夢一夜
こんな夢をみた。
夏の黄昏時である。風が心地よい。
ずいぶん前につぶれたコンビニエンスストアの駐車場に、僕のローバーミニが止まっている。
ブリティッシュレーシンググリーンのちょっとくたびれた個体。ミラーは、ちょっとマニアックなナス型。
ボンネットが少し歪んでいるのは、走行中にいきなり開いてしまったときのものだ。
佇まいでわかる。間違いない。
ずいぶん長い間どこにあるかわからなかったけど、ここにあったのか・・・
ポケットを探ると、都合よく鍵が出てきた。
扉用の小振りな鍵をつまみ、鍵穴に差し込む。
ロックを解除して、見た目よりも重い扉を開けた。
キィ。金属が擦れる音と共に開く。
シートに座り込む。
1995年式は、シートの仕様が数種類あるが、僕のミニは革張りの側面に、座面は布張りのものだ。
英国車特有の、古い家具のような薫りがある。この薫りに慣れるともう、接着剤の匂いしかしない国産車には乗れない。
腕を伸ばし、ステアリングを握る。モトリタのウッド。細いけど、大振りで廻しやすい。パワステなんてなくても大丈夫。
ああ、うれしいなあ。ちょっと涙が込み上げる。
そして目が覚める。
手放して15年経つのに、未練たらたらのこの夢をまた見てしまった。
がくん。