ABCお笑いグランプリ2024などの感想
ABCの話をする前に最近の若手賞レースについて簡単に振り返っていきましょう。
UNDER5 AWARD
5年以内らしいフレッシュさがありながらも随所に上手さを感じました。話題になっていた伝書鳩、キャプテンバイソン、ツンツクツン万博らのネタが見られましたし、家族チャーハンも期待度通りに面白かったです。
優勝は清川雄司さんとのことで、R-1 2023の敗者復活で見てから面白いなぁとは思っていましたが、こういった芸風で優勝するのは予想外でした。その時よりも賞レース向けの構成力が磨かれていたと思うので、相当クレバーだなと感じます。優勝おめでとうございます!
あとはらいむぎを応援しています。ここから苦しんだとしても近いうちに芽は出るはずなので乗り越えてほしい…
ツギクル芸人グランプリ
えびしゃの優勝だけは事前に情報が入ってきていて、それからTVerで見ました。全組爪痕を残すことができたのではないでしょうか。特にポテトカレッジとセンチネルが好きなので、こうして全国ネットで見られたのは嬉しかったです。
えびしゃのクオリティは個人的には圧倒的でしたね。1本目の発想は良いところ突いていると思いましたし、クオリティや展開でも申し分なかったと思います。2本目は以前見たことがあるネタで、ローディングで豆蒔くところは今でも思い出し笑いをしてしまうぐらい好きです。優勝おめでとうございます!
ABCお笑いグランプリについて
さて本題のABCお笑いグランプリにいきましょう。全ネタ触れることになるので、ゆっくりお読みください。前説のダブルヒガシは「なんでチャンスあげんねんデブ。デブやんこいつ」がメチャクチャ面白かったです。今年こそM-1の決勝で見たいです。
A-1.ぐろう
家村さんが飄々と面白いことを言い続ける根幹の部分は変わらないのですが、最初と最後に高松さんが強めに出ている分、より言い合いっぽさが増した気がしました。調子いい時のぐろうって感じがして面白かったです。
A-2.天才ピアニスト
非の打ちどころがほとんどなかったと思います。ますみさんの達者さがあるからこのネタが成立するわけですし、そこに焦点を当てる分竹内さんが出る回数は少なめで、でも切れ味は鋭いということで見やすかったです。
A-3.ダウ90000(通過)
笑いの取り方が「ダウっぽくない」と「これもダウかもな」の丁度中間のように感じました。勝てるネタをバチバチに仕上げてきた去年も良かったのですが、今年はとにかく園田さんが面白過ぎて、今大会で一番笑いました。
A-4.金魚番長
「掴み切れてないかも…」と思いながら本ネタに入ったので少し心配でしたが、後半につれて理想的にウケていったと思います。オーゴエの胸ぐらをつかむところ凄く好きですし、全体的に強度がとても高いなと感じました。
ただ真空ジェシカのようなトップランナーでもそうですが、伝わるだけにモヤモヤするところもたまにあるんですよね。今回の金魚番長だと”L字回復”の部分で、当たり前のように筆記体で進んでいったのは少しだけ違和感を覚えました。少数派、しかも素人の意見ですが、こういったところを回収してくれると更に見やすくなるなと感じます。
Aブロック総評
コント2組のクオリティが高かったとはいえ漫才2組も良い形でウケており、ハイレベルな戦いだったと思います。それでも地の利含めて天才ピアニストかなと思っていたら、ダウ90000がファイナル進出していて嬉しかったです。
(個人的順位)天才ピアニスト > ダウ90000 ≧ ぐろう > 金魚番長
B-1.エバース
ツギクルでもネタを2本使っているうえに「M-1決勝候補→決勝当確→優勝候補」のようにハードルを上げられまくっているので相当大変だろうなと思います。
今回のネタはケンタウロスに近い切り口のネタだと感じましたが、前半は少し心配でした。それでも後半あれだけ盛り上げられたのは力がある証拠ではないでしょうか。
B-2.やました
こういう設定の中ではベタな展開だと思いますが、その中にちりばめられたエッセンスが良かったです。数撃ちゃ当たるというスタンスはヤーレンズを彷彿とさせますね。
緊張からか早口になっていた分伝わりにくかったところはあるかもしれませんが、風格は既に備えていたと思います。ネタが終わった時の興奮を言葉にできるだけの語彙力がないのですが、とにかく凄いなと感じました。
B-3.フランスピアノ
純粋にメチャクチャ面白かったです。バラシが面白い、動きが面白い、表情が面白い。流石にもうひと展開は欲しかったですが、後半あんまり強くないのも味かなって思いました。
B-4.青色1号(通過)
途中からの盛り上がりが随一でしたね。前半は色々とノイズになってしまうところもあったのですが、後半のそうめんさんで全て持って行ったように感じました。平場でも活躍していましたし、この日はそうめんさんの日だったのかもしれません。
Bブロック総評
