
このままでは木曽郡に麻酔科医がいなくなるかもしれない。【その1】
【麻酔科医がいなくなれば、分娩だけでなく、救急医療や外科手術にも重大な影響があります】
改めて、今回報道された木曽病院の麻酔科医が不在になる問題について、3回に分けてお話しします。
【1】木曽病院の分娩廃止の問題について
現在、「木曽病院が令和8年4月から分娩を廃止する可能性がある」という報道が出ています。
2025年2月7日付の中日新聞では、木曽郡唯一の分娩施設である木曽病院が、帝王切開に必要な麻酔科医を確保できず、分娩継続が困難になる見通しであると報じられました。
木曽病院には現在、
✅ 産科医 2名
✅ 小児科医 2名
✅ 麻酔科医 1名(信州大学からの派遣医師)
が常勤しています。
しかし、その唯一の麻酔科医が高齢で、来年3月末で常勤勤務を終了するため、分娩の継続が難しくなるという問題が報道されました。
ここで最も注意するべき問題は、この9年間、木曽病院の麻酔科医は1名体制のまま改善されなかったことです。
町村長会や町村議長会でも再三にわたり麻酔科医の確保を要望し、県の医療計画でも「木曽郡の医師確保」が課題として挙げられていました。
それにも関わらず、具体的な対策が十分に講じられないまま、分娩廃止に至ろうとしているのです。
このままでは、木曽地域の妊婦は、出産のために遠方の病院へ移動を余儀なくされることになります。
しかし、これは単に「分娩ができなくなる」だけの問題ではありません。
麻酔科医がいなくなるということは、救急医療や外科手術にも深刻な影響を及ぼします。
( 交通事故や急病で緊急手術が必要な場合、麻酔科医がいないため緊急手術ができず患者の生存率が低下する)
【2】広域連合規約の変更について
このような状況の中で、3月定例会では「木曽広域連合規約の変更」が審議されます。
この変更は、木曽広域連合が「周産期医療に関する会計事務」を担うためのルール変更を行うものです。
そして、この変更を成立させるには、木曽郡6町村すべての議会での賛成が必要となります。
では、なぜ広域連合規約を変更するのか?
✅木曽病院が令和8年4月から分娩を休止する可能性があるため、松本・大北地域の「出産・子育て安心ネットワーク協議会」に加入し、松本地域や他医療圏の病院で分娩を受け入れてもらう方針を審議会で決定。
✅ これにより、各町村は出生数に応じた負担金(試算30万円)を納付し、協議会運営を支えなければならない。
✅事務処理を各町村が個別に行うより木曽広域連合が一括対応した方が効率的だと判断し、広域連合規約を変更する必要があるとされた。
しかし、この規約変更は木曽地域にとって本当に必要なのでしょうか?
これは、ただ「分娩を松本で受けるための手続きを進めるだけ」の話ではなく、木曽地域の医療全体に関わる重大な問題です。
【3】木曽地域の医療体制が崩壊するリスク
今回のネットワーク加入によって、木曽地域の医療は次のような状況になると考えられます。
(1) 妊婦への負担増
• 松本・安曇野の病院まで片道1時間以上かけて通院しなければならない。
• 冬季の交通事情によって、移動中に命の危険にさらされる可能性がある。
• 分娩直前の長距離移動は、母子の健康に悪影響を及ぼすリスクが高い。
(2) 救急医療の弱体化
麻酔科医の不足は、分娩だけでなく、すべての救急医療に影響を及ぼします。
• 交通事故や脳梗塞など、手術が必要な緊急患者が対応できず、遠方へ搬送されるケースが増加。
• ドクターヘリや救急搬送の負担が増え、対応が遅れる可能性がある。
• 最悪の場合、救急搬送中に死亡するケースも増加する恐れがある。
(3) 地域医療の崩壊
• 今後、木曽病院でできる治療がますます減り、外来診療のみの病院になってしまう可能性がある。
• 木曽で生まれ育った人が、安心して木曽に住み続けることが難しくなる。
• 結果として、若い世代の流出が進み、地域の過疎化が加速する。
【まとめ】木曽地域の医療を守るために
今回の規約変更は、分娩だけの問題ではなく、木曽地域全体の医療の崩壊につながる可能性があります。
このままでは、
❌ 妊婦は松本まで長距離移動を強いられる。
❌ 救急医療が弱体化し、命を救えないケースが増える。
❌ 地域医療が縮小し、住民の生活に大きな影響が出る。
「過疎地域だから仕方がない」と諦めるのではなく、私たちが声を上げ、地域の医療を守るために行動することが必要です。