ホタルガとソウシチョウの丘
「トレイルランニング」というかっこいい横文字を知ったおかげで、早朝に山の中をうろうろすることを正当化できる気になってはや数年。
毎週通ってる森がある。
昼間はそれなりの人が入るハイキングコースだけど、僕の通う時間は朝霧のかかった早朝。
日が昇るか昇らないかのこの時間はまだ人類の気配はなく、様々な野鳥たちの囀りと木々の擦れる音しか聴こえない。
清涼な雰囲気を、胸一杯に思い切り吸い込み、幸せな気配に包まれていることを感じる。自分しかいない、贅沢な、満ち足りた気分。
まず、軽く走り出す。静寂をかき乱さない程度に、軽く。息も上がらないように。舗装路ではないので、足元を確認しながら、木の根の多い坂道を登って行く。走りにくいのに楽しいのは、小さい時の忍者ごっこを思い出すからか。中年忍者?になった気分で駆け上がる。「ニンニン」!
無性にうきうきする。
道中、不意に身の回りを翔ぶものが。
黒、白、赤の、綺麗な折り紙の切れ端のようなもの。くるくる音もなく近寄る。ホタルガだ。大抵の虫はある程度を越えて近づくと鬱陶しく感じるが、ホタルガはなぜか気にならない。どころが嬉しくなるのはその滑稽とも感じる飛翔の仕方か。くるくるとまわる姿は子どもが遊んでいるようで微笑ましい。そんなホタルガ数匹に先導されながら小高い丘に出る。
ここは勝手に「ソウシチョウの丘」と名付けた場所で、外来種であるソウシチョウがたくさん繁殖している。
朝日を浴びて、カラフルなかわいい小鳥がはしゃいでいる。かわいい外見だけど、知らない土地でしっかりと子孫を増やすその姿勢には脱帽するばかり。
いつの間にかホタルガはいなくなっている。
なんだか幻想の中にいるような不思議な時間。