青色1号が勝ち抜けそうだと思いましたが、これも評点がバラけそうだなと感じました。やましたさんとフランスピアノは賞レースだと厳しい評価になってしまいがちですが、かなり爪痕を残す面白さだったと思います。
(個人的順位)青色1号 > エバース > フランスピアノ ≧ やました
C-1.令和ロマン(通過)
面白いけど「もっと…」を期待してしまいました。う大さんのコメントが辛辣でファイナルの空気感に影響を及ぼしてしまいましたが、ある意味本質な気もします。あとは後半で流れ星の「肘神様」を思い出したかな…
去年の「恋リア」を基準に考えているので物足りなさを感じましたが、今回のネタも相当完成度が高いのは間違いないです。
C-2.かが屋
賀谷さんが何をするか分からないハラハラ感と、そうだと知らずおちょくる加賀さんの対比が面白かったです。いつもならここまでの範囲で上質に丁寧に作り上げると思うのですが、そこからダイナミックな動きを取り入れたのが新境地に感じました。正直、M-1王者の令和ロマン以上にこの場がふさわしくないと感じました(いい意味で)。
C-3.フースーヤ
今が一番面白い状態じゃないかと思いました。それぐらい2人のパフォーマンスが乗っていたように感じます。本筋と脱線の割合が丁度良く、それでいて伏線も入れてくるのでかなり勝てる構成に近づいたのではないでしょうか。あとはせっかく入れた伏線の質がもう少し高ければいいなとも思うのですが、これはお二人が計算でやっていたり僕の好みだったりの範囲かもしれません。(「例えば『おもんないTikTok』が後で効いてくるんだろうな」という目線で見てしまう…)
C-4.ぎょねこ
まず、現実世界の中で円周率を3人中2人が正確に覚える必要があるというのがなんか面白かったです。その覚え方もバカバカしくて良かったのですが、3人目があまり機能していなかったこと、カベポスターの「ドレミの歌」を思い出してしまったことで後半は伸び悩んだかなと感じました。ラジオでカベポスターのお二人も少し言及していましたね。
Cブロック総評
令和ロマンの完成度が高いのはもちろんのことですが、他3組と票が割れるのではないかと思っていました。実際にフースーヤは2名から1位評価をもらっていたので、あと一歩でその牙城を崩せたのかもしれないと思うと惜しいところです。僕はかが屋の新たな面が見られたのが良かったです。
(個人的順位)かが屋 > 令和ロマン > フースーヤ ≧ ぎょねこ
FINAL-1.令和ロマン
ケムリさんのお父さんに関するニュースは既に色々と知れ渡っているので、どういった塩梅のネタにするかは難しかったと思います。元ネタと言われているゾルディック家(HUNTER×HUNTER)を知らないとはいえ何となく豪邸のイメージは浮かんでいましたが、それでも全体的に伝わりにくい部分がやや多めに感じました。ただ、それもある意味で「攻め」なのかもしれません。門下生の描写やパイプちゃんが出てからの展開はメチャクチャ笑いました。
このネタを優勝後特番で振り返りながら見た時は、見方が分かったおかげか何倍も面白く感じました。ディティールに対するこだわりが見えるネタだったと思います。
個人採点:89点
FINAL-2.青色1号
凄く良いネタでしたし、実際にこういった形で誕生日を迎えられたら嬉しいだろうなと思います。ただ、賞レースとして見るともう一歩突き抜けたネタの方が点数になりやすいのかなと感じました。
個人採点:88点
FINAL-3.ダウ90000
面白いけど、序盤で笑いに繋がる場面が少ないのは気になりました。一方で後半は駆け足すぎてついていけなかったかな…前説を含めて16番目のネタだったので、見る側も疲れが出ていた気がします。せめて1番手ならもう少し結果が変わったかもしれません。
KOCの準決勝でやっていたと噂のネタだと思いますが、5分のネタを4分にするだけでも厳しいのにYouTubeには8分のネタとして上がっていたので、それでも面白さを何とか残しつつ仕上げた蓮見さんの執念が凄いなと思いました。
個人採点:91点
総評
令和ロマン優勝おめでとうございます!なんか厳しいことばかり書いていますが、見ているこっちのハードルを勝手に上げていただけなので、ヒール役を全うして最後に勝つのはやはりスターだなと感じました。
今年のABC全体を見て思ったことは「賞レース用に仕上げつつもそれだけに囚われない自由な発想」のネタが多かったということです。R-1のお抹茶さんや優勝した令和ロマンのように自由な発想のネタが多くて見応えがありました。賞レースという観点で個人的に付けていた点数はそこまで伸びなかったものの、「このネタ好きだな~」というのは近年で一番多かったかもしれません。今年もメチャクチャ楽しむことができました。
ここまでお読みいただきましてありがとうございます。上げ忘れたKOC2023をどこかでアップしつつ、次の賞レースを楽しみに待ちたいと思います。