウイスキーを投入した自家製ドリンクを処方してみたが、最高の気分の後に最低の気分が襲ってきた。ならば在庫に頼ろうと、もともと家にあった薬を飲んだり吸ったりしてみたが、夜中に悪化したため、あまり手を付けられずに今に至る。


◇「競合のいないお医者さん」への不安

 今から書くことは各お医者さんの良し悪しとはまったく関係ないこととして読んでほしい。どこがいい、悪いって話がしたい訳じゃないんだ。都会から田舎に移住したときに「移住者として感じる心配」や「自分なりに考えた対処法」なんかを後続の人たちのために記しておきたいだけなのである。

 たぶん「医者が遠い」なんて、言い訳に過ぎない。本当の理由は何かと自分なりに分析してみたところ、根底にあったのは「彼(彼女)に任せて本当に大丈夫なのか?」という防衛心だった。

 一言でいえば、「競合がいないお医者さん」への不安である。

 街の生活しか知らない自分にとって、お店やクリニックって「お客を取り合って切磋琢磨」するものだったんですよ。まぁ惰性の医者はもちろんいたけど、競争社会の原理として全体的にはいい風に作用していたと思う。

 例えば、今まで自分が住んでいたのは、池袋とさいたま市界隈。内科や皮膚科、歯医者などは、いつも徒歩5分圏内に2~3軒づつは揃っていたんじゃないかなぁ。気に入らなきゃ、自転車や電車に乗れば選択肢は何十何百へと膨れ上がる。そのチョイスが正しいかどうかはさておき、「自分で選んだ」という事実が「最低限の納得」を担保していたんじゃないだろうか。

 だから、こっちにきて勘ぐってしまうのである。あそこにあるのは「この島を守るのは自分しかいない」という使命感? それとも「放っておいても客が来る」という慢心?? みんながみんな『Dr.コトー診療所』のコトー先生みたいだったらいいけど、医者だって一つの商売であって神ではない。

 本当にここでいいのか?

 特に、持病(というまで重くないが、自分の場合は皮膚と呼吸器系が弱い)と替えの効かない歯に関しては、無意識に身構えてしまう。実際に、歯医者や小児科は陸地(今治市街地)まで車を走らせているという移住者も多い。ただし、島から陸地に行くには道路の通行料だけで往復2760円かかるけどな!(面白いことに、ヘアサロン利用にも似た傾向あり)。

 私はそこまでする気はないけれど、じゃあ…、どうすれば納得がいくビョーイン・ライフが送れるのだろう?? いざという時のために、ある程度スタンスを決めておいてもいい時期じゃないだろうか。


◇病めるときも納得して過ごすために

 そもそも「豊かな自然」と「人口密集による便利さ」は、完全にトレードオフの関係なわけで、選択肢の少ない中でどうしていきたいかを前向きに考えたいと思う。

①診療科目が違っても、気にしない

 持病について常用している薬があれば、標榜している診療科目が全然違っても近くのお医者さんに行ってしまおう。自分の場合は先日、日光アレルギーの薬が切れそうだったのだが、島に皮膚科はないので内科のクリニックを頼った。常用していた薬の名前を告げたら「それがよかったのなら」と快く処方してくれましたよ。

 調剤薬局には取り扱いなかった銘柄だったけど、取り寄せして後日連絡をもらうことに。「今後も使いますか?」と何度か尋ねられたが、仕入れの数を決める際に必要だったのだろう。

②気管支炎とウイルス性胃腸炎になったら、ヤブ医者疑惑があっても恐れずに飛び込む

 実は今、後悔してるんですよ。こんなに苦しいなら医者に行っていればよかったって(笑) 夜中に呼吸できなくなる恐怖感もさることながら、気管支炎は放っておくと慢性化しちゃうし、胃腸炎の強烈な嘔吐と下痢は地獄だし。

 この二つはある程度処置方法が決まっているので、医院による差は少ないと腹を括ろう…と思う。

③歯については、たまに帰省先の医者でセカンドオピニオン(?)を受ける

 歯って、医者によって治療方針が全然違うじゃないですか。詰め物の材質だとかブリッジとか、例え信頼している医者に言われたとしてもとにかく迷うんだよなぁ。

 東京には定期的に帰るので、以前見てもらっていた大学病院でたまには歯科検診受けようかと。本格的なセカンドオピニオンにはカルテの開示とか必要らしいけど、そんなんじゃなく、状態のチェックしてもらうだけでも精神的に違うと思うんですよね。きっと。

 まぁこんな風に、私なんかはウジウジ系移住者なのだが、中には何でも自分で治してしまう強者もいる。木工やDIY好きが高じて、自宅まで作ってしまったという先輩移住者のイチローさんのことだ。世間話から発覚したのだが、彼が電動ノコギリでなど指を切った際は、なんと自分で縫っちゃうらしい。

「てぐすがね、一番いいよ。タコ糸とかだと傷口にくっついちゃって、抜くときにすごく痛いからね」

 って、そっちも試したんかい!? 怪我したらボクのところに来るといいよと声をかけていただいたが、それはそれで勇気のいることなのである。

                             (続く)

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吉野かぁこ
カラス雑誌「CROW'S」の制作費や、虐待サバイバーさんに取材しにいくための交通費として、ありがたく使わせていただきます!!